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狭間に落ちる 3

 男性は珠をしまい、フードの口を彼の方へと向けた。


「ここでの用事も済んだ。俺は帰るとする。さて、後は貴様の処分だが、見られてしまってはここに残しておくわけにはいかないんだ。わかってくれ。相手をするのは俺ではないがな。まぁ、多少余りあるが、まぁ、ここらに生きるものが死ぬだけだ。己の弱さを呪え、ということだな。では、楽しんで」


 男はそれだけ言うと、森の中へと入っていく。それも村のある方向ではない。その先に何があるのかは、行ったことのない彼は全く見当もつかない。彼が、その男性を追おうとしたとき、狭間の壁のひびから音が鳴る。キピキピというような音と共に、ひびが外に広がっていく。ひびとひびが繋がり、壁は割れる。壁が割れたからと言って、その先の景色が変わっているかというと、割れていない壁の向こうと同じ、無の空間が広がっているだけだった。しかし、割れた先の無の空間には何もいないはずなのに、ひびのせいで崩れた壁の向こうにだけ見える茶色の体毛を持つ何かがそこにいた。小さいものではないだろう。すでに人が一人通れるくらいには崩れている。ひびは壁を縦に割くような勢いで、上に伸びていく。そして、ひびが一瞬、目をくらませるくらいに光った。とっさに目をつむったが、多少視界に光の残像が残っていた。


 その視界の中に、茶色の体毛の何かがいるのはまだ見えた。だが、位置関係がおかしい。ひびの奥ではなく、手前にそれが見えるのだ。ひびはいつの間にか、ひびをみつけたときくらいのものになっていて、崩れている場所はなくなっていた。ひびは小さくなっていき、茶色の何かの後ろに隠れてしまった。彼は茶色の何かの正体を知るために、顔を上げた。少し上げるくらいでは、相手が何かもわからない。さらに顔を上げて、真上を見るような角度でようやく、その茶色い体毛の顔が見えた。口と鼻は前に出ていて、巨大な角を付けている。その巨体に合うようなかなり大きく、外側に広がるように生えている角は彼の視界の大部分に影を落としていた。顔だけでみれば、鹿に見えるだろうか。ただ、ただの鹿とは言えないだろう。その巨大な鹿は前足を浮かせて、前傾姿勢ではあるが、後ろ足だけで立っているのだ。相手の頭のある位置は、彼を縦に四人並べても足らないくらいの高さのせいで、相手はまだ彼が足元にいることに気が付いておらず、そのまま、前に一歩足を踏み出した。たったそれだけで辺りが揺れて、何かが爆発したような轟音があたりに響く。森の中にいる彼には木々が折れて、踏みつけられる音まで聞こえてきていた。あまりの音に耳を塞いだが、そうしている場合ではない。この森はそこまで広くはない。あの巨体であれば、数十分でクリスたちが住んでいる村に到達するだろう。この巨体の化け物が村に到達すれば、村が壊滅することなど考える必要もないことだろう。村の戦力でこの化け物と戦える人はいないだろう。


 相手は二歩目を前にゆっくりと出す。既にメートが背後にいるせいで、視界には映らない。彼は自身が視界に入っていない、この時に一番ダメージを与えらえるだろうと考えていた。この不意打ちでどれだけ弱らせることができるか。それがこの魔獣討伐の決め手になるかもしれない。だが、大ダメージを与えられる攻撃は魔法くらいしかないだろう。今の彼が超能力で創造できる武器でのダメージなどたかが知れている。もっと現代的な武器を作れるのなら、致命傷を負わせるくらいはできたかもしれないが、今それを考えていても意味のないことだ。とにかく、彼は魔法を使うという選択肢しかとることしかできない。


 ただ、魔法を使うといっても、準備をしている段階で、相手に気づかれないとも限らない。相手は魔獣であり、魔気の動きを察知する力があるかもしれない。いや、それを気にしては魔法は使えないだろう。彼は、目の前の巨体に大ダメージを与えられる可能性のある魔法は一つしか思いついていなかった。魔法はイメージの力が大切であり、使用者がそれしかないとイメージした時点で、それ以外の手段は考える必要がないともいえる。すぐさま、彼はその魔法の準備に入る。


 使うのは火の魔気。彼の体から放出した火の魔気は彼の正面一点に集中していく。そして、いつものように赤い火の玉を形成して、そこにさらに火の魔気が集まっていく。巨大になっていく玉は、途中で縮んでいった。再び小さな玉になり、またそこに火の牧が集まっていく。それを数度繰り返して、輝きを増していき、色も白へと変化していく。そして、白く輝く玉にさらに火の魔気が送り込まれていく。白く輝く玉はさらに輝きながら、色を青へと変化させていた。

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