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弱体化

「そうか。ではここからは『虎の尾を踏むカッパ』以降の怪人達を弱体化させていこう」

『おー!』

 レッドの声にみなが呼応した。


「じゃあまず私から意見いいですか?」

 と片手を上げたのはグレーちゃん。

「最初の『虎の尾を踏むカッパ』ですけど、これって虎という猛獣の尻尾を踏むから極めて危険な行為なワケですよね? なら虎の部分をカワイイ物にすれば自然とマイルドになって弱体化されるんじゃないですかね? 例えば『パンケーキを踏むカッパ』とか?」

 いやパンケーキってカワイイっちゃカワイイけど、どっちかっていったら美味しいじゃない?

 としていると右手を上げたブルー。

「宜しいか? パンケーキは食べ物故に、それならば『パンケーキを喰うカッパ』の方が宜しいのでは?」

 ブルーにしちゃあマトモな意見だけど、実はそれもう原型である『虎の尾を踏む』がどこにもないんだよね……。

「いや待てブルー。やはりカッパといえばパンケーキよりキュウリだろう? となれば『パンケーキを喰うキュウリ』が良いのではないか?」

 お前はいちいち出てこなくていいよレッド。


 しかし何故か怪人『虎の尾を踏むカッパ』は『キュウリを添えたパンケーキ』に弱体化された。まあカッパの怪人が多かったから丁度良かったのかもしれない。……と無理やり自分を納得させてみた。


 続いて『逆鱗に触れるカッパ』の番になる。


 ――んでレッド。

「次は『逆鱗に触れるカッパ』か……。こいつは『逆鱗』ではなく『法』に触れるカッパとかはどうだろうか?」

 急にただの犯罪者ならぬ犯罪ガッパになったな。怪人として弱くなってるのか微妙なラインだし。

 ……と思ったのは私だけじゃなかったらしく。

「レッド殿。仮に法に容易く抵触する怪人となれば、怪人としてレベルが低いとは言い難いのでは?」

「ムッ? そうか……」

 え? 何どうしたの? 今回ブルーがまあまあマトモな意見多いんですけど?

「となれば――『法に触れる』部分を軽犯罪に該当する違法行為に限定するのが宜しいのでは? 例えば『違法ダウンロードをするカッパ』とか」

 うん。ちょっとらしくなってきたじゃないブルー。……というところで小豆ちゃんが手を上げる。

「なるほど。ならば私からも良いか? 『脱法ハーブを所持しているカッパ』とかはどうだろうか?」

 すると透かさずレッド。

「ほう? つまりキュウリは脱法ハーブという事だな?」

 そんなワケないでしょ!

「となるとカッパ巻きも『脱法カッパ巻き』が正式名称になるな?」

 何を基準に正式なの? キュウリに合法も非合法もないでしょう!

 しかし何故か『逆鱗に触れるカッパ』は合法的に『脱法かんぴょう巻き』に決まってしまった。


 なので――次は怪人『前門の虎。後門の狼』の弱体化に取り掛かる事になった。


 で。やっぱり初っ端はレッド。

「うむ。次は『前門の虎。後門の狼』か。こいつはストレートに虎、もしくは狼のレベルを下げるのが正解だと思う。なので怪人『友達以上恋人未満』はどうだろうか?」

 確かにレベルは下がってるんだろうけど1発で前門の虎と後門の狼が消えちゃったんですけど?

 ……と考えたのは私だけじゃなかったらしく。

「レッド殿。それでは『前門の虎。後門の狼』が原型を留めていないので『カッパ以上エビ未満』というのは如何か?」

 それも原型留めてないでしょブルーッ! やっと本調子に戻ってきたわねっ!

「……『脱法ハーブ以上エビ未満』。寿司の話か?」

 いやいや小豆ちゃん。そんな神妙な面持ちをしても脱法ハーブはお寿司じゃありません。

「いや、それは違うな博士。寿司は一般的に『板前以上恋人未満』と言われているからな」

 な、なんかレッドにそれっぽいフォローをされた気がしてちょっとムカつく……ので。私はコメカミにすこーし青筋立てて。

「ならもう『前門のエビ。後門の板前』でいいじゃん」

『良し、それだっ!』

 レッド、ブルー、グレーちゃん、小豆ちゃん、キリンちゃん、寺田さんが一斉に私を指差した。

「へっ?」

 私としてはヤケクソで思慮の欠片もなしに言い放っただけなのに、怪人『前門の虎。後門の狼』は『前門のエビ。後門の板前』という寿司怪人に生まれ変わった。


 そして最後は『猪八戒ちょはっかい』。


「こいつが1番難しいな……」

 とアゴに手を当て首を捻るレッドだけど――

 そりゃそうでしょ。カッパの怪人なのに猪八戒って……せめて豚の怪人なら救いはあったのに。

 ――と。

「参考になるかわからんが……」

 突如として切り出したのは小豆ちゃんだった。

「確か中国では『猪』とは基本的にブタを指す字、言葉だったはずだ。家猪がブタで野猪がイノシシといった感じでな」

 へ〜そうなんだ。やっぱり小豆ちゃんは博識だなー。でもこれに関しては参考になったかどうかは甚だ疑問ね。主にレッドだけど。

 という私の勘は若干当たっていたのかレッドは黙ったままで口を開いたのはブルー。

「ふむ。となるとこれまでのパターン通りカッパ、或いはブタをカワイイ物などに変えて弱体化するべきとして、ブタの場合は漢字を変えてみるという発想ですかな?」

 というブルーの意見にグレーちゃんが追従する。

「そうなるとブタを表す『猪』をかわいくするって事ですよね? 例えば『㌧八戒』とか?」

 !?

「ほぅ? しかしトンだとそのままブタなので『㈱八戒』とかは如何か?」

 株式会社になった!

「うむ。ならばいっそ『戒』の字も変えて『㍻八㌘』とかはどうだ?」

 やっぱ口を挟んできたなレッド! いやもうカワイイって何? 平成八グラムってカワイイの?


 っという私の疑問も虚しく、結局のところ弱体化には成功しているので怪人『猪八戒』は『㍾八㌍』というウナギの怪人に生まれ変わった。

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