黄砂の村 5
魔獣を解体し終わり、二人は解体したそれを全て、ペースの持っていた袋の中に詰めた。四匹分を解体したものを袋に入れると他には何も入らないくらいにパンパンに袋が膨れ上がっていた。
「今日は大量ですね! うちたちが一番じゃないですか? あはは!」
ペースは大きな袋を背負って、いつも以上にテンション高く、彼女に笑いかける。その顔を見れば、多少力も抜けてアスターもふっと笑ってしまった。それがペースを調子付けることになるのはわかりきっていることだった。
「お、姐さんも嬉しいですか。姐さんが嬉しそうだと、うちはもっと嬉しくなります!」
先ほどよりも広角を上げて、心底楽しそうに彼女はそう言う。彼女としばらく一緒に行動しているが、どうしてここまで冷たい対応になってしまっているのに、こうして笑いかけてくれるのか、アスターは全く理解できていなかった。戦闘においては、アスターも自身があり、その戦闘技術を目当てにチームを組んでいるというのならわかる。だが、そうならわざわざ笑いかける必要はないし、いの一番に自分のところまで、まるで懐いた犬のように一緒に行こうと言ってくることはないだろう。それに、魔獣討伐隊に所属している者であれば、彼女と同等以上の戦闘力を持ったものも少なくはない。だが、アスターはペースになぜ一緒にいるのかと問う勇気はなかった。その意気地がないのを、いつも何かのせいにしてずっと強がって聞いてこなかった。今回も、暑くて面倒くさい話はしないと結論付けて、そのことを聞かずに、町に戻ることにした。
村に戻ると、いくらか涼しくなる。真っ直ぐ、拠点へと戻る。次の場所をパトロールするのでも、他の仕事をするのでも、大量の荷物を抱えていては、仕事ができなくなるだろう。その荷物を拠点に渡すために戻ってきたのだ。
「アスター姐さんとうちが戻ってきましたよ~っと」
陽気なテンションでペースが先に入り、その後ろからアスターが防止を取りながら中に入ってくる。中には討伐隊のリーダー、仕事をする前のミーティングの開始の合図をしていた男性がいた。その隣には、ミーティングで報告をしていた女性が立っている。
「あれ、リーダー? こんな時間にいるのって珍しいですね。仕事はもう終わり?」
「仕事中だな。いや、それがやっぱり、緊急の報告って朝あっただろ? あれは嘘じゃないってぽくてな。村人からまた報告があったとさ。な、アカリ」
リーダーが隣にいる女性に視線を向けると、隣の女性はコクリと頷いていた。
「どうやら、この村より南東の方で見たようですね。しかし、サンドワームだとすれば、同じ個体かどうかわかりません。対処しようにも、地面の下にいる相手ではこちらから仕掛けるのは難しいです。どこに出てくるかもわからない相手の真上でただ待って行動するなんて杜撰な作戦は使えません」
アカリはリーダーにジトと視線を向けていたところを見ると、どうやらそういう力押しの作戦を何の考えもなしに行ったのかもしれない。アスターはその作戦でも問題ないと思っていたが、アカリはそういうった明らかに犠牲が出るような作戦は嫌がっていた。討伐隊の頭脳であるから、責任感が強いのかもしんれない。討伐隊の大半はその力押しの作戦の方が考えることが少なくていいと思っている人の方が多いだろう。
「じゃあ、緊急討伐の仕事にはしないんですか?」
「いずれやってもらいますけど、まだ情報が少ないため、すぐに行動することはできません。いつもどおりの仕事をお願いします」
ペースたちが話している間、アスターは近くの椅子に座って、三人の話を聞いていた。特にイラついているわけでもなく、ただただ聞こえる情報を頭に記憶しているだけである。人と話すのはペースの方が圧倒的に適性があるのだ。報告の上がった魔獣の話が終わると、ペースが持っていた袋をアカリに預けた。アカリは中身をカウンターの上に取り出していき、アカリが持っている不思議な端末に何かを記録しているようだった。そして、袋だけを返された。ペースは二人にお礼をいって、アスターの元に戻ってくる。
「お待たせ、姐さん。まだ、仕事します?」
「ああ、少しパトロールくらいはしておくか」
アスターとペースは拠点から出た。また町から出ていくことにしたが、今度は南口の辺りから出て、南東の方向を向いて少しだけパトロールすることにした。方向を変えたかどうかわかるのは、ここに町があるからで、町がなければおそらく方向すらわからないだろう。なぜなら、南東を見ても、見せる景色は南の方角を見ていた時と同じだからである。さらに、多少、日が落ちてきて暗くなっているため、明かりのない砂漠も見にくくなっていた。
「んー、これじゃ、町から離れたら死にますね……」
夜の明かりのない砂漠は危険であった。魔獣は暗くても人間を発見できる。だが、人間は夜は視界が悪くなる。そのため、夜に村から離れるような人間はいない。アスターとペースもそれを理解しているため、それ以上仕事をしようとは思わず、拠点に戻ることにした。




