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動力神と斬りすぎる者  作者: 白石 流
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第二十九話

 ――もはや敵影は無しか


 戦闘音らしき騒がしさが遠方から届くこともあったが、今は静かなものだ。


 フーリンの無事を信じ、ダインは丘のふもとの盾壁を斬りひらき、急峻な斜面を一気に駆け抜ける。今更ながら風力による動作補助は効果がはなはだしい。登るほどに足が軽くなり、勢いもそのまま城塞を飛び越えんばかりだった。


 頂上をかこう盾壁も突破し、後ろを見ると標高の高さに驚かされる。登りはじめて数分だというのに都市の外まで見渡せるとは。


 警戒を怠らず上中庭へと足を踏みいれた。下よりも狭いはずだが、同じように果てが見えないので体感的には差を感じない。目を凝らせば彼方に認められるのは、連綿と佇立する防御城塔、いや厠塔だろうか。


 方角を変えれば山脈もかくやの主館が遠近感を乱す。眼精を疲れさせる極めつけは、そんな山脈主館さえも足下にしたがえる主塔だ。エイリーはそこにいるに違いない。


 進行方向を決めたところで近きに目を転じれば、鳩小屋や鍛冶場、工廠などが不規則に点在していた。それらは酷く損壊しており、近くには決まって敵神官の亡骸が転がっているのだった。派手にやったなと苦笑もそこそこに足を速める。戦闘音が止んだことからも、フーリンは既に前哨戦を終え、こちらの到着を待たずにエイリーの元へ乗り込んでしまうとも考えられる。


 もう二度と、相棒の強さにあぐらを搔いて後悔するのは御免だ。やはりと言うべきか、あの巨なる塔からは殊更に異様な怖気をかんじる。長剣を伸ばせば届きそうな気がしながら、いくら走ってもたどり着かない。と思いきや案外と近くであった。


 噂でしか聞いたことのない、世界随一の大主塔。長方形平面の無骨さは、外見だけでも壁体の厚さを存分に予感させた。四隅から突出した小塔が、まるで異獣の角か爪牙のようでおどろおどろしい。


 フーリンはこの裏側にいることが考えられる。回り込むにはどれだけの時間を要するか検討もつかないので、確かめがてらに地面を斬った。


 土が舞う。四囲の地面が抉れるのもそこそこに、いつもの斬撃の嵐が前方へ指向するのが不思議と肌でわかった。しかし、立ちはだかる壁体には小石ほどの剥落もない。恐ろしく頑丈だとしても火花ひとつあがらないのは妙だ。歩み寄りながら二度三度と繰りかえしても、蜃気楼でも相手どっているように手応えがなかった。


 思わず実存を疑うくらいだ。百人が横並びに昇降できそうな入り口階段のふもとを切っ先で突くと、確かに感触はある。


 上方から気配。踊り場の高みに影のような女が立っていた。


「いくらやっても無駄ですよ、ダインさん」


「無事だったか」


「いやぁ、結構な有様ですがね」


 傍まで行ってみると、なるほど酷いやられ様だ。皮鎧はどこもかしこも切れ込みだらけで、のぞいている深い生傷からは薬品臭がする。余裕ぶって肩を叩く望遠鏡も、隅々までが細かく欠損している。なにより象徴的な鏡髪は血液に塗り固められ、すっかり反射を失ったいまは布のかぶり物のようだ。気にして撫でるたびに薄氷がひび割れる音がし、凝血の粉がおちた。 

 

「痛むか? かなりの遣い手にあたったな」


「かつてない相手でしてねぇ。エイリーの前に全力を出してしまいました。傷の方はベルの地下室から適当に拝借してきた薬のおかげで、痛みだけは消えてますが」


「そうだったか……」


 安堵するばかりで、気の利いた言葉はのどに詰まる。


 静寂に包まれた階段をのぼって内部を目指す。通常の主塔であれば既にテラスまで達しているだろうに、いまだ基部の高度をこえず入り口がみえない。


 二人の足音と話し声だけが響いていた。


「そちらはどうだったんです。随分と暴れたんじゃないですか」


「やっぱり正面は数が多くてな。けったくそ悪い呪いをかつてないほど使い倒してやった」


「別行動は正解だったようで」


「そうだな。でも気を揉んだ」


 タラジャスク城塞の攻め方については意見が分かれていた。裏からの共同攻戦を提案するダインに対して、フーリンは前後からの挟撃にこだわった。一対多の極致となる正面に敵戦力を集め、背後をとったフーリンがエイリーまでの道を整える。


 当初はダインの負担が大きいとも思ったが、結果的に正解だった。フーリンがいれば、確かに正門で本気を出しきれなかっただろう。


「……水の匂いがします」


 開け放たれた豪奢な入り口をくぐると、室内の広さにまったく不足な蝋燭が、囲いのついた室内井戸と周りのものを浮きだたせている。


 水の清香には腐敗の微臭がまじっていた。所せましと転がる男女の遺体を、三歩ごとに跨がなくてはならない惨状である。不規則に配置された採光用狭間から吹きこむ風が、燭光をまたひとつ消す。


「非武装だな。服装からして侍女・侍従役の神官か」


「全員が急所を一突きされ、抵抗の跡がありません。停止への恐怖に耐えかねたのでしょう」


 先へ進む。長い階段も、上階の大ホールも無残な死体の絨毯が敷かれていた。


 二人はかえって悄然としてくる。死線を越えてようやくたどり着いた敵陣の本丸で待っていたのは、沈黙と腐臭のみ。なにも激戦を期待していた訳でもないが、えも言われぬ侘しさに押し黙ってしまう。


 より良い未来を勝ち取るため、信じる正義を全うするために上階を目指していた筈が、まるで死に向かっているような、墓所で死者の後を追おうとしているような心持ちになってきた。


 はたまた嵐の前の静けさなのか。にわかに悪臭が強まった。三つ目の階段をのぼりきったそこは、どこよりも殺風景で死体がおおい。


 大方が消えていた燭台が息を吹きかえし、次々とひとりでに灯りだす。いっさいの間仕切りのない空間には、華美ではないが恐ろしい価値を感じさせる家具調度品の数々が、橙の艶めきを競い合っている。


 ――居住階か


 死体の合間をぬけ、ときに踏みこえる足は自然と奥へ。もっとも目を引かれる濃紺の天蓋のベッドへと吸い寄せられてしまう。一目でベッドと分かったのが不思議なサイズだ。


 閉じられたカーテンは、生地の厚薄のグラデーションが奔放な幾何学模様を作りだしており、厚きは岩盤にも似る硬質さを想起させながら、二人が歩いてゆく空気の揺らぎによって如何ようにもはためきかねない繊細さをも兼ねている。薄きは水晶を嵌めこんだようでいて決して明け透けでなく、矢をも通さぬであろう靱性を印象づける。それらは踊る燭光の角度によって質感を交換し合い、こちらの吐息ひとつにも反応して表面が波動を打つのだった。


 神々の住まう場所から持ち出したのか。美に疎いダインも見惚れざるを得ない。フーリンも望遠鏡を落としそうになった。


 二人は顔を見合わせるでもなく同じ予感を抱いていた。このカーテンを開ければエイリーがいるのだと。最高位の神たる気配や圧力などは絶無であるが、追い求めていた相手はこの中で待っている。


 猫か犬か、走りを競う足音が聞こえた。それが互いの心拍音だと分かるまでは長くかかった。


 フーリンが〝手〟で空を搔いた。恐る恐るの風がカーテンを少しずつ割り開いていく。


 本来の姿の神官が五、六人は寝られそうなマットに、果たしてエイリーはいた。


 息があるのかも危うい、ともすれば死後いくばくかに見える枯れ枝をエイリーと判断できる根拠は、尋常でない寝床とラルタルの領主たる荘厳な広袖の広袖のチェニック(ダマルティカ)チェニックのみであった。


 袖がまくれ、腕には古い焼き印がある。何を象ったものなのか、ダインには分からなかった。


 呼吸にともなう腹の上下は認められない。世界が停止していないことだけが存命の証といった有様だ。フーリンが声を掠れさせて震える。


「これが動力神……。今のエイリー・ケイオスなのですね」


 まったく無防備な白髪の廃人に対し、たぎらせた闘志の振るいどころを探しているようだった。


「フーリン、躊躇ってる暇はない。こいつが弱っていればいるほど、状況は悪いってことだ。ケリをつけよう」


 ダインが長剣を構えるのを制して、頭上に望遠鏡をかかげたフーリンが前に出た。


「えぇ、分かっていますよダインさん。少しの間だけ動かないで下さい。触れれば命はありませんので」


 腹の据わりきった顔をしていた。壁際に沿って循環をはじめた大気が、フーリンを軸に収斂するにつれて密度を濃くしていく。かつてなく破壊的な気流が壁をはがし、床をひっくりかえし、あらゆる品々を粉と変えるのだった。


天蓋やカーテンも引き裂かれ、吸い込まれる。しかし神ゆえの超常なのか、眠り続けるエイリーは衣服の端にいたるまで動じていない。


 旋風は依然として濃密さを増し、白磁の円環となって数歩の距離で軋る。ベッド本体がむしり取られて消失しても、エイリーが接している周りだけは侵さざるべき領域と言い張るように損耗を拒んでいる。


 際限なく荒々しさを高めた旋風は、もはや表面の流速が動体視力を凌駕し、静止した壁にしか見えなくなっていた。


 轟きの坩堝から急転し、耳が破れるような無音。壁が消え、唐突にひらけた廃墟のような景色にはベッドの一部で寝息を立てる神と、二人の人間。そして、はち切れんばかりに圧縮された流体を鋭利な形状にまとい、天井に達するまで膨張した望遠鏡の威容だけがあった。


 触れれば命はない。その言葉に偽りなしであろう作用力の刃だ。


「エイリー。あなたにも、こんな姿になってでも押し通したい正義があるのでしょう。今の私達では想像もつかない展望が、懊悩があるのでしょう。ですが、今の世の人々を傷つけるような手段を受け入れることはできないのです。故にその命をもらい受け、私が動力神となる。光を取りもどし、絶やさず護り続けると誓いましょう。……寝込みへの討ち入り、よもや卑怯とは言わせません。覚悟」


 風の白刃がエイリーの首へと打ち落とされた。神殺しのための隠し球。長年をかけて練りあげ、研ぎ澄ましてきた最高の攻撃だった。


 持てる力の全てを、一点のみへ。喉仏も露わな細首が刃とかさなり、容易に刎ね飛ぶかと思われた。 

身じろぎもせず見守っていたダインと、得物を振り終えた姿勢のフーリン。ふと、二人は霧の中にいたのだった。互いの姿のほかは何もない。


「そう来ますか」と忌々しげだが、ダインは混乱するばかりだ。これは敵の術中か。介入してきた者の法力にかかったか。説明を求めようとすると、少しずつ霧が晴れてきた。


 まるで場所が変わっていた。足裏が大地のざらつきを感じ出す。屋内ではない。


 吹きさらしの荒野だ。建造物の基礎跡と、小石になった瓦礫。死人のように青白く、冷たい地面。


 顔をあげると得体の知れぬ天体がこちらを見下ろしていた。フーリンの風と酷似する、気流の球であった。


「おい、ここは一体……」


 またしても疑問は中断する。天体の直下に、いつの間にやら出現していた玉座。背もたれが長く、座面は高く深い。恐るべき大男が腰かけるにふさわしい無骨な一品には、小柄な老人が無気力に足をぶらつかせていたのだった。


 元の空間ではベッドで横たわっていた、エイリー・ケイオスに相違ない。  


「やぁ、ここに人間を招くのは初めてだ」不意に発せられた声は嗄れているが若々しい。こちらを見る目には敵意もなかった。それどころか、表情からは仄かな歓喜さえ見え隠れする。「僕の所まで来るとは思わなかったよ。ノルンの助力があるとはいえ、人間の身で到達してみせるとはね」


 フーリンが不敵に口角をあげる。


「ご自慢の神官達には随分と苦汁を飲まされましたがね。今や彼らも仲良く寝ていますよ」 エイリーは挑発を受けても柳に風で「ん?」と小首をかしげた。しばらく神妙らしく言葉の意味を咀嚼していたが、つまらなそうに「違うよ、そんな意味じゃない」と手をひらつかせた。


「僕が讃えているのは、君達の魂が見事な適性を獲得したことだよ」


「適性……?」


「自分自身で気付いてないのかい? 変化というものを」


 不可解にすぎるので問答を打ち切ってさっさと飛びかかろうとする二人の気配を察したようで、エイリーは仕様なさげに続けた。


「動力停滞が顕著になり、初めはさぞ辛かったろう。ノルンの庇護によって魂の希釈を免れる代わりに、世界からずれ込んだ旧来の感覚での生活を余儀なくされた筈だからね。だけど考えてみなよ。最後に眠ったのがいつだか」


 言われてみてはっとする。途中の街でも馬車の中でも、眠ってばかりの道程であった。耐えがたい眠気を一日と数え、睡魔の訪れる間隔が短くなってくることに焦燥する旅であった。それが今は、ディーロに倒され牢獄で目覚めて以来、過酷な試練を乗り越えてなお元気なものであった。


「エイリーさんよ、あんたは俺達が動力停滞に順応したって言いたいのか?」


「その通り、シンプルな意味合いさ。今であれば、胸にぶら下がる忌々しい天秤の紋を外しても平気だろうね」


 エイリーが高い座面からずり落ちた。衰えた足は案外としっかり着地の衝撃を吸収し、危なげなくこちらへ進んでくる。


「近づくな……!」


 警戒する二人と対照的に、エイリーは諸手をひろげた。


「強靱なんだよ、君達は。とんでもなく類い希にね。動力の供給が僅かであれば並以上の神も、星も宇宙も活動の停滞から逃れることはできない。そんな状況にさえ適応し、己を保てる魂の持ち主をこそ、僕は強者と呼んでいる」


 歩いてきたエイリーの首が、ダインの長剣の切っ先にふれた。立位で対面すると本当に小柄だ。気付かなかったが両目が白濁しており視力の有無があやしい。


「何が言いたいんだ。神って奴はどいつも話が遠回りなのか?」


 切っ先が喉仏に押され、力負けしたダインがじりじりと後退してしまう。さしものフーリンも奇っ怪な圧力をまえに迂闊な動きがとれずにいるようだ。


「せいぜいが判定神院を屈服させるための交渉材料としか見ていなかったが、今は君達が欲しいと感じている。『これから』の戦いに、本当の強者が必要になるとね」


「また『これから』か。いい加減にどういう意味だか説明したらどうだ」


 萎れた相貌がかっと開かれ、愉快そうに歯を剥いた。 


「討って出るのさ。〝世界そのもの〟へ」


「言いなりになってる奴がか? 馬鹿げたことを言うな!」


 怒鳴りつけ、腹を突き刺そうとしたナイフは表皮を通らなかった。


「言いなりに見えるだろうが、敢えて乗ってやっただけさ」口調も表情も変わらずに歩を進めてくる。どこまでも押されて行ってしまう。何度も引いてはナイフを突き立てるが刃が立たず、歩調は緩まない。ダインはたまらず退避し間合いをあける。「丁度良かったんだ。奴へ討って出るための準備と、奴の意志が合致していたんでね」


 あれを見ろと、絶え間なく蠕動する天体を指して声を張りあげた。


「何だか分かるかい? あれは動力そのものだよ。永きに渡って世界にあり続け、僕の存在によって循環していた動力を回収したものだ。もう少し……ほんの少しで完全になる」


「そいつをどうするつもりだ」


「最上の武器だよ。どうあってもこの世界を終わらそうとする諸悪の根源を討つためのね。全ての動力を強者のみに振り分け、〝世界そのもの〟の頭部を、心臓を討ちに行く。そうしない限り戦いに終わりはないんだ。もう君達だって、動力神がすげ変われば全てが解決されると思ってはいないんだろ。また次の何かが起こり、それを解決せねばならない。幾度もやっていれば図体のデカすぎる愚物でも気付き、学習して手強くなるだろう。その前に叩かなくては平和への道を永遠に閉ざすことになりかねないんだよ。ノルンの奴もどうして理解を怠って神官など送ってくるだろう? 巻き込まれたダイン君は勿論だが……フーリンと言ったか? 君も気の毒だ」


 突風。フーリンの望遠鏡がふたたび風の白刃を備えた。風力の過密さに大気が震える。「聞き捨てなりませんね。あなたは自らの無能さから目を背け、極端な方法にでることを正当化することにばかり腐心する、卑怯でつまらない存在です」


「自分であればもっと上手くやれる。そう言いたいわけだね」


「でなければここまで来ないんですよ……クソ野郎」


 美しい顔に、人間なのか疑わしくなるほどの青筋が浮き上がっていた。血で染まった髪と相まって、このまま異形へと姿を変えかねない危うさを感じさせる。やはりノルンへの侮言は禁句中の禁句。


「口が悪いな……。あの腕力馬鹿の教育不行き届きだ」


 フーリンの姿が消失し、濃紺の広袖のチェニックが裂かれて舞った。一拍おいて空気の破裂音が鼓膜をつんざく。手数とスピードに於いてダインの斬撃をはるかに凌ぐ刹那の猛攻が、エイリーの全身を残酷に斬り刻んだのである。


 皮膚や肉を飛ばされたエイリーだが、腕で胸を庇うような仕草をしたぐらいの反応だ。露わになった痩躯は裂傷まみれであっても深い傷が見当たらない。


高速機動を終え、いつともなく姿を現したフーリンが吠える。


「舌を噛まないうちに黙りなさい! さっさとやり合いましょう。うちの〝庭〟じゃあ、語らうのは互いに五回死んでからって決まりでしてねぇ」


「成る程。穏やかにいこうと思ったけど、少し分からせる必要があるみたいだ」


 場の温度が下がった。明らかな雰囲気の悪化。動力そのものだという天体が下方に尾を引きはじめ、たゆたいながらエイリーのもとへ向かっていく。みすぼらしかった枯れ木の老体が見る見るうちに張りを取りもどし、堂々たる若人へ変貌をとげるのはあっという間であった。


 背丈こそダインと大差ないものの、肉体の造形たるや人間が無限の鍛錬を積んだとて絶対に及ぶべくもない。構造の根本からして原理が異なるであろうきめ細やか筋肉が、顔面や指先にいたるまで重ねられている。


 いかなる絵画も価値を無くす、筆舌に尽くせぬ面様。そして豊かにさざめく深黒の毛髪が、かつて天界の活力と明朗の象徴とされたエイリーなのかと見惚れさせられる。


 怒髪天を衝いていたフーリンでさえ、初めてノルンと出会ったときのことを思い出しては膝を折りそうになってしまった。体格からして本来の姿には遠く及ばないのは自明であるも、見てくれのみで戦意を削がれてしまう圧倒的な存在力とでも言おうか。

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