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緊急討伐 1

 太陽も沈みかけて、明かりのない砂漠をうろつくことができなくなって、アスターとペースは再び拠点の中に戻ってきた。ペースとアスターでリーダーたちに、今日の活動報告をするために戻ってきたのだが、拠点のドアを開ける前に、中から大きな声が聞こえてきていた。それはリーダーの声だとすぐにわかったが、外に聞こえるほど大きな声を出しているときは、怒っているときくらいなものだった。また、魔獣討伐隊の他のメンバーが何か失敗でもしたのかと思いながら、彼女たちは他人が怒られていようと関係ないと、ドアを開いて拠点の中に入っていった。


 中に入ると、彼女も顔くらいは知っている男性二人がリーダーの前に立っていた。二人は、リーダーとアカリに何かを必死に説明している。リーダーも難しい顔をして、アカリは手に持っている端末をいじっていた。そして、中に入った二人の方に四人の視線が向いていた。この拠点の中だと入ってくる人に視線が向くのは日常であるため、二人はその視線も気にせず、近くにあった椅子に座った。男性二人の話が終わらないと、リーダーたちに今日の報告ができないのだ。その間はどうしても待つことになる。


「そういえば、こんなに暗くなったのに、全然戻ってきてませんね~、他の人たち」


 そういわれてみれば、仕事も続けられる明るさでもないはずなのに、他の討伐隊は今、話している四人以外には、彼女たちしかいない。既に全員が報告し終えているのかもしれないと思ったが、それにしてもこれだけ人が少ないのは珍しい。そう思った矢先に、リーダーが二人に声をかけた。アスターは視線だけを彼に向け、ペースは立ち上がって、彼の方を向いた。


「こんな時間からですまないんだが、緊急討伐の仕事だ。俺も出る」


「チッ」


 アスターは舌打ちだけして立ち上がった。ペースも面倒くさそうな顔をしている。


「討伐対象は、スウェースエナだ。だが――」


「はぁ? そんな雑魚が緊急討伐だと?」


 アスターは彼の言葉を遮って、にらみつける。


「最後まで聞け。その数が三十を超えるくらいの大群が、この村に向かって走ってきてるんだ。既に連絡を付けたものはすでに、戦いに出た。足の速い者たちには他に連絡しに行ってる。お前たちも加勢に行ってくれ。頼んだぞ」


「チッ」


 アスターが再度舌打ちして、リーダーに背を向ける。その背中にアカリが近づいてきた。


「すみません。場所は村の北側です。おそらく、村の北側に行けば、すぐに戦闘場所がわかるはずです。それくらい大規模な魔獣の群れです。何としてもせき止めてください。私たちもすぐに向かいますから。宜しくお願いします」


 アカリも焦った様子で、彼女たちに緊急討伐の説明をする。その様子を見れば、切羽詰まった状況であることは間違いないだろう。ペースもアカリの焦った様子を見て、それが伝線したかのように、落ち着かない様子だった。


「姐さん、すぐに行きましょう。この村に魔獣が入ったら大変なことになります!」


「わかってる」


 アスターはそれだけ言うと、拠点から出て行った。それに続いてペースも一緒に外に出た。町の中にいれば、人々が生活しているのがわかる程度の音しか聞こえず、町の中は平和だった。しかし、すぐそこで町がどうなるかもわからないほどの戦闘が行われているのだ。この平和は魔獣が一匹入り込んだだけで、壊れてしまう。


「チッ。仕方ねぇ」


 三度目の舌打ち。既に一日仕事を終えた後に、さらに討伐の仕事など、本来なら断る。しかし、この村がなくなるのは、彼女だって困るのだ。討伐隊だけ生き残っても、この村で生活できるはずもない。だから、彼女は諦めて、自分に仕方ないと言い聞かせる。一度、割り切ってしまえば、あとは戦うだけだ。


 二人は、町の中を走り、北の方へと向かう。ペースが村人の数人とすれ違いざまに言葉を交わしながら、走るアスターについていく。魔獣討伐隊が急いでいるということは、村人たちも察するものくらいはあるだろう。しかし、ペースは村人たちに大丈夫だと言っていた。彼女の言葉、一つだけで村の人たちは安心したように、不安な様子は一つもなかった。


 そして、村の北側から砂漠に出た。すぐわかると言っていたが、村を出てすぐ戦闘をしているわけではなかった。だが、少し周りを見れば、戦場がどこにあるのかはすぐにわかった。二人は戦場に向かって走っていく。




 砂漠の戦場では、既に集まっている討伐隊が二十人ほど。そして、討伐対象の魔獣は、二人が聞いた三十を超えるというのは間違いで、戦場にはすでに百近くはいるのではないかと思えるほどの数に見えた。その数が入り乱れて戦っているため、魔獣討伐隊は連携を乱されていた。そもそも、仕事時のチームでなければ、連携するのは難しいため、こんな戦い方になれば連携等できるはずもない。人の叫び声と獣の唸り声がそこら中から聞こえてくる、その光景を外から見ればただの地獄にしか見えなかった。

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