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上位怪人

 秘密基地も完成し、異世界嘘侵略もようやく腰を据えてやれる……と思った矢先の出来事でした。


 そうはいっても基地を使うのは基本嘘侵略をする日曜日だけで……というより。日曜以外にレッドの世界に行く理由が特にない私達は、結局土曜のミーティングはいつものファミレスでやる事となり――今現在もそのミーティングの最中である。


「マズイ事になった……」


 眉間にしわを寄せ、片手で口元を覆っているのはレッドだった。

「ワイングラスで牛乳をテイスティングしているところを隣人のおばちゃん見られた……消すか?」

 やめろ。

「地球ごと」

 もっとやめろ。

「……というのは冗談だが。マズイ事が起きたのは事実だ」

「わかったわかった。で? 実際何がどうマズイのよ? どーせ大した事じゃないんでしょ?」

 と高を括っていた私はわざとらしく「ズズズズズッ」と音を立ててホットコーヒーを啜っていると、珍しくレッドが真剣な眼差しのまま。

「大した事ではないと言えば大した事ではない……今はな。だがこの先の事を考えると大問題だ。早急に解決するべき案件ではある」

 ハイハイハイハイ。そーやって真面目な話と思わせといて、レッドに続いてブルーががわのないVチューバー……つまりVチューバー(偽)でデビューするとか言い出すんでしょ?

「みなもブルーがVチューバー(汁)としてデビューしたのは既に知っていると思うが……」

 し、汁! Vチューバー(汁)って何? みそ汁の新商品?

「……それを祝う暇もない一大事だ。実はルーキー達が標準戦隊というだけあって標準より強くなる事はないという事実が発覚した。つまり――これまではノービスから標準まで強くはなっていたが、標準に達した現状では(レベル)さが打ち止めとなってしまった。これがどういう意味かわかるな?」

「はっ?」

 思わず変なところから声が出た。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ。それってマズくない? 彼等ようやく怪人『ふんどし水』とかとまともに戦えるレベルになったばっかりなのにもう打ち止めなの? じゃあこっちとしてはもう怪人のレベル上げられないって事?」

「そういう事だ。なので次の段階として用意した『点滴中に点滴の中身をデスソースに変える怪人』のような『平気で人を殺すレベルの怪人』は全て弱体化させなくてはならなくなった。それに――問題はそれだけじゃない」

 まだ何かあんの?

「俺達幹部も予定より早く殺られなければならなくなった。本来ならばもっと後半で殺られるべきだが、そもそも戦隊ヒーローの悪役として幹部7人は多い上、奴等がこれ以上強くならないとなると、そろそろ俺達が出て行かねば話が間延びするだけ、そして俺達が勝ち続ける訳にもいかないから――」

「そっか……殺られるしかないのか」

「そういう事だ。直近としては怪人の弱体化からだな、俺達が殺られるのは予定より早まったとはいえ多少はゆとりがあるからな」

 この言葉に私達は無言で首を縦に振った。


「では早速だが先程名の上がった怪人『点滴の中身をデスソースに変える怪人』こいつをどう弱体化させる?」

 レッドの質問に。

「デスソースを麺つゆにするのはどうですか?」

 グレーちゃんだった。

「ん? 『点滴中に点滴の中身を麺つゆに変える怪人』か……だいぶマイルドになったな? 採用!」

 はっや。

「博士。その変更は可能なのか?」

 レッドが小豆ちゃんに首を向ければ。

「可能だ。その程度の変更なら5分で出来る」

 5分で出来るのっ! いくらなんでも小豆ちゃん天才過ぎないっ?

「ついでのかたちになるが博士。既に決まっていた殺人クラスの怪人を全て言ってくれ、今から全員マイルドに変更する」

「了解だ。少し待て」

 言って小豆ちゃんはスマホを取り出すと素早く操作を始める。

「あった。言うぞ? まずは『虎の尾を踏むカッパ』だな」

 え? そんな奴いたっけ? 私知らないんだけど?

 しかし私の内心なぞ無視してレッド達は続ける。

「ああ、虎の尾を踏むという極めて危険な行為を平然とやってのけるカッパの怪人だったな? 他は?」

「うむ。次は『逆鱗に触れるカッパ』だな」

 またカッパ?

「ああ『逆鱗に触れる』という龍の怒りに触れる行為を全く恐れないカッパの怪人だったな? 他には?」

「ふむ。あとは『前門の虎。後門の狼』という怪人だな」

 あ、その子は覚えてるな。前門の虎、後門の狼って言葉をそのままコンセプトにした怪人で前門の虎を防いでいると裏から狼に襲われるっていう防ぎようのない奇襲を得意として仕掛ける怪人だったよね。

「ああ、奇襲を得意とする全身緑色で頭に皿があって手足に水かきがある怪人だったな?」

 カッパじゃん!? まごうことなきカッパじゃん!! 私この部分知らなかったんだけどっ!?

 でもやっぱり私の心情などシカトされて。

「あとは?」

「う~む。あとは『猪八戒ちょはっかい』だな」

「ああ、カッパの怪人か」

 カッパなのっ!? ブタじゃなくて? なんか私の知らない怪人多くない? ってゆーかカッパの怪人多くない?


 というところで小豆ちゃん。

「うむ。そうだな……現状設定まで決まっていた殺人級の怪人は以上だな」

「そうか。ではここからは『虎の尾を踏むカッパ』以降の怪人達を弱体化させていこう」

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