パワーアップ
先週の話だけど――私達は遂に四天王制服verを倒す事に成功した。つまり私達が知っている限りでは四天王集団も4分の3は倒したワケで、恐らく敵幹部全体でみても半分以上は倒したんじゃないかな〜? といったところだと思う。
まあこれ自体はいい事なんだけど、やっぱりというか実際にはそこまで順調ではなかった。
じゃあ何があったのかと言えば――初めて戦闘で苦戦したと言ってもいいレベルの苦戦をしたのである。……と言ってもおかず戦隊ごはんですよ(仮)全体としての話ではなく、私と小豆ちゃんだけが四天王相手だとちょっともう無理かな? って話でレッド、ブルー、グレーちゃんが居ればまだまだ負ける気配はない……といった感じである。
そりゃま、私はただのOLだし小豆ちゃんだって天才エンジニアだけど戦闘は専門外だしね……つまり普通の女子2人にはとうとう限界が来たというワケ。
なので――本日のミーティングは今後の方針。主に私と小豆ちゃんの処遇をどうするか? ……って話だったんだけど――
「まず初めに私から良いか?」
と軽く片手を上げてみんなの視線を集めたのは小豆ちゃん。小豆ちゃんはみんなが無言で頷くのを確認してから。
「実際問題。この話の解決自体は簡単だ。私がバトルスーツをパワーアップさせれば良いだけの話。――で。そこで問題となってくる――という程の事ではないのだが、レッドに相談したい事がある」
「なんだ?」
「スーツのパワーアップは私とつみれの分だけで良いか? 当然だがその方が仕事が早く終わる。お前達3人はどうせ変身はしないのだろう?」
「なるほど。そういう事か……」
言うとレッドは両腕を組みソファーへと深く座り直す。
「無論仕事は早い方がいい。よってその意見には賛成だが一応先に確認はさせてくれ」
「確認?」
「ああ、確かに俺は変身しないからスーツのパワーアップは必要ない。だが、ブルーとグレーもそうだとは限らない。だろう?」
「確かにな……」
ここでレッドは小豆ちゃんから視線を外してブルーとグレーちゃんに向け。
「という訳でどうなんだお前達? 実際に俺はまだこの世界で見せていない能力がある。なのでまだまだ余裕で戦えるが――お前達もあるのか? 奥義的なものや隠し必殺技みたいなものが?」
あいつあの変態的な強さでまだ能力全部出してないってアホか……と私が呆れている最中でブルーとグレーちゃんの答えは?
「ふむ。別段隠している訳ではありませんが、必要ないかと思い私もまだ出していない能力がありますが――グレー殿は?」
「私もあります」
ですよねー。
「因みに僕もあるよ!」
と誇らしげに胸を張っているのはキリンちゃん。だけど……
「それは知っている。お前を造ったのは私だからな……お前の事は全て把握している」
えぇっ? そうなの? 私一緒に住んでるけどキリンちゃんってカワイイ以外はロボットなのに生物食べてタピオカのウンチする糞ロボットとしか認識してなかったんだけど何か秘密があったの?
とか考えているけど話は勝手に進み。
「だ、そうだ。ならば誰も異論はないはず。博士のペースで博士の好きなようにスーツをパワーアップしてくれ」
とレッドが肩をヒョイと竦めると。
「そうか。ならば自由にやらせてもらうが――現状パワーアップといっても私の頭の中では漠然としていて具体的な案は何もない。なので良ければお前達の見せていない能力を教えてはくれないか? 参考にするのは当然だが、個人的に興味もある」
これに最初に答えたのはブルー。
「うむ。先程言ったように隠している訳ではありませんからな……博士殿の参考になるなら私は一向に構いませんが?」
「俺も問題ない」
「私も大丈夫です!」
――という訳で私と小豆ちゃんのバトルスーツ強化のための聞き込みが始まるんだけど。その口火を切ったのは最初にOKを出したブルー。
ブルーは咳払いを一つし。
「では僭越ながら私から……。知っての通り私は元魔王。故におかず戦隊ごはんですよ(仮)のブルーとは別に魔王としての変身をあと3回残しております。まあ、魔王に良くある倒したと思ったら第2形態、第3形態と変身していく……そのためのギミックと解釈して頂ければ良いかと……?」
「ほ~変身とはお誂え向きだな? 具体的にどんな変身をするのか教えてもらってもいいか? スーツに応用出来るかもしれない」
「左様ですか……」
小豆ちゃんの言葉にブルーはアゴを一撫でし。
「ではまず第1段階の変身ですが……これは足が臭くなります」
「それは変身とは言わないでしょう」
思わず横からツッコミを入れてしまった。――が。
「いや、そうは言われますがピンク殿……実際私は戦闘力が10倍に跳ね上がりますが?」
「なんで足が臭くなると戦闘力が10倍になるのよ……」
「まあ魔王ですから」
嫌な魔王だなぁ。……と私が考えていると小豆ちゃんがポソリと呟く。
「変身すると足が臭くなる……か。これは使えるな」
やめて小豆ちゃん! 変身して足が臭くなる戦隊ヒーロー女子2人はなんか倫理的にマズイ気がするっ!
「他には? 第2段階はどうなる?」
そんな私の気持ちを無視してか小豆ちゃんはブルーへ次を催促。
「第2段階はその足が10倍臭くなります」
「だからそれは変身じゃないでしょう?」
再びツッコミを入れてしまうと。
「しかし戦闘力は更に10倍になりますが?」
「なんであんたは足の臭さと戦闘力が比例してるのよっ!」
「まあ元魔王ですから」
それ言ってれば許されると思ってないっ?
「うむ。参考になるな……次は? 第3段階は?」
なんか小豆ちゃんも妙にノリノリじゃない?
「第3段階は髪が薄くなりますな」
「だからそれは変身じゃなくてハゲてるだけでしょうっ!」
「しかし足の臭さは10倍になりますが?」
「おまっ! もう戦闘力関係なくなっちゃってるじゃん! いい加減にしなさいよっ!」
てゆーかそれって更に足が10倍臭くなってついでにハゲるだけの話じゃん! 踏んだり蹴ったりか!
私は頭の血管がキレそうだったけど、ブルーへの聞き込みがこれで終わったのでギリギリ切れずに落ち着きを取り戻した。




