迷い人の行き先 4
剣と盾の使い方は下手に放っておらず、三匹相手でも善戦できるくらいの実力はあることを確認した彼は、剣だけではなく、魔法も組み合わせた戦い方をしようとしていた。ここに来る前はそういう戦闘方法も少しはできていたはずだ。それに魔法の同時発動などもできたはずであるため、今以上の戦闘技術を持っているだろう。
善戦できているからと言って、戦闘スタイルを変えた途端に相手の対処に困るなんてことにならないように、彼は油断をしている心を何度も引き締めなおしていた。魔法はイメージで発動するが、そのイメージがすぐにできれば、魔法の発動も早く発動する。そして、魔法のイメージに慣れていれば、それだけ魔法を発動することができるというわけである。そして、彼はこの世界に来たばかりだが、前の記憶が残っている。つまりは、その時に使っていた魔法のイメージが頭に残っていて、それもすぐに発動できるくらいには何度もイメージしてきたものである。
彼に向って三匹が襲い掛かってくる。彼は少し後ろに下がりながら、左右から来る魔獣を盾と剣で防ぐ。左右の腕は既に二匹の対応をしており、残りの一匹は真正面から彼に嚙みつこうと大きく口を開けて、彼に首を嚙みちぎろうとしていた。だが、その犬の正面には土の壁が出現した。犬は口を開けたまま、土の壁に突っ込んで壁を破壊して、前に出てくる。相手はふらふらとしていて、既に彼の方へと口を向けられていない。ただの体当たりになっている状態だった。彼は盾で相手を受け止めて、剣で相手の口を真っ二つにするようにふるう。そして、真ん中の敵の体が彼に向ってきているのだが、彼は次の風の魔法を使用する。彼の正面に風の塊が出現する。その風の塊から相手の方へと、風の道が作られる。その道の中には見えない風の刃が飛ばされていた。魔獣はそれを回避することはできずに、風の体を押されながら体の表面に風の刃が走る。相手の体が大きく切れた切り傷が大量にできていた。そして、相手の体当たりの勢いはなくなり、相手の体が地面に落下していた。風に切り刻まれた相手の体はただただ地面に落ちて、それ以上動かなくなっていた。落下したせいで、魔獣の血が落下地点から少し広がっていた。彼はその死体を特に確認することもなく、もしかしたら、まだ動くかもしれないと思いながら、残りの二匹を相手にする。盾で受けた魔獣を盾を思い切り振って、距離をとる。剣で受けた方の相手をしようと、その方向を見ると、彼が牽制のために振るった剣が相手のに当たっていた。相手の口が閉じれないほどに深く県が入っていて、その見た目は中々にグロテスクだった。
盾で弾いた魔獣をいったん放置して、すぐにとどめを刺せそうな方へと視線を向けた。彼の周りには火の魔気が集まっていき、それが弾丸の形を作り出す。そのまま、火の弾丸は相手との距離を一瞬で詰めて、魔獣の開いたままの口の中に火の弾丸が突っ込んで聞く。それに続けて、次の弾丸が二つほどついていき、相手の体を焼きながら、体を貫いていた。そして、相手は動かなくなり、残り一匹となる。残りの一匹は既に体勢を立て直していて、彼に向ってきていた。既に一匹で勝てるはずもないが、魔獣が獲物を前に逃げることをする可能性はゼロに近いだろう。逃げるとすれば、相当知能が高く、強力な魔獣だろう。目の前に魔獣にそこまでの脅威を感じないため、おそらく魔獣は彼が見えなくなるか、彼を殺すかするまで攻撃を続けるだろう。だが、彼に殺される気もなければ、隠れたり逃げたりする気もない。彼は向かってくる魔獣の方へと剣を向けて、相手が飛び掛かってくるのを見ていた。彼の目はその程度の速度は遅いと感じるほどに、素早い戦闘を繰り返してきたのだ。彼は飛び掛かってくる魔獣に対して、剣を確実に通るように構える。そして、相手とすれ違うところで、相手の開いた口から剣を真横に入れて、相手の胴体を上下、真っ二つに切り裂いた。切られた相手は彼の後ろに飛んでいき、そのまま地面を転がっていく。
彼は周囲を見て、本当に他に敵がいないかを確認する。特に近くで動いている気配は特になく、今回の相手は三匹だけだと結論付けた。魔獣を討伐したのはいいが、特に消えるわけでもなく、魔獣の死体はそこに放置されている。いくら魔獣とはいえ、死体をそのままにしておくのはまずいだろう。肉が腐って、周りに悪い影響を与えないとも限らない。魔獣が他の生物と同じように埋めるだけでいいのかわからないが、地上に放置されているよりも地面の中にあった方がいいと判断して、彼は土の魔法を使って地面に穴をあけようとしたところ、彼は自分に近づいてきている誰かに気が付いた。