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行方不明の先 1

 銃口を向けられた相手の体が震えているのが、アスターには見えていた。だから、その程度の脅しで、相手は首を振るって死にたくないと示していた。死のうとすれば、逃げる隙でもできると思っていたのだろうか。アスターはそんなに優しい人間ではなかった。


「で、お前の主人はこいつか、こいつと一緒にいたやつか?」


 アスターは拠点で市に倒れている筋肉質な男に銃口を向けて、そう聞いた。相手は何度も頷いて返事をしていた。話すことはできるはずだが、そんなこともできないほどに自身の命が死に際にあることを察しているようだった。自分たちの主人を殺すことが出来るほどの実力があるのだから、逆らったって殺されるだけだということも理解したのか、相手は暴れようともせず、諦めたかのように大人しくしていた。その瞳には既に生気はなかった。


「で、アジトの場所は? わからないなんてことはないだろ?」


 相手は一度だけ頷いていた。言葉を離せないのか、相手が出している音は言葉にならない音だけだった。本当に言葉を離せないのかは判断が付かないが、この者に案内してもらうしかないのだ。


 彼女の足の拘束だけをほどくようにリーダーに指示して、ほどいてもらうと同時に相手が足を真上に振り上げて、リーダーの顎を思い切り蹴ろうとしたのだが、リーダーはそれも見越していたようで、簡単に回避して、振り上げられた足を掴んでいた。リーダーはその足を離して、すぐに相手から離れた。その瞬間に、アスターが相手の腹部に銃口を向けて放つ。


「うぅ、ああぁ」


「生意気なことをするな。正直、アジトの場所を聞ければ楽だから、生かしてるんだ。お前が死んでも、アジトは探せるんだよ。わかるか、お前はいつ殺してもいいのに生かしてやってるんだってことだ。わかってるのか?」


 彼女は拘束されている相手にただただ冷たい視線を向けていた。相手はその視線と視線が合ったことで、彼女の言っていることが冗談でもなんでもなく、本当にただ楽だからという理由で生かされていることを知る。少し考えれば、この小さな村でアジトを探すなんでことは難しくはないのだ。魔獣討伐隊の皆で探せば半日とかからず、村の全てを探索することが出来るだろう。それを一人で解決しようとしているからこそ、この拘束した暗殺者が必要というだけだ。明日になって、リーダーがこの件を討伐隊の仕事にすれば、やせ型の男もこの村にはいられないだろう。村から離れて逃げるしかないだろうし、あジトにしている場所はすぐに見つかるだろう。


 彼女の言葉を聞いて、暗殺者は大人しくなった。本当に死にたくはないらしい。アスターは銃口を相手に向けてまま、相手を無理やり立ち上がらせた。そして、銃口を相手の背中にくっつけて、腰の辺りを突っつく。相手はそのマジックガンの固い感触に背筋に冷たい汗を感じながら、拠点から出ていく。


「アスター、気を付けていくんだぞ」


 リーダーのその言葉には特に返事をするわけでもなく、無視するようにして暗殺者を連れて拠点から出ていく。その瞬間、アスターはすぐに拠点に中の戻ってきた。それも後ろに転がりながら、拠点の扉を壊して戻ってきたのだ。


「チッ。ここまで来るとは思わなかったな」


「よぉ、ちょっと世話になったみてぇだからな。お礼しに来てやったよ」


 ドアが外れて壊れたの先にいたのはやせ型の男だった。そして、その隣には少年がやつれた様子で立っていた。


「こいつだろ? 探してるのはよぉ。こいつ返すから、そいつを返してくれ。取引だな」


 やせ形の男が示していたのは既に死んでいる筋肉質な男だった。まさか、今更取り返しに来るとは思わなかったが、この男が交渉材料になるとは思わなかったのだ。


「……取引なんて人間みたいなことを許すと思うなよ。ゴミくずが」


 アスターは二丁の銃を相手の方へと向けた。そして、片方の引き金を引いて、銃弾を放った。相手はそれを軽く避けて、彼女を睨む。


「おいおい、そりゃないぜ。大人しく、交換条件で済ませようって言ってんだぜ? そのお返しがこれかよ。俺はまだこの町じゃ悪いことはこいつの誘拐くらいしかしてないんだがなぁ。殺しも奴隷売買もしてねぇんだよ。なんで、お前はそんなに怒ってるんだかなぁ。俺にはまったくわらかんな」


 男は銃撃にも特に起こることはなく、落ち着いていた。むしろ、今の状況を楽しんでいるようにも見える。


「交渉だって? じゃあ、教えてやるよ。そこに倒れてるのは肉塊になった。助けに来るのが遅いんだよ」


「あー? 死んでるって? 本当に? この力自慢の筋肉バカが?」


 男の視線が筋肉質な男の方に向いた。息はしていないため、胸は上下していないし、死んでいるせいで顔色も白い。それに馬鹿であるため、眠ったふりで騙すことはできない。やせ形の男が来た時点で、目を開けていなければおかしい。男はそう思った。近くで確かめたわけではなくとも、筋肉質な男が死んでいる可能性が高いというわけだ。


「おいおい、おいおいおい。そりゃあ、ねえだろうがよっ!」


 男の様子が一変して、いきなり怒鳴り声をあげていた。

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