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行方知れず 2

 アスターは村が夜になるのを待っていた。村の中心、水が湧き出て溜まっている近くに立っていた。水の方に体を向けて、誰とも目が合わないようしているうちに、周囲から人の気配もなくなっていくのを感じていた。夕方から夜に代わっていく、その時間の流れは周囲が暗くなっていくだけではなく、人の気配が減っていくことや人が話していることが少なくなっていくのを感じていた。


 そして、周囲から人の声も聞こえなくなったところで、彼女は動き出した。彼女は路地の中に入っていく。その細い道にはたいまつはなく、あるのは月光だけ。その明かりだって路地のすべてに届くわけではない。彼女は周囲を警戒しながら、辺りを見回して進んでいく。マジックガンを右手にだけ装備して、その手をコートのポケットに突っ込んで、いつでも戦えるようにしていた。


 彼女はしばらく、路地を進んでいた。唐突に後ろから音が聞こえて、その方向に銃口を向けながら、振り返る。そこにいたのは、探していた二人組の一人だった。やせ型の男が後ろにいて、右手を上げて、ナイフを彼女に突き刺そうとしていたのだ。彼女はとっさにマジックガンを目の前の男に放った。もう片方を取り出そうと、左のマジックガンを取り出そうとしたのだが、その前に背中に衝撃を受けてい。


「……っ!」


 背中に衝撃を受けたせいで声は全く出ず、一時的に呼吸も止まる。視線だけは後ろに向けて、相手を確認する。そこにいたのは、やせ型の男と一緒にいた筋肉質な男だった。男はその太い腕を前に出していた。その力の強そうな拳で殴られたのだろう。それを理解したところで、その状況は変わらない。筋肉質な男は広角を上げて、にやにやとしていた。彼女はその目に見覚えがあった。やはり、彼女が狭間に落ちてくる前の世界で人さらいをしていた二人で間違いないだろう。


 アスターがその二人の顔を忘れるはずはない。確証が持てなかったのは彼女は、その二人がこの世界に来ていると信じたくなかったからだろう。なぜなら、この世界に来る前の彼女は戦闘専門の奴隷であり、その身分に落ちたのはこの二人のせいなのだから。彼女が幼い時のことであるため、この二人が彼女のことを覚えているはずがない。名前だって違う。それに売った人間のことなどこの二人が覚えているはずもない。


「ったく。かぎまわってんじゃねぇよ」


「おお、オレのパンチで気絶しねぇのか!」


「手加減したろ? おい」


「そんなわけねぇですよ。手加減なんて、オレ出来ねぇです」


「まぁ、それもそうか。壊すなっつっても壊すからな、お前」


 二人がバカみたいなやり取りをしている間に、彼女は何とか体勢を立て直そうとしていた。背中の痛みが酷く、呼吸が一瞬止まったせいで、心臓が激しく鼓動していた。彼女は左手にもマジックガンを握り、銃口を向けようとしていた。


「討伐隊っつっても、この程度だよなぁ」


 彼女が銃口を向けたときには、やせ型が彼女の隣にいて、マジックガンを上から押さえつけて、銃口を下ろさせていた。離れようとしても、既に手首を掴まれて動くことができない。


「そんなに暴れんなよ。ちょっと痛い目に合ってもらうだけだからよ。なぁ、大人しくしとけ」


 アスターは何とか相手から離れようともがいているのだが、相手から離れることができない。手首を離させることができず、もがいても彼女が痛みを感じるだけである。そして、彼女がもがき続けていると、彼女の腹部に男の膝が突き刺さった。アスターは息が履き出て、脳の裏がちかちかするほどの痛みを感じていた。だが、気絶することはなく、男に視線を向けた。右手の銃口を相手に向けて、そのトリガーを引いた。しかし、相手はその距離でさえ、魔法の弾丸に当たることはなく、軽く体を動かすだけで回避していた。


「お、生意気な奴だなぁ。気絶してりゃ、それ以上は痛い目に合わなかったってのによぉ?」


 再び、相手の膝が彼女の腹部に突き刺さる。今度は、それと同時に相手が手首から手を放して、彼女は吹っ飛んだ。足に力が入らず、その場に膝をつく。呼吸すらままならず、浅い呼吸を繰り返す。苦痛にゆがんだ顔で男を見た。低い視線から見る相手の顔を見て、昔のことを思い出す。奴隷としての酷い生活。いうことを聞かなければ、死にかけるまで暴力を振るわれた。だから、従うしかなかった。その時の恐怖がフラッシュバックする。体が震え始めて、言うことを聞かなくなった。


「あ? なんだよ、こっからだと持ったのによ。もう降参か?」


 男の言葉に何も返すことはできず、その場で震えることしかできない。


「まぁ、これ以上俺たちの周りを嗅ぎまわるんじゃねぇよ? 次はお前を奴隷にして売りとばすからな。くくっ、俺って優しい~!」


 そういって、アスターを残して、二人は路地から消えようととしていた。

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