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今も平和な黄砂の村 3

拠点に移動する途中。それも拠点にもう少しで到着するというところで、アスターは立ち止まった。建物と建物の間から何過去絵のようなものが聞こえたのだ。それもあまり聞こえて放置できるようなものはなさそうな声だった。悲鳴ではないものの、何か心に引っかかる声だった。彼女はペースに何も言わずに、進路を変える。ペースは彼女が後ろにいると思って話続けていたが、後ろから短い返事も歩く音も聞こえてこなくなったため、後ろを振り返るとそこには誰もいなかった。


「あれ、姐さん? ねえさーん!」


 彼女は声をかけても、返事は帰ってこない。元から呼んだって大きな声で返事をしない人であり、さらに誰にも声をかけずに、どこかに行ってしまうような人だ。彼女の実力なら多少のことならどうとでもできると分かっていても、それが心配しないという理由にはならない。彼女はアスターを探して、周囲を見て回ることにした。すぐに見つかればそれでいいが、見つからなかった時が一番心配であった。


 アスターは建物と建物の間の細い道になってしまった場所に入る。区画の整理が行われているはずもなく、建物の位置はバラバラだ。そのため、変なところに路地があり、その道も迷路のようになっている場所も沢山ある。彼女もその全てを把握しているわけではないが、ある程度どうなっているのかはわかっていた。特に拠点の周辺は一人で落ち着ける場所を探していたため、今彼女がいる周囲の路地はどうなっているかを把握していた。彼女が進む細い道の先には少し開けた路地裏の広場のようになっている場所だと把握していた。建物の窓もその広場の方向には付けられていないため、一人で休憩するにはちょうどいい場所でもある。その反面、素行の悪い奴がたむろしやすい場所でもある。彼女はパトロールと称して、その場所にたむろしている不良ども倒して、その場所を独り占めしているのだ。もしかしたら、そういうったことを知っているからその路地の先の声が聞こえて、不穏に感じたのかもしれない。


 路地の先に到着する前に、路地の奥から声がした。人の声であるということしか判断できない、小さな声だった。彼女は臆することもなく、その広場の方へと移動した。足音を隠すこともせずに、いつものようにこの場所に休憩しに来たようにその場に姿を現した。隠れることもなく、出てきた彼女にそこにいた男性が気が付かないはずはなく、彼女の方へと視線が向いた。


 そこにいたのは男性二人だった。一人はやせ型で、もう片方はそれとは正反対の筋肉質な男たちだった。やせ形の男は、軽装備ではあるものの、その状態で戦闘できるだろうというような見た目。筋肉質な男性はチェストプレートを装備していて、やせ型だの男と同じように、今にも戦闘が出来そうな見た目である。そして、二人の傍らには、わら袋があった。中に入っている者が歪な形のものなのか、わら袋も不安定な形をしている。


「討伐隊……」


「やっちまいます?」


 やせ型だの男は、アスターに鋭い視線を向けていたが、筋肉質な男性の方は彼女のことをなめているような態度をとっている。その証拠に、筋肉質な男は左の拳を右の掌にぶつけながら、彼女に威嚇しているような態度だった。


「休憩しに来ただけだ。お前らが縄張りにいただけだ。すぐに退()くなら攻撃はしない」


 彼女は右のマジックガンを取り出して、その銃口を相手に向けた。その程度では、男たちは驚く様子もなく、やせ型の男がフンと鼻を鳴らしていた。


「ああ、言う通りに退いてやるよ。少し待ってなっ!」


 言葉が言い終わると同時に、彼女にナイフを投げ飛ばす。ナイフはくるくると回転しながら、彼女の方へと飛んでいく。その速度は速く、彼女はマジックガンを反射的に撃ってしまった。弾丸はナイフにぶつかり、それを壁際に弾く。カランという音を鳴らしながら、壁にぶつかって地面に落ちた。彼女は一瞬、それに気を取られていたのだが、すぐに男たちに視線を戻した。しかし、その視線の先には誰もいなかった。いつの間にか、男二人は音もなく消えたのだ。どうにも悪い雰囲気の二人組であった。どう考えても悪事を働こうとしているのか、それも悪事の最中なのか。そういった匂いのする二人組だ。あのわら袋も何を淹れているのかわかったものではない。男たちと共に、わら袋も消えている。せめて、あの中に何が入っていたのかくらいは探るべきだったかもしれない。しかし、彼女は脅し以外の情報の引き出し方は知らない。脅した時点で、逃げた相手からは情報を得ることはできなかっただろう。

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