狭間に落ちる 4
メートの前に作り出された。青白く発光する球体にはそれ以上、火の魔気が詰められないだろうというほどに、魔気が詰め込まれていた。大量の魔気が一転に集中して、まだ魔法が発動していないというのに、外に熱が漏れ出ている。そして、その火の魔気の塊から、一瞬誰もが目をそらすほどの光を出して、一筋の光を巨大な鹿の方へと向けて飛ばしていた。
相手の巨大な鹿は確かににそう歩行であるているが、本物の鹿と同じ視界を持っていた。そのため、後ろで発光した彼の魔法の光が視界に入ってしまった。巨大な鹿はその光を理解はしていないが、敵だと思い込んで、振り返ろうとした。その瞬間、魔獣の背中側から肩と肩甲骨の間の辺りを彼の放ったレーザーが貫いていた。相手の肉体を貫いたレーザーはそのまま天にまで届き、空に青白く輝く道を作り出していた。
村の人からもその光は見えて、それが何なのかと首をかしげている。警備隊の者たちもそれを見て、何かの前兆かと身構える。だが、まだ村の中にいたカオウだけは、その光がメートが何らかの魔法を使ったのだと直感した。そして、ジャスと話していた、彼を村から出さないという約束は守られなかったのだと悟る。ジャスの話を聞こうと村の森に近い出入り口の方へと向かったが、そこには誰もいなかった。普段はジャスだけではなく、森から魔獣が村の中に入らないようにするために警備隊の誰かがいるのだが、今日はそこにジャスがいたはずだった。その彼がいないとなれば、彼もメートを追って森の中に入ったのかもしれない。カオウは少し焦りながらも、その場所から離れるわけにはいかなくなった。誰も森と村の境界線の出入りできる場所を守らないとなれば、弱い魔獣でも村に入ることができてしまうだろう。一匹ならば、村のものも対処できるだろうが、何匹も入ってくれば、それだけで村は壊滅することになるかもしれない。村を守るにしても、村人を逃がすにしても、その場所には誰かがいなくてはいけないのだ。そして、その肝心の人物がいないとなれば、代わりをするものは森の中に入ることは許されない。カオウは焦る気持ちを抑えながら、その場所で待つしかなかった。
魔獣は彼のレーザーを受けて、完全に彼のいる方を向いていた。しかし、体を向けて、今光った場所を見ているだけで、彼自身を視認しているわけではないようで、すぐには攻撃してこなかった。そして、魔獣は足元をきょろきょろと見ていたが、森の木々のせいで、その下は見える範囲が狭い。魔獣は視界の効かない状態をどうにかするために、前足でそこにある木々を払うように、右腕で地面にあるものを払うかのように腕を動かした。バキバキと音がして、木々が折れていく。魔獣の腕に吹っ飛ばされて、折れた木々は宙を舞っていた。そして、薄暗かった森の中に夕焼けが差し込んでいた。たった一撃で森の一部を平らにしてしまったのだ。彼は魔法を発動してから、すぐに移動していたため、相手の腕の振るう範囲には入っておらず、相手のその動作の影響こそ受けなかったが、木々のへし折れる音、木々が吹っ飛んで地面に落ちる音と振動。それを感じると、生半可な行動は一つも取れないなと感じていた。そもそも、戦闘において油断をするような行動をとること自体が負けを引き寄せることではあるため、彼は最初からおふざけで戦うつもりなど少しも考えてはいなかったが。
彼のレーザーを売らわせたことで、相手の体には綺麗に穴が開いていた。すぐにふさがることはなく、そこから出血している。しかし、一気に血が噴き出ていくようなことはなく、ジワリと出ていく血が、茶色の体毛を赤く染めていっている。だが、その程度の攻撃で相手を倒せるとは思っておらず、彼は次の魔法の準備をする。今のレーザーの魔法を使ったことで、今まで使っていた強力な魔法よりもさらに魔気を消費して込めれば、さらに強い魔法が使えることはたった今学んだ。しかし、一発だけしか売っていないというのに、体にだるさが表れていた。その症状は、体内の魔気を消費しすぎた時の症状と同じであり、彼もそれを自覚していた。次も魔法を使わなければ、目の前の巨大な敵を打ち倒すことはできないとはわかっているものの、次の同じ魔法を使えば、その場で気絶するかもしれない。そうでなくとも、次に魔法を使うことはできないだろう。
戦闘方法も限られてきて、たった今放った魔法で相手を倒せれば、と願いを込めていたが、そう簡単にはいかなかったようだった。魔獣は攻撃されたことは理解しているが、攻撃した彼を見つけることができずに、辺りを探していた。




