全員集合
振り返ったその先。つまり私がいつもレッドとブルーの話を盗み聴きしている――その席に座っていたのは思った通りパンストセイントちゃん達だった。
い、居るの全然気付かなかった。なるほど。私はいつもこんな感じで存在を消しているのか……。
と私が考えているとパンストセイントちゃん達がこちらの席へと移動してくる。なのでみんなで席をギュウギュウに詰めて――
大所帯になったな……当たり前だけど席が狭い。
私が両肩を窄めてそんな事を考えている内に、レッドとパンストセイントのリーダー獅子座のアイリアちゃんが話の続きを始める。
「すみませんレッドさん。説明の続きをする前に、まずは私達の話を聞いて頂けますか?」
するとレッドは腕を組んで一つ頷き。
「順序は問わない。わかり易いようにそちらの自由にやってくれ」
「ありがとうございます」
とアイリアちゃんが目礼。
「ではまず私達が普段パンストセイントとして戦っている敵ですが。私達のファンの間ではドMと呼ばれています」
まあ……パンストセイントちゃん達にしばかれたいってヤツは多そうだけど、もうちょっとなんとかならなかったのかな名前?
「どんな風に呼ばれているか具体的に挙げると『進撃のドM』や『ドMの刃』『ドMもん』に『ドMの奇妙な冒険』『ドMの谷のナ○シカ』といった感じです」
いや最後……他も大概だけど絶対怒られる。いや寧ろ怒られろ。
「そしてこのドM達ですが――実は恐ろしい事に元はと言えば人間……普通の人達が怪人化させられたものなんです」
あ〜そっかパンストセイントちゃん達ってプリティーで癒しな魔法少女と見せかけてマギカなまどか寄りの魔法少女だったもんね。んでそのマギカなまどか達が戦ってた魔女って元は普通の少女が魔法少女になってそっから――魔女に変わっちゃうって話だったもんね。そして魔法少女が魔女になるように仕向けていたのが宇宙から来た――
「あっ!」
この「あっ!」を言ったのは何を隠そう私である。
「どうやら気付いたみたいだな? さすが筋肉まで脳みそで出来ている連中だ……察しが早い」
筋肉まで脳みそっ! 筋脳って事ですかライダーさん!
「いいや、僕の筋肉は鋼で出来ているっ!」
きゅ、急に入ってくるのねキリンちゃん。まぁ……キリンちゃんはロボットだからそりゃそーだろうけど。
「但し脳みそは豆腐で出来てるけどねっ!」
それは豆腐メンタルって事キリンちゃん?
「そしてバファリンの半分は優しさで出来ている」
今その話関係ないよね? いやそれより今のライダーさんの口振りからして私の推理は合ってるって事?
という私の疑問の答え合わせか再びアイリアちゃん。
「お察しの通りドMはある人物によって強制的に怪人化させられた人達。そしてそのドMを造っているという人物が――私達の最近の調べで他の惑星からやって来た宇宙人だという事がわかりました」
「や、やっぱり! じゃあ果麺ライダーさんが追ってる凶悪犯がドM達を造っている人物で……そしてその人物をパンストセイントちゃん達以外、主に私達から見たらただ怪人を生み出しているだけの人物――すなわち」
『スク水!!』
私達おかず戦隊ごはんですよ(仮)全員の声が見事に揃った。
つまり果麺ライダーさん、パンストセイントちゃん、おかず戦隊ごはんですよ(仮)は今までバラバラに別の敵と戦っていたと思ってたけど、実は黒幕は全部一緒で同じ敵と別々に戦ってただけ……?
という事を恐らくパンストセイントちゃん達との話で私達より先に気が付いたライダーさんは頻りに頷き。
「わかったか? オレが『既にお前達は協力している』と言った意味が?」
これにレッドも頷き。
「ああ、俺達もスク水の事はだいぶ前から追っていたからな。つまり俺達3チームは意図せずとも協力関係にあった。しかしこれからはハッキリとした共通意識を持ってヤツを追う……という事だな?」
「その通りだ。だが、各々のスタンス、チームワークというものもあるだろうから互いに過度な干渉はせず、情報共有だけはしっかりし必要に応じて行動を共にする……という方向でオレは考えているがお前達はどうだ?」
ライダーさんが各リーダーであるレッドとアイリアちゃんに返事を伺えば。
「確かにその方が効率が良いかもしれん。俺達はそれで構わない」
「私達も特に反対する理由はありません」
「そうか。結果としてはオレが全員を巻き込んでしまったような形だが、ここでヤツを逃がすとまた別の星に逃げ込まれるかもしれない。なのでなんとしてもここでヤツを捕まえたい! すまんが頼むぞお前達!」
『おぉ!』
と。ここに果麺ライダー、パンストセイント、おかず戦隊ごはんですよ(仮)の日曜の朝1時間半同盟が完成した。
――のだけれど。
「ところで……ちょっと気になったんですけどおかず戦隊ごはんですよ(仮)さんではラスボスの事を『スク水』と呼んでいるんですか?」
あぁ〜アイリアちゃん達からしたら当然の疑問だよね。
と私が考えている中レッドが答える。
「うむ。正確な名前を知らんので仮としてスク水と名付けたのだ。お前達は本名を知っているのか? なんと呼んでいる?」
するとアイリアちゃんは静かに首を振り。
「いいえ、私達も本名は知りません。なので私達も仮で『レオタード仮面』と呼んでいます」
なんでっ! 両手と頭に包帯巻いたふんどしネクタイのおじさんだよっ? レオタードも仮面も要素ないじゃん!
……という私の心の叫びは誰にも届かないかアイリアちゃんは続ける。
「ライダーさんはさすがに本名知ってますよね?」
「無論だ。だがお前達の話から推測するにヤツは今俺と同じで地球人に乗り移っていると思われる。なので地球人の方の名前はわからないが、中身の凶悪犯の名は『メンズ・ブルマ』だ」
だ、男性用ブルマって事っ!? ふんどしの分際でっ!
っという事でようやくラスボスの名前を知った私達は、翌日から全員でメンズ・ブルマを追う事になりました。




