魔眼の射手
小さな女の子が楽しそうに土遊びをしているのを微笑ましそうにサーシャとマルケルが眺めている。
そんな彼らの幸せな日常を僕は近くの木陰から見つめていた。
なんというか、まあ。
自分達が過去にした酷い仕打ちを完璧忘れているかのようだ。
許せない。
僕は右手で矢を握り、左手で弓を持った。
狙いを定める。
最初は子供。
けれど、あの子に罪はない。矢で射貫いたりはしない。
手始めにあの子の足元に矢を放ち、親の注意を向ける。
「ふう……」
呼吸を整えて、集中。
指先に神経を研ぎ澄ませ、視線を凝らし、矢を放つ。
ヒュンっと軽快な風切り音が聞こえ、瞬時に矢は女の子の側に落ちた。
女の子は突然の出来事に驚き、大きな悲鳴を上げている。
そして、狙い通り、子供の悲鳴に釣られてサーシャとマルケルが射程内に現れた。
「……許さない許さない許さないーー、」
僕は呪詛みたいに恨みを呟く。
脳漿が沸騰したみたいに頭が熱くなる。
「絶対に許さないっ」
矢を握り、弓を構える。
狙いはサーシャとマルケル。
心配そうな顔をするなっ!
僕を置いて逃げ出したくせにっ!
復讐心が滾るほど、両眼が冴えていく。
「この瞳で捕らえたからには逃がさない」
そして、僕は矢を放った。
甲高い風切り音は先程の何倍も鋭くなり、サーシャ目掛けて矢が飛んでいく。
本当ならば、こんなことはしたくなかった。
君と家庭を持って楽しく暮らせれば良かった。
けれど、君は僕を裏切った。
その悲しみはどれだけ深かったことか。
「この復讐は君のせいなんだよ」
そして、矢はサーシャの頭を射貫いた。
さらに勢いを増し、マルケルの頭まで貫いた。
まるでサーシャとマルケルの頭が串団子みたいに繋がった。
おそらく、これが真紅の瞳の力だ。
まさに魔眼の射手。
「やれやれ」
サーシャとマルケルが動かなくなるのを確かめると、僕はため息を吐いてこの場を後にする。
復讐は終わった。
僕は満足だった。
もうこれ以上することはない。
だから、そうだなあ。
崖から飛び降りてしまおう。
復讐とはいえ、これは僕の罪だ。
せめてもの償いをしなければならない。
それが僕がサーシャを愛せなかった未練を殺す最後の手段なのだから。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
一気に書き終えて、超絶悲しい結末になってしまったと切なくなりました。
暴走しました……。
もし良ければ評価等していただけると幸いです。




