表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/92

クライマックス

 レッドの世界での戦隊ヒーロー「標準戦隊阿部零次」もいよいよクライマックスへと突入。それ即ち悪役である私達『闇の宮廷道化師』幹部が殺られる時。……なので私達幹部の死亡、退場劇が遂に幕を上げた。

 知っての通り私達の死ぬ順番はグレーちゃん、キリンちゃん、寺田さん、私、レッド、小豆ちゃん、そして最後に魔王のブルーとなっていた。


 って事でまず最初はグレーちゃん。

 

 あくまで標準でしかない阿部零次達は基本強くはない。私や小豆ちゃんでも1対1の戦いなら相手がレッドでもブラックでも負けはしない。なので当たり前だけどグレーちゃんが本気で戦えば阿部零次達は5人がかりでも勝てないのは自明の理。だからって――グレーちゃんの敗因ってか死因がショック死って……。最高幹部が一切まともに戦闘しないでそのまま絶命って……。しかもそのショックの原因が食パンマンにもらって食べたアンパンマンの顔が1週間も前に賞味期限が切れてたからっていう――確かにある意味ショッキングな理由で死亡、退場となった。


 んで次はキリンちゃん。


 キリンちゃんはトラックの前に飛び出した子供を庇って死にたいみたいな事を言ってたけど、最終的にはトラックの前に飛び出した子供を庇って食中毒で死ぬという……そこだけ聞くとよくわからない死に方をした。寧ろ食中毒で死んだのはグレーちゃんじゃないの? と言いたくもなるところだけどそれは置いておくとして。んで実際にキリンちゃんがどうやって死んだのか細かく事情を聞くと――。ミシュランの星なしレストランで去年の新玉ねぎを食べたせいで食中毒になったらしい。もう星がないならわざわざミシュランの名前出す必要ないし、去年の時点で「新」玉ねぎじゃないし、子供庇わなくても結局死んでたって話だし……とツッコミどころしかない退場の仕方だった。


 とまあ最高幹部達がこんな退場の仕方でいいのかと思いつつも次は寺田さん。


 ――不審死。


 そりゃ不審者が死んだら不審死としか言いようがないよね。まあ実際、寺田さんがどうやって死んだのか、いつ死んだのかは誰も知らないし、小豆ちゃんがちょっと調べたら寺田さんの遺体からは出血とかの外傷じゃなくてマイナスイオンの癒し効果しか出ていなかったっていう話だから不審死以外のなにものでもないのは間違いないと思う。


 そしていよいよ私。


 知っての通り私は飛び降り切腹という斬新な切腹方法で死ぬ予定になっていた。なので敵ヒーロー達が私達の基地に攻めて来ていたはずなのに、私の戦闘が始まった途端に何故か場面はクソ高い崖の上に移ったという謎演出。しかもお気付きのように私達幹部と敵ヒーローがまともに戦うのはこれが初めてだった。

 ――と、それはさておき。1対1じゃ負けないとは言ったけど、私の実力だと阿部零次5人相手ではさすがに無理。なので当初の手筈通り私は崖に追い詰められて――予定通りの落下。んであとは落ちながら切腹すればいいだけのはずだったんだけど、直前で(ウチの方の)レッドが「辞世の句を詠め」という無茶な注文を付けてきたので、私は仕方なく崖から落下しながら急いで辞世の句を詠んでそれから切腹して散った。


 んで次はそのレッド。


 レッドとブルーだけは最初から普通に戦って普通に負ける……って設定だったからレッドは私に続いてヒーロー達と割とまともに戦っていた。ただ私と違ってレッドは戦闘だけならラスボスであるブルーよりも強いという設定だったので5対1でもヒーロー達を圧倒。

 なのでこのどうしようもない戦力差を引っくり返すための演出として、ウチのレッドは相手レッドの病気の母親を人質にしたり、相手レッドの病気の父親を人質にしたり、更には相手レッドの病気の妹を人質にしたり、おまけに相手レッド自体が病気だったりする事によってようやくハンデを負わせて弱体化する事に成功した。

 ……と羅列したところで少しわかり難いかもしれないのでこれがどういう事だったのか軽く説明をすると「人質は無傷の方が価値が高い」という理由からウチのレッドは体を張って人質3人に一切傷が付かないように守りながら戦い続けたのでそれがハンデとなった。しかも戦いながらりんごの皮を剥いて差し入れをしたり、花瓶の水や花を取り替えたり、新しい着替えを用意したりベッドメイキングと――最後まで人質を解放しないで病室で戦い続けるという、悪役に徹し切ったせいで最終的にはその苦労が祟り病院で過労死という……褒めていいのかよくわからない死に方をした。しかも過労死なのに何故か辞世の句だけは確り詠んでから死ぬっていう意味のわからなさ……ってゆーかそれがやりたかったから私にも辞世の句を強要したのかもしれない。

 あ、因みにハンデになったのかは疑問だけど、相手レッドの病気は「サザエさん症候群」だったので、日曜朝にしか戦わないあんたが日曜夕方には憂鬱になるって平日どんな生活してんだよっ! とは言いたくなった。こっちは月曜日から普通に会社でOLしてんだぞ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ