村での生活 1
クリスと共に家を出て、警備隊のいる場所まで案内してもらう。確か、警備隊の為の建物はないといっていたような気がする。クリスはいったいどこに案内しようというのかわからないまま、彼はクリスに腕をひかれるままになっていた。
「ここだよ。警備隊の人たちの新しい場所なんだって」
彼女が案内してもらった場所は、まだ建設途中に見える建物だった。基本的にはこの村の家のつくりと同じように、丸太を組んだログハウスのようなものだ。そのログハウスの前にはこのログハウスの材料であろう丸太が積んであった。
「おお、もう大丈夫なのか」
ログハウスの近くにいたカオウが二人に気が付いて近づいてくる。
「今までは、警備隊の拠点なんていらないと思っていたが、訓練とか会議するならやっぱり必要だってなったから、今更ながらに拠点を作ることにしたんだ。こっちの方が気合が入るだろうしな」
警備隊の拠点がある場所は、村と森の協会の辺りであり、メートが巨大な鹿と戦う前にジャスと話していたあたりである。森にすぐ入ることができる位置であり、森の中で訓練をするにも都合のいい場所である。
「それはそうと、体調もだいぶ良くなったみたいでよかった。今日もリハビリがてらクリスと散歩か?」
「いや、もう体調も大丈夫そうだからな。前にした約束を果たしに来たんだ。警備隊を鍛えてくれって言ってただろ」
「ああ、そうか。早速、だな。ありがとう。警備隊はほとんど、ここにいるはずだ。村の警備に五人ほど出ているが、呼べば来る」
そうして、警備隊の訓練が始まった。訓練といっても、完全に魔獣相手の実践で魔獣の攻撃に当たれば当然、怪我をする。警備立の面々は森の浅い場所に出てくる魔獣ですらてこずるようなものもいて、それでは警備隊が務まらないだろうというような戦力である。そもそも、魔獣が村の中に入ってくるようなことはほとんどないのだろう。もし入ってきたとしてお、カオウやジャスのような多少なりとも実力がある者たちで対処できていたのだろう。だが、鍛えてくれと言われたからには、人任せにしていいなんて考えを許すつもりはなかったし、警備隊の者たちも自分が守りたいという意識は強かった。そのせいか、多少の切り傷、擦り傷で後ろに引くことはなかったし、泣き言も言わなかった。
そして、しばらく戦っていると、彼らの訓練している周囲には魔獣がいなくなったようで、彼らを襲うものもなくなっていた。ほとんど警備隊が息を切らせていて、カオウとジャスも多少は息が上がっている。この程度で音を上げるものはおらず、彼らは襲うものがいなくなっても武器を離そうとはしなかった。体力が足りず、膝をついている者でさえ、武器は握ったままであった。
その状態で、次の魔獣のいるポイントを目指してもいいかと、メートは考えていたが、おそらく、次に行けば無理をして死人が出る可能性がかなり高いと考えて、その日の訓練はそれでやめた。気が付けば昼になっていて、休憩へ。休憩後は特に訓練するつもりもなく、警備隊の者には森での訓練は禁止と指示を出した。彼の前の世界のような体を彼らも持っているというのなら、一日ぶっ通しで訓練してもよかったが、彼も含めてこの狭間の人間の体は前の世界の者の体よりも圧倒的に弱い。無理に訓練をして、二度と戦えなくなるくらいの体になるよりも、長期的に見て無理無茶をしすぎない訓練方法の方が、彼らにはあっているとも考えていた。ただ、一度くらいは死に目に会わなければ、限界を超えた力を自分の意志で操るというのは難しいことだろう。おそらく、それも訓練していけばわかることだろう。
昼食のために、一度クリスと共に警備立の拠点から家に戻る。昼食はすでにクミハが用意しているところだった。そのまま、昼食ができるのを待って、三人で昼食をとると、再び彼は家を出ることにした。もちろん、クリスも一緒だ。
彼が怪我をしたり、体力と魔気を回復するのに、彼らの集めた薬やら備蓄やらを消費していたことをカオウから無理やり聞き出したため、彼は自身に使ってもらったそれらを回収するために森の浅い場所に来ていた。何度見ても、穏やかな森であり、魔獣を見かけて戦っても大した戦闘力はなく、クリスを守りながらでも十分に戦闘できている。どうやら、巨大な鹿と戦って無茶をしたことで、体力や魔気が向上しているようだった。森の浅い場所でてくる魔獣程度なら、十連戦くらいしても大丈夫そうなくらいだ。おそらく、また巨大な鹿と戦闘することになっても、次は気絶せずに、村に自力で帰ってこれるはずだ。ギリギリまで戦っていたせいで、彼自身の能力が鍛えらえていたのだ。




