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村での生活 3

 二人は森から家に戻ると、クミハに採ってきた薬草見せた。彼女はそれほど大量の薬草を、しかも森の浅いところでは見つからない薬草まで混じっているそれを見て驚いた。確かにそれだけあれば、感謝すべきだろうが、クミハからすれば、二人が森の中に、それも奥の方へと入ってきた証拠でもあった。


「二人とも、薬草を採ってきてくれたことは嬉しいけど、あんまり森の奥に行かないこと」


 クミハが、もちろんクリスが心配であったことは間違いないが、既にメートのことも子供のように感じている部分がある。彼が森の奥で死にかけて戻ってきたことは記憶に新しい、彼が無茶をしないと約束はしてくれたが、そうするしかないときには必ず無茶するだろう。そうでなければ、あんな姿になって帰ってくるはずがないのだ。そのため、彼が森の奥に入っていくことで、彼が再びあんな姿になって戻ってくることが怖いのだ。


 クミハがそれ以上怒ったり、説教したりすることはなかった。しかし、クリスがせっかく二人で薬草を採ってきたのに、あまり喜んでくれなかったことを不満に思っているようだった。いつもの表情に見えるが、おそらくクミハやジャスが見れば、何か不満があったのだろうとわかるくらいの変化で、まだメートがその些細な変化を理解するのは難しかっただろう。


 不満があっても、もうすでにどこかに出かけるような明るさではなく、今から外出してもすぐに夜が来て、家に戻ってくることになるだろう。そんな時間であるため、ジャスも帰ってきた。彼は相当訓練を頑張ってきたのか、薄汚れているうえに、汗の匂いがしていた。ジャスが家の中に入ってくると、クリスが眉をひそめている。それに気が付かず、ジャスは家の中に入っていく。


「あなた、体をふいてきた方がいいわ。そんな状態じゃ、夕食は食べられませんから」


 ジャスは彼女の言葉に素直に従って、家の外に出ていく。ここらで体を洗うと言っても、石鹸のようなものはなく、布で体をふく程度のものだ。水は魔法で出すことができるため、布があれば体をふくことができる。


 それから、ジャスが体をふいて戻ってくると、夕食となる。メートも数度彼女の料理を食べているため、ここらの料理にも慣れてきた。真新しい味ではないものの、最初に彼が生きていた世界のような調味料は無いため、味付けも素材の味のものが多い。彼の下はそれでも十分においしいと感じることができたが、何か物足りないかと聞かれれば頷いてしまうだろう。だが、彼は調味料の作り方は知らない。


 この世界に来てから、知識が足りないと考えることが多くなったことに気が付いた。最初の世界では、両親の世話になっていたし、次の世界ではそういうものは必要ない場所だった。自らの知識を増やそうと考えれば、探すべきは本だと彼は考えていた。しかし、この村で本を見た記憶がない。本のようなものや紙も見た覚えがない。彼が食事をしながら、そんなことを考えていると、クリスが彼の顔を見つめていた。彼の思考は一度中断されて、彼女に視線を返した。


「メートお兄ちゃん。どうしたの? 考えごと?」


「あー、そうだな。考えごと。紙とか本ってこの村にはないのか、と思ってな」


 彼の言葉にクリスは不思議そうな顔をしていた。何が不思議なのか、彼は理解できない。クリスに訊いた問の答えは、クミハが答えてくれた。


「この村には紙は無いわ。もちろん、本もない。必要ないのよ。狭間の商人もこんな穏やかな場所までは来ないの。この穏やかな森の村はここだけで生活を完結できてしまう。研究するような人もいないし、次の世代に残す生活の知恵は、口で十分なの。ただ、紙も本もこの村に入れちゃダメってわけじゃありません。だから、もしかしたら村中に訊いて回れば本を持っている人はいるかもしれませんね」


 確かに、クミハの言う通り、村の現状を思い出せば、原始的な生活に近いだろう。村の人を賄えるだけの食料は畑と森の中にあり、金も必要としない。旅人も商人も来ない。他との交流がなければ、紙を入手することもないのだろう。当然、必要もなく、忘れられている物には一から作ろうという選択肢を取るものはいないのだろう。


 だが、本がないとなれば、知識を増やすのはこの村の人に訊いていくしかない。クリス、クミハは薬草を扱うことができるようだし、まずはその知識を教えてもらうのがいいだろうと考えて、彼は本を欲した理由から説明する。クミハは家の仕事の合間なら教えてくれるそうで、クリスはいつでも教えてあげるとかなり張り切っていた。クリスはいつも助けられてばかりで、彼を助らえるとなれば張り切っているのだ。

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