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魔族転生〜史上最強の魔族になりまして〜  作者: たられば博識
魔王編
1/3

001 転生は30万体分の魔族の魂を生贄に

初めて小説を描きました。

暖かい目で見てやってください。


 俺は今、優雅に紅茶を嗜んでいる。

 自分の手でグチャグチャにした死体を前に、優雅と。

 しかしなんだ、この複雑な心境。

 長年憎悪を抱いていた()()()を、ようやく殺すことができたのに。

 まるで達成感がない。

 まだ憎しみが消えない。

 もっと残酷に殺すべきだったのだろうか。

 やりようならいくらでもあったはずだ。

 まぁもういい、俺はもう死ぬだけなのだ。


 飲み干して空になったコップをテーブルにそっと置き、殺人現場となる家を出た俺は、返り血を浴びた服を隠すことなく、ある場所へと向かった。

 田舎で時間も夜だったため、誰ともすれ違うことはなかった。

 だいたい10分程走っただろうか、俺は目的地である橋の前へと辿り着いた。

 これから俺は、この橋から飛び降りて死ぬ。

 橋を通ろうとした車が俺に気付き、車を停めてこっちに向かってきたが、血まみれの俺を見て腰を抜かし、悲鳴をあげながら帰って行った。

 最後の人との触れ合いがこれか……。

 余計な事を考えそうになった俺は、考える間もなく高さ100mはあろう橋を飛び降りた。

 

 ――その時だった。

 

《古来より伝わる淵羅籠の儀(えんらろうのぎ)を……30万体分の魔族の魂を生贄に行う召喚の儀を始める!

 初の試みだが、これが成功すれば世界を滅ぼす力を手に入れし魔族が誕生されるであろう。

 全魔族の民に告ぐ!魔力を我に集中させるのだ!》


 なんだこれ、俺は残り数秒で地面に直撃して死ぬというのに。

 なんで俺は最後にこんな中二病全開なセリフを脳内再生しちまったんだ。

 ――って、俺今何も考えてなかったよな?

 脳内再生とはまた違う……言葉では上手く説明できないが、脳に直接響いてくるような。

 しかもこんな禍々しい声、今まで聞いたこともない。

 なんだ、この違和感。


 ――ゴバタンッ!!!


 流石に100mからの落下は即死だった。

 ホント、即死ってレベルの即死具合。

 俺の最後は、なんとまぁ呆気なかった。

 死ぬ間際に聞こえた謎の声は分からず終い。

 にしても、死んだはずなのにこうして客観的に物事を考えられてるのはなんでだ?

 視界が真っ暗で五感の全てが失われたと分かるこの感覚が気持ち悪くて仕方なかった。

 即死したんだから、早く地獄に送ってくれよ。


《――いでよ、ネロォォオオ!!》


 いや、急になんだよ。

 てかまたお前の声かよ。

 しかもネロって誰だよ。

 はやく地獄に堕とせって言ってんだろうがよ。


 ――ピキィィイイインン!!


 それは突然のことだった。

 急に視界が眩い光に包まれ、けたたましい不協和音が聴覚を襲った。

 

 なんだ、五感が元に戻ってくるこの感覚。

 いや、視覚と聴覚は間違いなく戻ってるんだけど。

 眩しいしうるせぇし、頭がおかしくなりそうだ。

 時間が経つ毎に眩い光は更に光度を上げ、不協和音は更にボリュームをあげていった。

 

 その状態が5分程続いた辺りだろうか、途中で意識を失って目覚めたのか、知らない内に瞬間移動でもしたのか分からないが、気付いたら目の前にはこの世の者とは思えない高身長でガタイの良い漆黒の鎧を着た者が俺の顔を覗き込んでいた。


「うおおぉぉ!!ネロ様の誕生だぁぁああ!」


 辺りを見渡すと、同じくこの世の者とは思えない者たちが俺の周りで円を作り、拍手喝采を俺に向けていた。

 人間っぽい者もいるが、その内のほとんどはゲームに出てくるモンスターの中でもとびきり強そうな見た目をしていた。

 中には、おぞましい死神みたいな見た目の者やドラゴンっぽい見た目の者もいたが、俺はなぜか全く動じることはなく、怖いという感情が湧かなかった。

 イキリ陰キャみたいなことを言ってるが、マジだ。

 場所も禍々しい空間になっているのだが、怖いどころか実家のような安心感が体を包んだ。

 

 まったく、変な夢だ。


 ――ギシッ!


 最初に俺の視界に入った漆黒の鎧を着た者が俺の両腕を掴んできた。


 なんだ……この感触。


 本当に掴まれている感じだ。

 もしかして夢じゃないのか?

 いや、そんなまさか。

 だって俺はさっき死んだはずで、体も落下のせいでグチャグチャになってる訳だし……。


 ――って、え?


 俺は思考が完全に停止した。

 下を見ると自分の体とは程遠いシックスパックのナイスなボディになっていて、全裸だった。

 立派なものが生えていた。

 ……いやいや、じゃなくて!

 待て待て、ホントに意味が分からない。

 脳がこの事態を処理しきれない。

 試しに、いつもの要領で足の指先を動かそうとしてみた。

 すると視界に写ってるシックスパックの体の足の指先も動いた。


 マジ……かよ。

 完全にシンクロしてる。

 本当にこれ俺の体で間違いないじゃねぇか。

 そして、両腕を掴んだ目の前のそいつが口を開いた。


「我の声が聞こえるか……ネロよ」


 この声は……死ぬ間際に聞こえたのと同じ。

 てことは、こいつが言ってた――淵羅籠の儀によって俺は召喚されたのか?

 よし、確信に触れてみるとしよう。


「ネロ……それは俺の名なのか?」


 おぉ、ちゃんと声が出る。

 しかも低音系イケボじゃねぇか!

 ちょっとテンション上がるわぁ。


「おい貴様、魔皇帝ゼファー様に向かってなんだその口の利き方は」


 俺は得体の知れない奴に爪を喉に突きつけられた。

 

 なんだこいつ、どこから出てきた。

 声を掛けられるまで、気配がまるでなかった。

 てか、魔皇帝ゼファー様ってきっと俺の両腕を掴んでるこいつのことだよな……。

 もしかして俺、ヤバい奴にタメ口使っちゃった?

 焦ってきた、早く謝んないと。


「よいよい。ネロは次期に我を殺し、魔皇帝の肩書きを背負う継承者であるぞ。早とちりでも良いではないか」


 俺がこんな化け物を殺すだと?

 魔皇帝の継承者?

 何をトンチンカンなこと言ってんだ?

 てか、俺の質問に答えてないやんけ。


「本当にゼファー様は、このネロとやらに殺されると思っておられるのですか?」


 このどこから出てきたか分かんねぇ奴は、ずいぶんと俺のことが嫌いなんだな。

 だが、激しく同意だ。

 俺にこの化け物を殺せるわけがない。


「淵羅籠の儀で誕生した魔族は、全魔族の戦力に匹敵する力を持つと言われておる。ネロが力の使い方さえ覚えてしまえば敵うわけなかろうて」


「しかしゼファー様――」


「――もう辞めなよレイ。これ以上ゼファー様を困らせるなら僕が君を黙らせるニャ」


 二人の会話を割って入ってきたのは……二足歩行で身長が170cmぐらいの猫だった。

 俺は、危険な薬でも打たされたのかもしれない。

 もうダメだ、付いていけない。

 しかもこの猫、着物みたいな服装で魔族感は皆無なんだが、漂う殺気は魔族そのものだ。

 絶対に怒らせたら怖い系だ。


「おやおや、魔王ニャテン殿。やれるもんなら黙らせてみろy……」


 ――ボトンッ!!


 小馬鹿にしながら話してたレイの首が堕ちた。

 このニャテンとかいう猫、血のついた剣をいつの間にか出してる。

 ニャテンが今首を切ったのか?

 早すぎて何も見えなかった。

 移動すらしてないようにも見えた。


「ゲッ、マジで切りやがったこの猫助侍!ホントお前速さだけは魔界一だな」


 堕ちたレイの首は、首元の切断部分から生えてきた黒い手のようなモノによって、肉体部分と徐々に結合していった。

 こいつ、馬鹿にしながら首切られるってとんだ噛ませ犬枠じゃねぇか。


「次は本気で殺す。ゼファー様に物申すな、身の程を弁えるのはレイの方だニャ」


「ケッ、俺はただぽっと出のこいつがゼファー様に認められてんのが気に食わなかっただけだ」


 レイは俺を睨んだ。

 

 クソ、なんかしらんがこいつ、完全に俺を舐めてやがる。

 話を聞く限り俺は、魔皇帝というゼファーから強さを認められてるわけだし、こいつぐらいなら余裕で倒せる実力を持ってるんじゃないか?

 相手は猫に首を切られてたやつだし……うん、大丈夫だろう。

 一か八か、やってみるか。


「……強者の余裕!」


 ――ギラッ!!!


 俺が昔遊んでた某RPGゲームの代表的な特性をいかにも技名っぽく唱えてみた。

 

 すると――。


 周りにいた魔族たちの何体かがバタバタと倒れていった。

 流石に死んではいない、気絶したようだ。

 倒れていない者でも、恐怖の表情を浮かべていた。

 そして、本命であるレイはというと……。


 「う……うひゃえぃ」


 と謎の言葉を最後に、泡を吹きながら倒れた。

 情けないにもほどがあるだろこいつ!

 てか、何が起きたんだ?

 ただ"強者の余裕"と唱えてみただけだぞ?


「ふむ、あっぱれだ。ネロ……いや、ネロ様と言うべきかな

 にしても、これほどまでにネロ様が強いとは正直思わなかった」


 ゼファーが拍手をしながら近づいてきた。

 てか、いまさっき魔皇帝に様付けされた?

 どんだけ俺を過大評価したら気が済むんだこいつは。


「強者の余裕……はじめて聞いたスキルだ、間違いない。

 誕生して1時間も経たずに"専用スキル"を完成させるとは」

 

「……()()()()()?」


 ――!?


 俺の問いに、ゼファーの頭上にマークが出てるのが見えた。

 

「もしや……無意識的に専用スキルを完成させたわけではないだろうな?」


「いや、初耳だ。レイって奴にムカついたから冗談でも言ってやんないとって思って言ってみただけだ」


「なんと……つまり、ただ思いついた言葉を言ってみただけと、そういう解釈で捉えて良いのだな?」


 俺は首を縦にゆっくりと振った。

 それを見たゼファーは、呆然としたまま表情が固まった。

 てか、めっちゃ疑われてんな。

 もしかして、俺が仮に専用スキルを完成させたとして何か問題でもあるのか?


「……俺はこの世界のことを何も知らない。その専用スキルとやら詳しく説明してくれないか」


 固まった表情をハッと戻したゼファーは、専用スキルについて説明してくれた。

 ゼファーの話をまとめるとこんな感じだ。

 

 この世界のスキルは3つに分類されている。

 まず一つはスキルだ。

 魔法に似た超常現象の類いとしてこっちの世界では言われてるらしい。

 似た類いとして括られてるのは、魔法は魔法として区別されていて、スキル扱いではないらしい。

 そして二つ目がユニークスキル。

 これは簡単で、常に何かしらの能力が発動し続けるスキルのことらしい。

 ほとんどは先天性的に習得し、人によって個性が強く出るため人と被ることはほぼない。

 そして最後に専用スキルだ。

 スキルは現時点で3000種以上が発見されてるらしく、それは修行や特殊な条件を満たせばみなが習得できるんだと。

 だが専用スキルは別で、己で編み出した技というべきか、スキルの突然変異というべきか、ハッキリとした答えはまだ出てないらしい。

 突然変異が条件にあるが故に専用スキル自体はそこまで珍しい訳でもないのだが、そのほとんどは強力なもので、例えば炎属性の専用スキルに対して通常の水属性スキルでは相殺できないんだとか。

 己で編み出した専用スキルは特別強力で、特定の条件や血統、あらゆる条件が一致した時に習得できるらしい。

 ちなみに、他の者が同じ専用スキルを習得されたら通常のスキルに降格するとかなんとか。

 まぁ要は、難しい説明を省けば自分専用スキルってことだ。

 そしておまけに、"捧解"と唱えれば自分のステータスを確認できることまで教えてくれた。

 強者の余裕というスキルの内容が気になるし、確認してみるか……。


「――捧解!」


 すると、目の前にディスプレイみたいな画面が表示され、そこには俺のステータスが映っていた。

 

 ―――――――――――――――――――――――――


 名前:ネロ

 系統:魔人

 属性:魔族

 魔族階級:???

 魔族役職:無職


 HP=???

 MP=???

 物理攻撃力=???

 攻撃魔力=???

 物理防御力=???

 魔法防御力=???


 《ユニークスキル》

 ???

  ???

 

 《専用スキル》

 ・強者の余裕

  自分の能力値を具現化したオーラを他人に目視させる。

  オーラを目視した者に、オーラの量を基準値とした精神的ダメージを与える。

 

 《スキル》

 ???

  ???

 

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