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討伐隊の歓迎 3

 部屋をあてがわれたものの、部屋の中に置いておきたいものは特になかった。しかし、天気の影響を受けずに、眠れる場所を確保できたのは嬉しいことだった。ララルトは彼に部屋を案内した後は、そのまま部屋の外に出ていった。部屋には案内されたが、そこでやるべきことというのも特には思いつかなかった。適当に床に座っていると、ドアがノックされる音が聞こえた。ドアを開けて、外を見るとそこにいたのは、ガドだった。


「少しいいかな。少しの間だけどよろしくね、と伝えたくてさ。この家の中から、リラックスもできるから、君と戦いたいなんて言わないよ。むしろ、一緒に生活していくんだから、多少お互いを知れるといいと思ってるよ」


 ガドはララルトの前だからというわけではなく、本当に一緒に討伐に出たガドと同一人物かと疑うくらいには落ち着ている。テンションもかなり低く、話し方も落ち着いているのだ。その差を改めて、認識されられて、多少驚いていた。しかし、仲良くしたいと言っているのだから、その提案を払いのける必要はないと考えていた。


「ああ、多分、またすぐにこの村から離れることにはなると思うけど、よろしく」


 それから、二、三言話すとガドはドアの前からいなくなり、隣の部屋に戻っていった。


 この建物の構造を見る限りでは、おそらくシェアハウスのようなものなのかもしれいない。今はガドとララルトの二人だけが住んでいるが、昔はもっと人が入っていたのかもしれない。宿屋の可能性も考えたが、この村には旅人がほとんど来ないという話を考えれば、宿屋を経営するために建てられたという話はないだろう。彼は部屋の中ですることもないが、やりたいことも特に思いつかず、眠ることにした。安心して眠りにつくことが出来るのは久しぶりなので、ゆっくりとリラックスして眠れそうだ。




 翌日、彼は砂漠に出るところだった。アカリからもらった端末も持っていることを確認したし、水も十分確保できた。遭難するほど遠くに行くとは考えていないが、一応食料も万全を期するために用意した。今は全て袋の中に入っている。外から見れば、何の用いもせずに砂漠に出ようとしている馬鹿者にしか見えないだろう。だが、彼のことを引き留めるものは一人もいなかった。魔獣討伐に行く前に、討伐隊の建物により、アカリに討伐に出ることを伝えた際には引き留められはしたが、結局、今の彼は行かなければいけないことには変わりはない。アカリも強く引き留めなかったのはそのこともあるのかもしれない。彼自身は旅人で、この村が危機になったとしても、この村を掬う必要はないが、この村に住んでいる人にとっては周りに強力な魔獣がいるというのは切実な問題だろう。多少、魔獣討伐隊の治安維持に協力するような腹積もりで村の外に出た。


 前回と違い、今回はララルトもガドも一緒には来ていない。彼が家を出るときにはリビングなどのは姿はなかった。まだ部屋の中にいたのかもしれないが、彼は声をかけることもなく、家を出たのだ。そのため、たった一人で砂漠を移動することになる。そして、彼は今回、討伐するべき魔獣がどこに出てくるかなどの情報は一切持っていない。村に来る前に戦った巨大なミミズの化け物の行動を見る限り、地中から地表の音を聞いて、獲物を狩っているようなタイプだと想像していた。自分を囮にしてもいいが、ここまでの旅を思えば、人が歩くだけでは感知しないのだろう。死亡した魔獣は感知していたため、明確に音に反応するというわけではないのかもしれない。とにかく、魔獣の死骸があれば、あの魔獣をおびき出せる可能性が高いと考えた彼は、先に他の魔獣を探すことにした。その策を考えている間に、既に村からは離れてしまっていた。村はまだ見えるが、近くはない。またその距離を歩いて戻ると思えば、憂鬱になりそうなほど遠いと思えるほどには歩いてきたのだ。


 そこまで離れて砂漠を歩いていれば、魔獣も出現し始める。討伐隊はおそらくあの村の周辺しか魔獣の討伐をしていないだろう。そのおかげで、ここらにはまだ魔獣がいるようだった。そして、砂漠という遮蔽物が全くない環境では魔獣も彼に気が付くのが森の中よりも圧倒的に速かった。犬のような見た目の、この砂漠に入ってから何度も倒している魔獣だ。魔獣は最高速度で砂漠を踏んで、彼に近づいてきていて、彼もそれに気が付いていた。相手が彼自身に到達する前に、彼は手元で剣を作り出す。片手で振るえる程度の剣身だ。相手が飛び掛かってくると同時に、彼は剣を握り、開いた口めがけて、刃を当てて思い切り振りぬいた。魔獣の体は真横に分かれて上下別々になって砂漠に落ちた。

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