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悪を許さず 5

「……アスター。今度はどうしたんだ。これはなんだ?」


 拠点に入るとリーダーとアカリがいて、アカリはまだペースの治療中であった。そして、気絶した暗殺者を地面に転がすと、リーダーがいぶかし気な目でアスターのことを見ていた。


「家にいた暗殺者。気絶させて持った来た」


「ここは死体置き場じゃないんだが?」


「まだ、こっちは死んでないし、殺す必要もない。こっちからはきっと情報を引き出せる」


「死んでなくてもここは、そういうのを預かる場所がないんだが……。まぁ、何を言っても無駄だろうから、これ以上はとやかくはいわん。で、どうするんだ?」


 もはや、投げやりな様子でリーダーは彼女に文句を言うのもやめた。彼は自分が引けないラインまで引いて、譲歩して話した方が彼女とのやり取りが楽であることは既に学んでいるのだ。それでも、文句を少し言うことは多々あった。彼女だけではない大抵、厄介ごとを持ってくるのは村人ではなく討伐隊のメンバーだからだ。


「こいつを縛れる何かで縛っておきたい」


「はいはい。ちょっと待ってな」


 そういうと、彼は拠点の奥の部屋に入っていく。その間に、彼女はペースの様子を見ることにした。この拠点を出る前よりはアカリの手は動いておらず、たまに端末に触れているだけだった。ペースの顔を見れば、苦しそうな様子はなく、落ち着て眠っているように見える。アスターが少し近づくと、ペースの片目が開いた。どうやら起きていたらしい。


「姐さん。迷惑かけてすみませんでした。ここまで運んでもらってありがとうございます。うちだけでどうにかしたかったんですが、できませんでした」


 彼女の顔は悔しそうな顔になっていた。彼女は再び目を瞑る。アスターは特に彼女にかける言葉も思い浮かばず、次の言葉を発することはできなかった。


「本当なら、一人であの怪しい二人組を倒したかったんです。でも、近くに姉さんがいるのを見つけて、それで少し油断してしまったんです。姐さんがいれば、勝てるだろうって」


 アスターは彼女の言葉をただただじっと聞いていた。何も返す言葉などはない。彼女がアスターがいたからだといっても、それをアスター自身は自分のせいだとは思えないし、彼女自身もそのつもりはないのだから。


 彼女はそれ以上話すことはなく、そのままアカリの治療を受けていた。アスターも彼女に何も声をかけることはなかった。ペースも特に彼女が何か厳しいことや優しい慰めなどをかけてもらえるなんて思ってなかったし、そもそもそんな声をかけるアスターを見たいとは思わなかった。


「ほら、これでいいか」


 アスターがペースから離れて、少し待っていると奥からリーダーが長く、頑丈そうな金属のような光沢をもった紐を持ってきた。簡単に抜けられると困るが、簡単に結べなければ使えないだろうと、アスターは思っていたのだが、リーダーが軽く扱って彼女が気絶させてきて連れてきた相手の腕と足を縛っていた。そう簡単に外れなさそうな結び方であった。


 彼女は気絶した相手に近づいていく。相手は危機感などなく、そこで眠っている。彼女はそんな寝顔に魔法で水を作り出して、ぶっかけた。それも肌に痛みを感じるほど冷たい水だ。そんなものをかけられれば、誰だって目を覚ますだろう。相手の口からヒュというような音が出て、咳をし始めた。咳をしながら、相手の眼球が動き、周囲を確認しているのが見えた。アスターは相手の顔の前に座った。相手も彼女の方に視線を向けた。体を動かそうとしたのだが、相手は自身の体を動かせないことに気が付いた。どれだけもがいても、少しもほどけそうもないのが分かったのか、相手はもがくのをやめた。そして、口から舌が少し出たところで、彼女は相手の口に手を突っ込む。


「舌を噛んで死のうって? 変わらないな」


 そのアスターの言葉に暗殺者は目を丸くして、彼女を見た。変わらないと言われれば、自分たちのいる場所が元居た場所のような言い草だ。相手のその表情の変化は一瞬だが、彼女はそれを見逃さない。


「そっちの考えてる通りで合ってるはずだ。だが、抜け出した。お前ももうやめたいなら今やめろ」


 彼女の言葉を聞いているはずだが、相手は口に突っ込まれた手に噛みついていた。彼女の手から出血し始めていたが、彼女の表情は特に変わらない。そうすることも、彼女は理解できていた。だから、彼女は手を相手の口に奥に突っ込む。すると、相手の手を吐き出した。


「そんなに死にたいならいいや、殺してやる」


 彼女はマジックガンを相手に向けた。二丁のうちの片方を相手の額に、もう片方を口の中に狙いを定めていた。額の方は銃口がぴったりとくっつていて、口の方はもう少しで口の中に銃が入りそうなくらいに近づけていた。

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