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狭間に落ちる 6

 相手が地面を見続いていた。ようやく、地面を見るのをやめて、他の場所に攻撃していたやつがいると思ったのか、倒木が飛んでいき、木々をなぎ倒した方に視線を向けていた。そして、そこでもじっとその場所を見ている。彼からは、相手の見ている先がどうなっているのかはわからない。だが、相手はそこに何かを見つけたのか、前傾姿勢だった体を、さらに前に倒して、角を視線を向けていた先に向けた。相手は後ろ足で地面を数度蹴ると、突進し始めた。その場所までは二、三歩で到達して角が地面に突き刺さる。その状態のまま、相手が頭を持ち上げると、地面がボコリと持ち上がる。地面にあった土は角に引っ掛かり、地面が掘り返される。相手が頭を持ち上げると共に角に引っ掛かっていた土が地面にポロポロと落ちていくのは彼の視界の中でも確認できた。そして、落下する土の中に、やけに爪の長いものがいるのが見えた。それは彼が戦った魔獣、ビガルパウズだと気が付くのに時間はかからない。巨大な角で攻撃された魔獣は落下中も動くことはなく、もがくこともせずに地面に近づいていく。彼の視界からはそれが地面に叩きつけられたところはみることはない。だが、その魔獣がどうなったかなんて想像する必要もない。


 そして、彼はそれを見てから、背筋に冷たいものが走るのを自覚していた。先ほど、視線を向けられたときに、自分自身が少しでも動いていれば、あの突進を受けていた可能性があるということである。彼が動かずとも、他の何かが動いていれば、それだけで死んでいたかもしれない。そう思えば、今の自分から死が急にとんでもなく近くに感じる。そのまま体が緊張してしまうことはなかった。死の恐怖がないわけではないが、死の恐怖のせいで動けなくなれば、本当に死んでしまうだろう。既に彼はそれくらいの修羅場を潜り抜けてきている。死の恐怖に慣れているというわけでは二だろうが、それに対しての対処くらいは体が覚えているくらいには命懸けの戦闘を行ってきているのだ。


 ただ、動かなくては相手に攻撃することもできないのは間違いない。相手の視界の中で動かなければ見つかることはないだろう。さらに多少、見つかったところですぐに攻撃されるわけでもないようだ。巨大があるが故に、獲物を瞬時に見つけることができないのだ。それがわかれば、力の強い相手だとしても、何とか勝てるかもしれない。勝機が見えてきたとしても、彼が強力な魔法を使える回数は増えないし、急に特別な武器を創造することもできない。


 彼は再び、相手に近づくために折れていない木の下を移動しながら、相手に近づいていく。相手はすでに地面を角で掘り起こした後で、相手の正面の地面はぐちゃぐちゃになっている。その場所で戦闘することはできないだろう。彼は相手の背中に向けて、スリングショットで鉄の球を飛ばした。そのまま、何発かそのあとを追うように飛ばしていく。相手の背中に当たり、相手は後ろにゆっくりと振り返る。魔獣は足元や、魔獣自身が作り出した森の中に広場に視線を向けていた。だが、魔獣は彼を見つけることはできない。そして、既に彼は球を放った場所から移動しているのだ。もし、相手の背丈がもう少し小さければ、彼が草をかき分けて森の中を移動している音が聞こえたかもしれない。だが、体の大きな相手の頭は森の木々よりも上にあるため、彼が移動している音は全く聞こえていないようだった。


 彼はまた相手に見つからない位置に移動してきて、スリングショットを使おうとした。だが、ただの鉄の球では相手をイラつかせるだけで、たいしてダメージを与えることもできないことはわかりきっていた。


 彼は手のひらの上にまた鉄の球を生成した。だた、その軽さは先ほどのものよりも相当軽いものだ。先ほどよりもスリングショットを手前に引いて、相手の方へと狙いを定める。それから手を離すと、それは鉄の球よりも素早く、相手の方へと飛んでいく。そして、相手に着弾すると同時に小規模な爆発を引き起こした。相手の体の一部に火がついていたが、前足でその部分を軽く叩くと火は簡単に消えた。だが、先ほどよりもダメージがあるように見えた。魔法の代わりというならば、上々の結果だ。彼は爆発弾の威力を確かめ、そこそこの結果が出ることが分かったため、さらに爆発弾を相手の方へと飛ばしていく。相手の大きな導帯であれば、適当に狙っても簡単に当たり、相手の体で爆発していた。一つだけでは火が付く程度だが、連続で何発も当たれば、ダメージは重なり蓄積される。


 彼が今まで爆発弾を使わなかったのは、思いつかなかっただけである。魔法に頼りきりだった彼は爆発弾を作る必要がなくなり、完全に忘れていたのだ。だが、ここからは爆発弾を使える。ここからは相手にダメージをもっと与えられるだろう。

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