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今も平和な黄砂の村 5

 二人はパトロールの為に、村の周囲を見て回ることにした。アスターは先ほどの二人組も気になっていたが、すぐに見つけ出すというのは不可能だと考えていたため、とりあえずはパトロールをすることにしたのだ。村の中や周囲を見ていれば、何か手がかりや、本人たちを見つけることができるかもしれない。


 しばらく、パトロールを続けてみたが、手がかりもなければ、魔獣も見当たらない。あれだけ倒したのだから、しばらくは村の近くに出てくるとも思えないが、魔獣の出現に関しては周期的なものもなければ、その法則性も見出されていない。そのため、大軍を倒した後でも、魔獣が出てこないという確証は全くないのだ。そのため、魔獣を探して討伐するというのもこの時だからこそ、欠かせないことではある。


「やっぱり、魔獣なんていませんねー。あれだけ倒したんだから、もう出てこなくなってくれればいいんですけどねぇ」


 ペースは村の外側の砂漠を見ながら、そんなことを呟いていた。そんなことはあり得ないとわかりながら、昨日の戦闘を経験してしまえば、もう二度とああいう戦闘は起きないでほしいと思ってしまうのも仕方のないことだろう。二人はそれからも、村の周囲をパトロールしていた。


 村の外周を一回りした子ところで、二人は討伐隊の拠点に戻ることにした。二人が村に入って、拠点までの道のりを近道するために、路地の中を通っていく。その道は普段から使っている近道ではあったが、アスターはもしかしたら、拠点に入る前に見つけたあの二人組を見つけることができるかもしれないと、多少期待していた。


「姐さん? 何か探してます?」


 彼女はいつもよりも周囲に視線を向けていることに気が付いたペースが、彼女と同じように辺りをキョロキョロしながら、周囲を見ていた。


「……いや、何もなさそうだ」


 彼女はそれだけ呟いて、討伐隊の拠点に向かって歩いていく。その後も、彼女は周囲を気にしていたが、結局は何も見つけられなかった。あの路地で見つけてしまったことで、相手の警戒心が高くなっているのかもしれない。そうなれば、簡単に入れる路地裏などには出てこないかもしれない。もしくは、人が外に出ていない夜の方が、悪事を働くにはちょうどいいのかもしれない。


 討伐隊の拠点の中に入ると、そこにはアカリと、その正面に男女がいた。服装などを見れば一目で魔獣討伐隊ではないとわかる。黄砂の村の村人なのだろう。村人たちは自分たちで解決できない問題の一部をこうして、魔獣討伐隊に相談、報告することがある。巨大なサンドワームの報告も村人からのもので、それ以外にも村の近辺で魔獣を見たという報告は頻繁に受ける。それ以外の相談は最初こそ様々な相談があったが、結局解決できるのは魔獣などの戦闘に関してだけだということを理解せざるを得なかったのだろう。そもそも、魔獣討伐隊で木野きい人間はアカリくらいなもので、それ以外の者は線技術以外に才能があるものなどほとんどいないのだ。


 拠点の中に入った二人は、パトロールの結果が報告できないため、そこらにある椅子に座り込んだ。砂の上を歩き続ければ、それなりに疲労が溜まるのだ。座るだけで、足が楽になっていく感覚があった。


「その、私たちの息子が、帰ってこなくて……。朝に出て行ったきり、昼食にも戻ってこなくて。食事だけは絶対に欠かさない子だから、どうしても心配で。村の外には出ないように、と強く言い聞かせてはいるのですが……。すみません、どうにか見つけて漏らせませんか……。村のどこを探しても見つからなくて、この狭い村のどこにもいないんです……」


 アカリの前にいる女性が、どうにも落ち着かない様子で、アカリに懇願するように話している。男性の方は、女性の背中を抑えているが、その男性の顔もすぐれない。椅子に座っている二人も、その話が耳に入ってくる。話しているのが息子が行方不明になったという話なのは分かるが、この村のどこを探してもいないというのは、どうにも不穏だ。村の外に出てしまえば、見つからない可能性が高くなってします。魔獣に見つかれば捕食されて終わりだろうし、魔獣に見つからずとも砂漠の中で一度迷ってしまえば、報告感覚だってなくなって、暑さにやられて脱水症状で死んでしまうことも珍しくはない。そういう死に方をした子供の話も聞くこともある。両親であろう二人は心配で気が気ではないのだろう。それで、討伐隊を頼るしかなくなっているということなのかもしれない。


「姐さん。今日はもう仕事しませんよね」


 ペースが珍しく真面目なトーンで、アスターに真っすぐな瞳を向けていた。彼女が何をしたいのか、アスターはすぐに理解できた。だが、こんなことに首を突っ込むことはないと、アスターは考えていた。


「ああ、これ以上、仕事はしない」


「すみません。うち、今日はもう抜けます。報告はうちがしとくんで、姐さんは帰ってもいいですよ」


 ペースはそういうと、アスターの返事も待たずに、アカリの方へと駆けていく。アスターも立ち上がり、彼女は反対方向、拠点の出入り口へと向かって、外に出た。ペースが仕事を抜けて、子供探しに精を出すというのなら、アスターはあの男二人組について調べようと考えた。

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