悪を許さず 2
アスターの家の中は広いわけではない。しかし、部屋がいくつか小分けになっていて、その部屋を区切る壁は存在する。家のドアを入って、すぐには玄関がある。そこから繋がる部屋は一つでリビングだ。玄関とリビングの間には壁ががあり、その壁の一部が人が一人通れるくらいのドアが付いている。ドアといっても、風通しがいいように、オアシスの周囲に生えているヤシの木の葉と木を組み合わせたものである。葉の隙間からリビングの中を見ることが出来た。しかし、その隙間からでは全く、リビングの中の様子を探ることはできない。
彼女はリビングへのドアの隣の壁に背を預けて、ドアを片手で押して開く。ドアはその力でゆっくりと開いて、完全に開ききった。彼女は壁から軽く顔を出して、中を確認する。リビングもおそらく、朝の状態から変わっていないように見えた。荒らされた形跡もない。リビングにあるのは一人用のソファに、木製の椅子、石造のテーブル。壁には木製の格子が嵌められた窓もある。その窓もいくつかあるが、どれも無理やりあけられたような痕跡はなかった。だが、それだけわかっても油断はできない。彼女はリビングにゆっくりと入っていく。ソファなどで死角ができてしまっているため、その辺りに意識を向けながら、リビングに入っていく。リビングに入っても、特に何かが襲ってくるわけでもなく、何事もなくリビングに入ることが出来た。
リビングからは玄関以外に三つの部屋に繋がっている。一部屋はトイレと風呂のような空間がある部屋だ。もう一部屋は、食糧庫兼キッチンのための部屋。そして、最後の一部屋が寝室だ。その中にどこかに何かが潜んでいる可能性があるのだ。彼女はマジックガンを手放さずに、リビングをゆっくりと周囲を見渡しながら歩く。死角になっていた場所を通るときはその方向に銃口を向けて歩く。少しでも何かが動こう物ながら、トリガーを引いて先手を打とうとしていた。そして、結局はリビングには何もいないようだった。彼女はまずはトイレのドアの前に立ち、中の様子を確認するためにまずは聞き耳を立てる。やはり、中から何かの音がするわけではなく、自身の目で確認するしかなかった。今度はドアを勢いよく、バッと開いて、それと同時に中に銃口を向けた。正面にはトイレを隠す木製の衝立があり、その隣にも木製の衝立があった。その奥は体を拭く空間だ。衝立が多いというこ都はそれだけ確認しなければいけない場所も多いというわけである。そして、衝立は天井まであるわけではないため、上から奇襲をかけに来る可能性もある。狭い空間だからと、ここを最初に調べようと考えたのだが、間違いだったかもしれないと思った。だが、ここを放置して他の場所を探そうとは思えなかった。まずは、トイレの方の衝立の裏を見る。衝立の上にも注意しながら、トイレの方を見たが、そこには誰もいなかった。そして、体を拭く空間の方も同じようにしてみてみたが、そこにも誰もいなかった。なにも見当たらなかった水場を離れてリビングに戻る。水場に続くドアは締めずに開けたままにした。次に食糧庫の方へと移動する。同じように聞き耳を立てても、中からは特に何も音はしない。食糧庫は水場のような衝立もなければ、死角になるような場所もないはずだ。食料を入れているのも棚であり、箱のようなものもおいていない。そうなれば、隠れる場所もキッチン側の収納棚になるかもしれないが、そもそも人が入れるような収納棚はないはずだ。子供でも入ることはできないだろう。彼女はキッチンのドアをまた勢いよく開け放って、中を確認する。銃口を真っすぐに食糧庫の中に向けてみたが、そこにはやはり何もいない。念のため、食糧や食器を置いている棚をしっかり確認して、収納棚も人が隠れることができないと考えながらもその中を全て確認した。彼女の予想通りに、特に何もいないようだった。また、キッチンに続くドアを開けっぱなしにして、最後に寝室に向かう。彼女が他の部屋を探索している間に、リビングに戻ってきている可能性もあるため、警戒を解くことはできない。毎回、死角になる場所に銃口を向けて、そこに何かいるかもしれないと思いながら探索する。自身の家とは思えないほどの警戒心だ。
寝室のドアの前で同じように聞き耳を立てる。すると、中から微かに何かの音がした。それが何かはわからないが、ここまで何も見つからなかったため、いるとすれば寝室の中にいるのだろう。寝室は食糧庫やトイレとは違い、リビングより少し小さい程度の部屋だ。そして、一番ものが置いてある場所で死角も多い。彼女はマジックガンを握る手に多少力が入りながら、ドアにそっと手をかけた。




