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渋滞魔法少女

 そしてその週の土曜日。


 ミーティングのためいつものファミレスに着いた私とキリンちゃんだけど――

「どうやら僕達が1番乗りみたいだね?」

 キリンちゃんの言う通り。少し早目に着いたな~っとは思っていたけど、いつもの席にはまだ誰も座っていない。

 常連顔パス状態の私達は土曜のこの時間帯ならいつもの席に勝手に座っても店員さんに文句を言われない……ってゆーか案内されるのを待っても結局同じ席に案内される。なので勝手に座って下さいってのが正しいのかもしれないけど、そんな理由で私とキリンちゃんは案内を待たずしていつもの席へと向かった。


 その途中で――


「……あ」

『あっ!』

 目が合った。……というよりその娘達の席の隣を通りかかったので気が付いた。

 プリティーでキュアな3人組。地下アイドルじゃなくて地底人アイドルの「パンケーキ・ストロベリー・セイント」略して「パンストセイント」の3人。

「こんにちは」

「こんにちはピンクさん……」

 とりあえず挨拶をすると、あのリーダーっぽい娘が辺りを見渡し。

「今日は他の方達は?」

「ええと、あとから来るはず。私がちょっと早く着いちゃって……」

「なるほど。じゃあ今少しお時間ありますか? あれば私達の話を少し聴いて欲しいのですが?」

 私は1度小首を捻り。

「え? あ、うん。みんなが来るまで時間あるだろうから、その間でよければ……ってかレッドじゃなくて私でいいの?」

「はい、寧ろレッドさんではなくピンクさんでないとダメというか……。とりあえず座って下さい。お時間はそれで結構なので」

 というワケで何故かパンストセイントちゃん達の席にお邪魔する事になった。


 ――んで。


「それで話って?」

 とリーダーらしき娘に問いかければ、彼女は目礼を一つ挟み。

「単刀直入に言います。ピンクさん、私達と契約して魔法少女になって頂けませんか?」

 はっ? 魔法少女っ!?

「そうだよつみれ。僕と契約して魔法少女になってよ!」

 やめろ! それはもうダイレクト過ぎるのよキリンちゃん!

「――そう! 僕と契約して、僕の顔を食べなよ!」

 なんで急にアンパンマンになったっ! いや、まあとりあえずキリン一番搾りはほっといて……この娘達ってプリティーでキュアが売りの魔法少女? じゃなかったの? 実はダークなファンタジーでほっとくと自分達もいずれ魔女になっちゃう感じの魔法少女なの?


 ……と。思ったので様子見も兼ねてとりあえず探りを入れてみる。

「あの~あなた達と契約して魔法少女になるってどういう意味? ってゆーか申し訳ないんだけど私ってあなた達の事あまり良く知らないんだよね?」

 初めて出会った時。果麺ライダーさんはちょこっと自己紹介してたけど、この娘達って結局名前すら訊けていないんだよね。

 なのでかリーダーっぽい娘は頭を下げ。

「失礼しました。不躾過ぎましたね……。では改めて自己紹介からさせて頂きます。私はパンストセイントのリーダーで獅子座レオの早乙女アイリアと申します」

 獅子座の早乙女アイリアちゃん……この娘やっぱりリーダーだったんだ。……にしても私達と違って名前とか肩書きかっこいいなぁ。

 と考えているとアイリアちゃんは私の隣に座っている娘に視線を向け。

「次にそちら。ピンクさんの隣に座っているのが牡牛座タウラスの獅子川ランちゃんです」

「獅子川ランですっ! ヨロシク! ピンクさん」

 ん?

「そして最後に私の隣。この娘は乙女座バルゴの牛尾シャイカちゃんです」

「牛尾シャイカだ」

 ちょ……ええぇぇ? 獅子座が早乙女で、牡牛座が獅子川で、乙女座が牛尾って紛らわし過ぎない? しかもプリティーでキュアな魔法少女とかダークでマギカなまどか……とかと思ってたらやっぱり聖闘士セイントの星矢まで入ってきちゃったよ。


 で、でもまあこれはこの娘達が意図的にやってるワケじゃなくて事務所の方針? とかで芸名とかキャラ付けだよねたぶん? だから野暮なツッコミは入れないでおいて。

「えっと、私はおかず戦隊ごはんですよ(仮)のピンクで普段はOLをしている鰯野……」

 とここまで言うと。

「あ、自己紹介は大丈夫ですよ。失礼ながらピンクさんの事は調べさせてもらったので」

 とアイリアちゃんに止められた。

 あ~そっか。レッドじゃなくて私に話があるって事は、そりゃある程度私の事は調べてあるよね。

 そしてそんなアイリアちゃんはキリンちゃんを見詰め。

「ただ、先程からピンクさんの周りを飛んでいるこの子は一体?」

「ん? あーこの子は最近私達の仲間になったマスコット兼私のペット――謎の新生物(ロボット)のキリン一番搾りちゃん」

「よろしくー」

『キ、キリン一番搾りっ?』

 驚くパンストセイントちゃん達だけど。

「な、なるほど。マスコットちゃんでしたか。私達のマスコットの『サッポロ北海道生搾り』ちゃんと仲良くしてくれると嬉しいです」

 サッポロ北海道生搾り! マ、マスコットの名前でそんな被り方するっ? でも会社的にはライバルの2人だから仲良くなれるかな? とはいえ。

「パ、パンストセイントちゃん達の所もマスコット居るんだ? どんな子? かわいい?」

「かわいいですよ。人食いクマですけど」

『ひっ、人食いクマっ!?』

 同時に声を上げる私とキリンちゃん。

「ええ。でも安心して下さい。生搾りちゃんは人しか食べないのでキリンちゃんを食べたりはしませんから仲良く出来ると思います」

「安心するとこそこなのっ!? 全然安心出来ないどころか凶悪過ぎるマスコットなんですけど!」


 しかし実際の生搾りちゃんは、そういう設定なだけの魔法で動く大きなクマのぬいぐるみでした。

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