黄砂の村 3
二人は、町から出ていった。方角はだいたいわかっていて、迷わずに町の南から出ていく。集落から離れていくと、途端に熱さがグンと上がったように感じていた。それは勘違いではなく、村の中心にあるオアシスから離れれば、涼しさから離れていくことになる。しかし、討伐隊だけでなく、この村の住人は村か出れば気温が上がることくらいは、当然理解しているもので二人も既にこの環境に慣れていた。だから、二人とも特に表情も変えずに、町の外に出ていた。
魔獣討伐隊に所属している者の八割は狭間に落ちてきたものである。砂漠に落ちてきて、死にかけているところをこの村のものに救われて、黄砂の村の外、すぐそこに村があるわけではないことを知ると、黄砂の村で生活した方が死なずに済むと考えた者たちが、この村のためにできることをするという発想で始めたものである。今の魔獣討伐隊の隊長や副隊長は狭間に落ちてきたものである。そして、二人も狭間に落ちてきた者たちだった。二人の武器はこの黄砂の村で得たものではなく、元居た世界から一緒に落ちてきたものであった。この村の近くに落ち着てきた者はどうしても、魔獣討伐隊以外の職業に就くことは難しかった。元から、戦闘以外の知識に秀でたものでなければ、まず他の職に就くことは許されなかった。二人は元から戦闘の技術があったため、特に何の問題もなく、討伐隊の仕事も難なくこなすことが出来ていた。
二人は村から多少離れて、砂漠を見渡していた。毎日、見回りをして魔獣を倒してきているため、そうそう町に魔獣が入るなんてことはない。砂の下に潜む魔獣も、水のある場所は避けているようで、村周辺に地中から出てくるような魔獣はいないようだった。少なくとも、彼女がこの仕事をし始めてからは一度も、その魔獣を町の近くで見たことはなかった。
「緊急連絡とか言ってましたけど、特に何も変わりませんね~。こんな砂しかない場所をパトロールしても意味ないと思っちゃいますね」
「まぁ、確かにな」
二人は肩の力を抜いて、周囲を見渡していた。一応、緊急連絡が共有されていたので、そのことは頭の隅に置いておくが、それらしい魔獣は特にいない。砂に潜って、空中に見える太い魔獣など、サンドワームくらいのもので、それが町の周辺に出てきていたなんて信じられない。もしかすると、遠くに出たサンドワームが想像以上に大きくて、遠近感がおかしくなり、町の近くに出たと勘違いした可能性もある。しかし、そう考えると、想定外の大きさのサンドワームが出てきたことになるため、それはそれがあまり想像したくはない。その巨大なサンドワームと戦うのは自分たちになるのだ。そう考えると憂鬱になるだけだった。
二人でさらに砂漠を見渡していた。そして、しばらく見回りをしていると、二人に近づいてくる魔獣が目に入った。犬のような見た目の魔獣だ。二人が先に気が付き、相手まだ気が付いていないようだった。しかし、この砂漠で奇襲というのは難しいだろう。透明になったり、気配を消すような超能力がなければできないことだ。二人はそれがわかっているから、二人は隠れることもなく、魔獣に近づいていく。既に村から多少離れたところではあるが、ここでその魔獣を倒さずに、あとで何か起こったとなれば、後悔することだろう。それに、魔獣討伐隊では、見つけた魔獣は全て討伐せよというルールがある。アスターは拳銃を抜いて、その隣を走るペースは短剣を二本抜いて、魔獣に近づいていく。
魔獣に接近していくと、魔獣も二人に気が付いていた。魔獣の数は四匹。最後尾にいた魔獣が二人に気が付いて、ヴァンと鳴いた。四匹とも二人の方を見て、戦闘態勢を取っていた。アスターがマジックガンを使用するために途中で止まり、四匹の内、先頭にいる魔獣を狙って引き金を引いた。魔法弾は周囲の魔気を銃の内部に取り込んで、圧縮して弾丸として放つという仕組みだ。だから、周囲の魔気の内、一番強い魔気の属性が反映される。この砂漠において、一番強い魔気は火の魔気で、火の弾丸が射出されていた。戦闘の魔獣の胴体に火の弾丸がぶつかり、魔獣の一帯はその衝撃をその体で受けきることはできずに、後ろに吹っ飛んでいく。残りの三匹は吹っ飛んでいった魔獣を気にも留めずに、前に出ていたペースに突っ込んでいく。ペースは三体の魔獣を相手にしても、軽い体でひらひらと攻撃を回避し続けていた。回避する途中で相手に隙があると、短剣で相手の体の表面に刃を通す。刃が深くまで入らずとも、肉を切ることで、ダメージを与えていた。




