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行方知れず 3

 二人組が路地の中に消えていくのを虚ろな目で見送ることしかできない。彼女はそれを追いかけたいと思っても、体と心がその欲についてこない。彼女はポケットに手を入れて、そこから小さな瓶を取り出した。中には少量の透明な液体が入っている。その液体には、極小のトゲトゲした物体が浮いていた。その小瓶は彼女が握れば、その掌に隠れるほどの大きさだった。彼女は小瓶に詰められたコルクを手で取って、仲の液体を口の中に流し込む。


 液体は塩辛くて苦い。なんともまずいとしか表現のしようのない味がして、それを飲み込むのも一苦労だった。しかし、その液体を飲み込めた彼女の手の震えが治まる。虚ろな瞳も光を取り戻して、恐慌状態が一瞬で通常の精神状態に戻った。それは彼女が戦闘奴隷だったころに持たされた毒である。調合こそ難しくないものの、その毒性により恐怖や不安を感じる体の仕組みを強制的に止めて、正常に戻すという効果のものであり、それは冒険者や兵士が戦闘した後に、生物を殺したという恐怖や不安を感じないようにするための《《薬》》として、創り出されたものだった。戦闘奴隷である者たちも、人を殺す恐怖心や不安を感じなくするために持たされているもので、使いすぎれば廃人になったり、思考能力が正常でなくなるという理由から、強制的に飲まされることはなかった。その代わりに、すぐに飲めるように何本も持たされていたものの一本を今使ったのだ。


 すぐにでも口を(すす)ぎたいが、去っていた二人組を探す方が優先するべきだった。彼女はすぐに立ち上がり、小瓶をポケットの中にしまった。なんとも気分が悪いが、先ほどまで感じていた恐怖心は感じなくなったし、思考はこれまでにないくらいにクリアだと感じている。彼女が二人が去っていた路地を進んで、男たちを探す。


「くそっ、こいつもかっ。邪魔ばっかしやがって」


「なんだコイツ。全然攻撃があてられねぇ」


 男たちが去っていた路地の先、そこで男たちが何か文句を言っているのが、アスターの耳に聞こえてきていた。二人の言葉を聞けば、そこで路地を進むのを邪魔している者がいるのがわかっていた。しかし、わざわざ夜に出歩く人はこの町にはいない。つまりは、男たちと同業である可能性の方が高いだろう。お互いに、知られては都合の悪いことをしているのだから、当然争いあうことになるだろう。


 彼女は二人に見つからないように、足音を消しながら、二人が戦っているであろう場所に近づいていく。夜の路地は見通しが悪い。彼女はあまりその先頭に近づきすぎないように気を付けながら、そこに近づいていく。


 男二人組と戦っている者が、暗い路地の中で微かに見えた。男たちの相手はたった一人のようで、二人の攻撃は全く当たらないが、二人を相手にしている者もまた攻撃をする隙を伺っているだけのようだった。その相手をしている者の動きは、アスターの目に慣れた動きに見えた。彼女はもう少し戦っている場所に近づいていく。薄暗くとも、近づけばその姿も見えてくる。そして、戦ってい者たちの姿がある程度見えるようになれば、二人を相手にしている者の姿も見えるようになった。


 今戦っているのはペースであった。こんな時間まで何をしているのかと思ったが、行方不明の子供を探しているはずだった。未だに見つかっておらず、捜索を続けていたのかもしれない。そんな中、この怪しい男たちに出会えば、誘拐の可能性も考えられるだろう。そして、ペースがその二人に襲い掛かったのかもしれない。


 彼女はマジックガンをそれぞれの手に持って、その銃口を男たちに向けた。動き回ってはいるが、そこまで近ければ回避されることもないだろう。彼女は銃のトリガーを引いて、弾丸を撃った。弾丸は真っすぐにやせ型の男の方に飛んでいき、ペースの攻撃に集中している相手はその弾丸に気が付けない。弾丸が相手の背中に直撃して、体勢を崩す。そのすきを狙って、ペースの蹴りが顔面に入った。銃弾の衝撃で前のめりになった後に、すぐに顔面に足の甲で蹴り上げられた男は、体を支えられず、後ろに倒れこんだ。筋肉質の男が蹴りを入れた彼女に拳をぶつけようと、腕を後ろに引いたところで、相手の脇腹の辺りに銃弾を入れる。彼女の狙いは正確で、火の弾丸の衝撃で腕を前に出すことはできずに、筋肉質な男が後ろを振り返ってしまった。その瞬間に、その男に腹に短剣を思い切り刺して、ぐりっとひねる。それと同時に短剣を引き抜いて、ペースは後ろに下がった。筋肉質な男もさすがにそのダメージに膝をついて、腹部を抑えていた。

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