夢中
白木に一枚一枚服を脱がされながら、
女は窓の外にいる諒子を見て、
充血した目で笑った。
見れば見るほど自分とよく似た女だった。
しかし、明らかに諒子よりも肌が白かった。その白い肌が、
えも言われぬ嫉妬心を諒子の中で突如燃やさせた。
その女が服を脱がされても、
色が白いこと以外自分と違うところを見つけることは、諒子には終にできなかった。
首筋や鎖骨の形、乳首の色や乳房の形は自分と同じ。
ベッドの上で白木の愛撫に女が悶え、
腰をくねらせ尻を細かく震わせる。
諒子は次第に自分を見ているような妙な心持ちになってきた。
初めて見た白木の身体は夢で見ていた通りの六十五とは思えぬ逞しさがあった。
それだけではなく、
若い男にはない艶やかさがぼんやりと身体全体を薄い膜のように覆っている。
一つだけ諒子の知らなかったことが白木の身体にあった。
上半身に大きな白蛇が彫られていたのだった。
白木の身体を巻きつけるように彫られた蛇の顔は背中から諒子を見ている。
女をもっと犯して欲しいと哀願しながら二人を眺める諒子は、
さっきまで狂おしいばかりに彼女に溢れていた焦燥や嫉妬が跡形もなく消えているのに気付いていなかった。
もっと強く犯してください。
いつもいつも一つ一つするなんて、
じれったいの。
ーもう一から百までいっぺんにして!
諒子は窓の外から男の背中にすがった。
白木は女を夢の中で諒子にそうするように女を抱いていた。
青い熟れ始める前の果実の薄皮を丁寧に剥いていくように、白木は女を愛した。
透き通るように白かった女の肌には、
薄っすらと汗が浮き、
見る見る間に紅潮していった。
見ている諒子にも忽然と訪れた快感の波は、
少しずつ襲ってくるいつもの波とは違い、
その波は最初から大きくて、
一口に諒子を飲み込んだ。
諒子は立っていることはできずに、
土の上に倒れた。
命を奪うほどの熱に侵され、
ひんやりとした土に目を閉じた。
彼女を飲んだ波は、
やがて渦を巻き、
強い力で諒子を引き込んでいった。
光のない深い快楽の底で流れてゆく時の中で諒子は、
これは自分が霧散していく快感だと思った。
遠く擦れてゆく意識の中で、
ベッドの自分と白木が蛇に変わるのを見た。
つづく