未知の魔獣 2
彼は相手の風に押されて、地面を転がり続けていた。その間に草木にぶつかり、浅い切り傷も増えていく。ようやく止まり、その場で目を開けて、いつの間にか体を守るために丸まっていた体も真っすぐにする。その少しの動作だけでも傷口がひりひりと痛んでいた。深い傷はないのだが、体の色々な場所が切れているせいで、大けが押しているような出血量になっていた。肌の傷の分だけ、彼の衣服も切れているというので、さらに怪我が大げさに見える。立ち上がれないということもなく、彼はその場に立ち上がる。森の中は見通しが良いため、いくら転がされても立ち上がれば、相手の位置を見ることはできた。彼はその位置で魔法を使用することにした。
彼のいる位置から相手まではそこそこ距離が開いてしまっていた。相手がいる場所は見えているが、その間には木々がある。遠距離の攻撃をするにしても、弓やクロスボウでは相手までの射線が通っていない。だからこそ、魔法である程度は障害物を無視できる攻撃にしようという策だ。
彼の体から火の魔気が出現する。それらが彼の正面に一つの球になりながら、集まっていく。ある程度、火の魔気がその場所に集まり、大きくなると小さくなって中の火の魔気が圧縮される。その圧縮の後にそこに火の魔気がさらに集まって、大きくなっていく。それを短い間に何度も繰り返されていた。そして、その工程が終わったところで、火の魔気が集まった球は白く淡く発光していた。そして、その白い球から一瞬で魔法が発射されていた。白いビームが相手の方へと伸びていく。
彼を風で吹き飛ばした後、相手が正面に集めていた風の魔気は消滅して、飛ばした彼の方へと魔獣も移動していた。しかし、その速度はゆったりとしたものだった。魔獣が纏っている風の層がぶつかった草木は綺麗に風の力によって霧とあられる。その魔獣が通った後にはきれいな綺麗にくりぬかれたように円が見える。魔獣が進む先にあるものは全て障害物とはならず、全てが風の層によって そして、魔獣が先に進んでいる間に、魔獣の正面から何かが到達しようとしていた。魔獣はそれに意識を向けず、そのまま真っすぐに前に進んでいく。避けようとも防ごうともしない魔獣に、メートが発射した火の魔法が魔獣に直撃した。しかし、風の層をすぐに貫通することもなく、風の層にぶつかったビームはそこで止まり、力をなくして、火の魔気に戻っていく。風の層とビームの境界線で、力が均衡しているのか、相手はそれ以上前には進まなかった。しかし、力が均衡していたはずだが、相手の風の層が徐々に削れて生きていた。風がビームを避けるよう層を作り、風の層での防御が意味をなさなくはそれでも焦ることもなく、抵抗することもなく、前なる。ビームは徐々に相手の本体の球体に近づいていく。魔獣に進もうとしていた。魔獣は人や知性のある生物のように高度に思考する種類は多くはない。怖いものがないために、戦う術のない人からすれば脅威だが、戦う支度をして相手の修正を熟知していれば負けることはないのが魔獣だ。だからこそ、今メートが相手をしている魔獣は彼のビームの魔法にも退かずに前に進んでいる。そして、風の層がなくなろうとも、前に進み続けている。
彼のビームの魔法が相手の風の層を徐々に貫通して、本体に届きそうになったところで、彼の使用している魔法が消失した。それは相手のせいではなく、彼が事前に魔法を使用するのに、魔法に込めた火の魔気がなくなったからだ。そして、ビームの魔法が壊していた風の層もすぐに元に戻っていく。遠くにいる彼にはビームが風の層を壊したところも見えていないため、彼の位置からではビームの魔法も大して効果がないようにしか見えないだろう。彼は相手に近づきながら、二つ目のビームの魔法のための火の魔気を集めた球体を生成していた。無意味であると分かったとしても、既に起点ができてしまっている魔法を解除することはできない。他の誰かが、魔気の集まりを乱すようなことをしなければ、既に準備ができている魔法は使用者が創造したとおりに過程を経て、結果を出す。彼が準備した魔法は既に発動して、二発目のビームが相手の向けて飛んでいく。先ほどと同じルートを通るため、今度は障害物を焼くこともなく、相手に向かっている。さらに、相手が進んで、彼も相手に近づいているために、相手と彼の距離も縮まっていた。ビームは相手の風の層に先ほどのように、着弾してその場所で止まる。最初こそ、風の層で止まり、それ以上進まなかったが、徐々に風の層も壊していった。




