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村での生活 4

 メートはクリスとクミハから、二人の知っている薬草などの植物の知識を教えてもらった。そうして過ごしている間に、警備隊の訓練をしたり、村の畑作業などを手伝っていた。娯楽のようなものは人との会話くらいのもので、それ以外にすることがないから仕事を手伝っていたのだ。


 最初こそ慣れないことで手間取ってもいたが、三日もすれば作業も大抵離れてくる。畑仕事に関しては今できることは一通りできるだろう。そもそも、水やりや雑草取り、畑に植えたものが病気になっていないか、食われていないかを確認するだけだ。畑の規模から大変そうに思えたが、やってみれば流れ作業で慣れれば手間にも感じない。警備隊の訓練も順調といえるほどだった。戦うことが肌に合わず、警備隊をこれ以上続けられない者もいたが、既に他の仕事に回っていることも聞いた。反対に元の仕事を辞めて警備隊に入ったものもいた。基本的には、警備隊の訓練する姿を見て憧れた若者が入ってきていた。途中参加ではあるが、やる気は高く、真剣に訓練を行っている。最初こそ、筋肉痛だの魔獣との怪我がどうだと言っていたのがメートの耳にも入ってきていたが、今はそんな文句もなくなっていた。連日、実践を積んでいれば、多少の怪我なら気にならなくなるだろうし、筋肉痛なんてものもなくなるのは当然だろう。そして、若者の士気が高いことで、元から警備隊にいた者たちの士気も高くなっているようだった。彼らは若者の訓練を見守りながら、自らも訓練しなくてはいけなかった。多少の怪我からは守る必要はないが、大怪我をさせるわけにはいかないのだ。その怪我でもう戦えないというのは、もったいない。メートは、年齢に関して考慮していなかったし、実践においては大怪我することも成長に繋がると考えているため、彼が人を守ることはなかった。致命傷を与えるような魔獣がその森の中にいなかったというのもあるだろう。


 そうして、彼が村に滞在するようになって三十日ほどが経過した。日付という概念がないせいで、一か月や一週間という数え方はしないようだ。彼がそれだけ滞在して、村の生活にも慣れて村の一員になったころ、彼は前から考えていたことを実行するときが来たと思った。警備隊の訓練ももう自分は必要ないと思ったし、この村で得ることができる知識も十分だと思った。結局は、植物の知識かつ、穏やかな森の中の植生しか知ることはできなかったが、彼はそれでも満足していた。この知識がいつ役に立つのかわからないが、知識が増えて悪いことになるとは思えない。そこまですれば、彼もこの村に滞在し続ける必要はなくなってしまった。もちろん、このままこの村で生活していきたいと言えば、クミハもジャスもクリスも賛成してくれるだろう。だが、この狭間で起こっている異変を解決しないことには、この村も名前の通りに穏やかに過ごし続けることができないかもしれない。あの巨大な鹿が出現する前に、狭間の壁に干渉していたあのローブの男がどうにもずっと気になってしまう。そして、あの男以外にも狭間の壁に干渉して何かをしている仲間がいるような口ぶりだった。もし他の場所でも壁に干渉して異常な魔獣が出てきているとすれば、それがいずれこの村に干渉し始めることになるだろう。そうなる前に、あの男を止めなくてはいけない。だが、あの時すぐに村を離れるという決断はできなかった。魔獣に対抗できる手段があの時にはなかったし、クリスやクミハ、ジャスたちも心配だった。だが、今は多少強力な魔獣が出てきたとしても対処できるだろう。だから、出ていくならこのタイミングしかない。


 そう思って、その日の夕食でクリスたちにその計画を話した。何も隠さず、考えたことも全て。ジャスはメートの考えを理解しているようだった。クミハもジャスと同じように理解はしてくれていた。クリスは、メートが出ていくことを嫌がっていた。おそらく、ジャスとクミハも同じ気持ちなのかもしれない。その証拠に、いくら待っても彼が村を出ていくことには賛同してくれなかった。だが、反対もしないのは、二人が彼の考えも尊重したいとも考えているからだ。結局は、村の為になると思ってそう言ってくれている。それがわかるから、彼を引き留める言葉が出てこない。おそらく、何も考えず、自らの感情だけで話せば、クリスと同じように彼を引き留めたいのだろう。


「……わかった。だが、たった一つだけ約束してくれ。何があっても守ってほしい。義務じゃない。これは俺たちのお願いになるんだろう。……約束は、何があってもどれだけかかっても無事にこの村に戻ってくることだ」


 ジャスが代表して、彼にそう言った。その瞳は真摯なもので、彼はその約束を結ばないなんてことは絶対にできなかった。それだけ、自分のことを思ってくれている。そう感じて、目が潤んだ。だが、メートは涙を一つも流すことはなかった。彼の横で、クリスだけが彼が出ていくことを認めず、彼を引き留めようとしていた。


「わかった。絶対に戻ってくる。約束だ。……クリス、ごめんな。もしかしたら悪いやつがいるかもしれないんだ。そいつを倒したら戻ってくる。ずっと安心して生活できた方がいいだろ?」


「でも、寂しいもん! いやだ! ぜったい、やだっ!」


 子供らしくも聞き分けの良いクリスらしくないほど、彼女は顔を横に振り、彼の言葉を拒否していた。

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