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ハンクス寺田

「……という訳でこの間話した最後の1人。コードネーム『感謝サンクス』の人材がようやく見付かった」

 とミーティングののっけにこう切り出したのはいつものようにレッドだった。


 うん。確かに居る。私達のこのいつもの席に見た事ない男の人が……。普通に輪の中に馴染んでて、自然にコーヒーを口に運んでいるけど――。わざわざ探してきたんだ。正直設定上だけの架空の人物で、6人のままでやっていくモンだと私は勝手に思い込んでいた。


 ――なので実際に人が現れて、私が多少戸惑っている中レッドはその人の肩に手を乗せ。

「こいつはイギリス人とドイツ人のハーフで『ハンクス寺田』という」

 イギリス人とドイツ人のハーフ……ねぇ?

「昼は歌舞伎町でホストをしていて、夜は歌舞伎町で坊さんをしているというトンでもない逸材だ」

 歌舞伎町でお坊さんしてるの? それは逸材かもしれないけど……でも、それより逆じゃない? 夜にホストやって昼にお坊さんやった方が良くない? 昼間にホストクラブとかって営業してるもんなの?

「因みにホストとしては歌舞伎町で6883番人気だが、坊さんとしては歌舞伎町ナンバー3だ」

 ええっ!! じゃあ少なくても他に2人は歌舞伎町でお坊さんやってる人がいるって事?

「将来の夢は秋葉原に『メイドカフェ』ではなく『ボウズカフェ』を開く事だそうだ」

 悪くない夢だとは思うけど秋葉原では需要なさそうなんですがボウズカフェ……?


 ――と。


「おいしくな~れ! ポクポクち~ん……とかやるのだろうか?」

 あ、小豆ちゃん。それ真顔でする質問……?

生還おかえりなさいませ仏サマ~とか……?」

 グ、グレーちゃん?

「じゃあお店から出る時は、あの世に行ってらっしゃいませ仏サマ~かな?」

「いや、成仏せいよ……かもしれん」

 キ、キリンちゃんに小豆ちゃ……え? もしかしてみんな興味あるのボウズカフェ?


 と、ここで再びレッド。

「あ~それと寺田のホストとしての源氏名は『百蓮びゃくれん』で、坊さんとしての法名は『セイヤ』だ」

 だから逆じゃないっ? いや、なくはないんだけど逆の方がしっくりこない?

「よし。では寺田。みなに軽く自己紹介をしろ」

 とレッドが寺田さんの背中を押すも。

「……」

 ……。

 ……。

 …………?

 一瞬の沈黙の後に再びレッド。

「……というように。寺田は無口で俺もしゃべっているところは見た事がない」

「ええっ! いや、しゃべってるところ見た事ないって無口ってレベルじゃなくない? てかホストとして致命的だしお坊さんとしてもお経読めなくない?」

 さすがに声を出してツッコミを入れるも、やっぱり寺田さんからの返事はなくてレッド。

「まあピンクの言っている事もわかる。だが読経などをどうするのかまでは俺も知らないが、どうしても会話が必要となった場合は寺田から念話が飛んでくるから安心しろ」

「ね、念話ってテレパシーって事だよね? もうその能力だけでも絶対他の職業に就いた方が良かったんじゃない?」

 と言い終えると同時。私としてはレッドに言ってたつもりだけど、急に寺田さんが真っ直ぐな瞳で私を見詰めてくると頭の中に声が流れて――


『……』


 ――こなかった。

「いや喋らないなら無意味にテレパシー飛ばさなくていいですから!」

 私の声に寺田さんが双肩をビクッとさせていた。


 レッドはここで両手を打ち鳴らし、私達の視線を集めると同時に空気をリセットすると親指で寺田さんを指差し。

「よし! ここまでで寺田が俺達『闇の宮廷道化師』の最高幹部の1人に相応しい人材。その片鱗がお前達にもある程度は見えたと思う……」

 うん。見えた……但しそれと同時に変態の片鱗も見えた。

「それで――だ。寺田の軽い紹介を終えたところで、お前達の方から何か寺田に訊きたい事はあるか?」

 この言葉に私達は1度顔を見合わせ――。片手を上げながら口を開いたのは小豆ちゃんだった。

「1つ訊きたい。本当は必殺技を訊ねたいところだが、我々と違い一般人なのでないと踏んで代わりに趣味や念話以外の特技があるのなら訊きたい。何かの参考になるかもしれんからな?」

 あ〜自己紹介って言ったら趣味・特技は鉄板だよね。小豆ちゃんは怪人造りの参考にって感じなんだろうけど仲間として普通に知っておきたい部分ではある。……それで?

「いいだろう。わかっていると思うが寺田はああだからな……代わりに俺が答えよう」

 と両腕を組むレッド。

「まず趣味。これはありきたりだが映画鑑賞。……をする人をワインを飲みながら鑑賞する事だ」

 何その金持ちにしか出来ないみたいな感じの趣味。

「そして特技は念動力だ」

「む? 念動力とは念じるだけで物体を動かせるあの超能力の?」

 小豆ちゃんの疑問にレッドが1度頷き。

「そうだ。テレキネシスやサイコキネシスなんて呼ばれ方もするアレだな。ただ寺田の場合は念話と違い念動力には相当なパワーが必要らしく、1度能力を発動させてしまうと3日はお掃除ロボットのルンバが動かなくなってしまうらしい」

 どーゆー繋がりがあんのっ? てゆーかサイコキネシスあったらルンバいらない説まであるんですけどっ!

「ほぅ? 超能力者か……非常に興味深い。気に入った、私は寺田を歓迎する。皆はどうだ?」

 と私達に促す小豆ちゃんだけど――。


 別にまあ、反対する理由はないんだよね。ちょっと変わってる奴がいるなんて私からすれば今に始まった話じゃないし。

 ……と。思っていたのは私だけじゃなかったらしく。結局寺田さんはみんなに歓迎される形で闇の宮廷道化師入りを果たした。

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