実家
スク水きる男とスク水ぬぐ男。どうもラスボスのメンズ・ブルマはこの双子の兄の方であるスク水きる男に乗り移ってるって話っポイ?
……と予測を立ててスク水弟であるぬぐ男さんの話の続きに耳を傾けると――
「実はお前達の話を聞いて兄がラスボスではないか……という事に心当たりがある」
「本当かっ! どんなだっ?」
「うむ。兄はもともと心優しい変態だったのだが、ある日を境に急に人が変わってしまい今では邪悪の化身……心優しいパリピになってしまったのだ」
パ、パリピ? 心優しいじゃなくて変態が変わったの?
――と。いうところでレッドに代わり果麺ライダーさん。
「なるほど、それは間違いないな。実はオレ達が追っているラスボスの正体は人間に乗り移る事が出来る宇宙人でな。お前の兄貴が豹変して変態を辞めちまったのもそいつが乗り移ったのが原因だな」
いや格好からして変態は辞めてないのよ。んで悪の怪人を生み出し続けてるからどう考えても変わったのは心優しい方なのよ。
という私の心の叫びはいつものように踏み躙られてスク水弟。
「ではお前達に任せれば兄に乗り移った宇宙人を追い出し、兄を元の心優しい爽やかな変態に戻してくれるというのだな?」
心優しい爽や……なんか増えてる!
「あぁ任せろ。オレ達がお前の兄貴を心優しい爽やかな変態紳士の大名行列に戻してみせるさ」
どぉいう状況ぅ? それ大名が変態紳士なの? それとも行列作ってる人達が変態紳士なの? どっちなのか気になって夜しか眠れなくなりそう!?
ここでぬぐ男さんは両腕を組み。
「そうとなればお前達に兄の居場所を教えるのは吝かではない。だがその前にどうしても気になる事があるのでそれを解決しておきたい」
「気になる事? なんだそれは?」
レッドの言葉にぬぐ男さんが一つ頷き。
「ああ、それはお前達が本当にスーパー戦隊ヒーローなのか? だ。特にそこのエルフ……」
と言ってグレーちゃんを指差すぬぐ男さん。
「そこのエルフはどう見ても雑魚戦闘員のソレにしか見えん。故にお前達がスーパー戦隊ヒーローだとにわかには信じられんのだが?」
まあ、実際グレーちゃんは大幹部だけど『戦闘員A』だったからソレにしか見えないんじゃなくてソレだったんだよね……。いやそれより。
「あの……よくグレーちゃんがエルフってわかりましたね?」
モチロンだけどグレーちゃんは相変わらずあのファッションのまま。なので見た目じゃエルフって絶対にわからないハズなんだけど――?
という私の疑問にスク水弟が答える。
「まあ私もハーフエルフだからな……空気でわかる」
スク水を着る男の分際でハーフエルフっ!! あ、いやこの人はスク水を脱ぐ男だった……。
「因みに私の場合、上半身が人間で下半身がエルフのハーフエルフだ」
そんなハーフありえんのっ!?
「そうなのか……俺はてっきりカロリーハーフのエルフかと思ったのだが?」
それ栄養失調エルフって事レッド?
「あ、ピンクさん。因みに私は上半身がエルフで下半身もエルフのフルエルフです」
「いや知ってるしグレーちゃん。てかフルエルフって言葉初めて聞いた……」
「因みにオレは上半身がサイコパスで下半身がセレブのハーフエルフだ」
「それエルフの要素があるのかわからないんですけどライダーさんっ!」
――と。
だいぶ脱線してしまったけど話を本筋に戻したのは私じゃなくてぬぐ男さん。
「いやそんな事よりどうなのだ? お前達が戦隊ヒーローなのかどうなのか? 重要なのはそこで、それがハッキリしなくては兄の居場所は教えられんぞ?」
「確かにその通りだな。グレーの姿を見たら疑うのも仕方がない……よし。では今から俺達がスーパー戦隊ヒーローだという証明をしよう」
というレッドの言葉に――
私達は先週の戦いの動画をスマホでぬぐ男さんに見せ信用を勝ち取り、ついでにパンストセイントちゃんや果麺ライダーさんの動画も見せて私達がどういう集まりなのかもついでに説明をした。そして――
「うむ。お前達が正義のヒーローの集まりだという事は理解した。良いだろう……次の日曜にお前達を兄の居場所である私の実家に案内しよう」
『実家っ!?』
さすがに私以外のみんなも声を上げていた。そんな中でレッドは俯き加減で。
「そうか……ラスボスが実家暮らしとは盲点だったな。どうりでなかなか見付からない訳だ」
珍しくそこにはレッドに同意……かな? そしてそれはぬぐ男さんもだったかぬぐ男さんは2、3度小さく頷き。
「確かにな。最近の兄は外へ出かける事が少なくなっていて尚更見付け難くなっていたかもしれん。しかしそれはそれとしてお前達はどうなのだ? 今の兄は家に居る時、常にブルマ十神将と呼ばれている四天王に護られているが大丈夫か?」
四天王なのに十神将って相変わらず人数がよくわからない……。でもあれか、徳川十六神将も徳川四天王に徳川十二神将を足して徳川十六神将だったからブルマ十神将も10人の中に四天王って呼ばれてる4人がいるのかな? ……という事で納得しとこう。
――で。これに返事をしたのは当然レッド。
「フッ、たとえ四天王が10人居ようがこちらも10人。何も問題ないだろう」
そうそう。向こうが10人でもこっちも10人………………ってぬぐ男さんが人数に入ってるっ!?
な、なんだろうこの……ラスボスの弟が味方になるのに全然熱くない展開は……。




