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76、明智秀頼は堀当てる

学校から至急されたハンマーとタガネという金属の棒を使い、地層を叩いていく。

前世中学以来の地味さに懐かしさを覚えつつ、黙々と作業をはじめる。


「態勢がキツイ……。つ、疲れた……」

「いや、早すぎでしょ!」

「とか言ってアリアももう全然作業してないじゃないですか!」

「だって疲れた……」


絵美、アリアと10分で音を上げていた。

「しゃねー、しゃねー」とヨルがフォローをしている。


「俺も疲れた」

「明智は嘘だろ!半日走っていられるお前がこの程度で終わるわけないだろ!」

「モチベーション沸かねぇよ……」


タケルとヨルは楽しそうに地層を掘っているがあのワクワクはどこから来るのか……。

俺と山本はわりと冷めたテンションで地層を掘っているが、なにか見付かる気配すらない。


「今日のメインである昼食が終わり、もう心は帰りたい気分よ……」

「こっちがメインだから!」


手だけは動かしつつ、ハンマーをカンカンと地道に叩いていた時であった。

急に砂の崩れ方が大きくなり、ボロボロと土が地面に落ちていく。

まるでそこになにかがあったみたいに。


「あった……」


なにかがあったというか本当にあった。

しかし、その砂に埋められていたのは化石でも土器でもなく黒い箱であった。


「どうした明智先生?固まっ……えっ!?」

「なんか突き刺さってるよな?」

「突き刺さってんな……」


隣で作業していた山本も目を丸くして箱に驚いている。

しかしこんなのおかしい。

地層とは何千年、何万年前のものが積み重なって出来たもの。

それがこんな人工的な黒い箱が地層内にあるなんてなにかおかしい。

誰かが意図的に埋めたとしか思えない。


「明智……。お前歴史的大発見したんじゃないか?」

「え?」

「もしかしたら、もしかするかもってことだよ!おーい、みんな!ちょっとこっち来てくれ!」


山本が班員に大声で呼び掛けている。

俺はとりあえずなんか刺さっている箱を壊さないようにコツコツと叩きながら掘り返していく。

箱が露出していき、最後は引っこ抜けそうな箇所まできたので一気に引っ張るとその突き刺さった箱が俺の手に入る。


「やたら重厚な色合いだな……」


砂や土、泥で汚れているが水で洗えば結構キレイな黒が姿を表しそうだ。


「秀頼君!どうしたの?」

「なんか箱があった」

「えぇっ!?すごっ!」


絵美をはじめ、班員が俺が持つ箱に驚きの声が上がる。

みんなに見えるように、箱を地面に置く。


「……なんか玉手箱みたいだな」


タケルが浦島太郎に登場する玉手箱だと表現する。

確かにイメージ的にはそんな感じだ。


「玉手箱か……。実は老化のギフト能力が詰まってた説とかあるよな」

「いや、知らんよそんな説」

「あたしも知らないよ」

「わたしも知らない」


俺、アリア、絵美とヨルが提唱する説を否定する。

なんで昔話に2000年問題から現れたギフトが登場するのかわけわからん。

確かに浦島太郎の話の元ネタにエニアが関わっているかもと指摘されれば半々ではあるが……。

しっくりは来ない。


「えぇ!?あたしの地元じゃ有名だぞ!?そうだよなタケル!?」

「いや、初耳」

「お前があたしに言ったんだろうがっ!」

「えぇっ!?知らね!知らねっ!?」


ガシッとタケルが理不尽にヨルに蹴られていた。

多分それ、そのタケルじゃないだろ……。

未来のタケルが言い出したことだとすぐに察した。

だって本当に玉手箱にギフト説とか知らないもん。


「もしかして、埋蔵金とかじゃない?」

「埋蔵金?」

「徳川家の隠し財産とか!やっだ!そんなの素敵ね秀頼!」

「まぁ、素敵だけど……。だとしたら軽すぎるよ。金属詰まってたら引っこ抜けないよ」

「リアリスト秀頼!」


俺が論破するとアリアが頬を膨らませて不満そうな顔で見てくる。

確かに埋蔵金なら素敵ではあるけど……。


「開けるか?」

「でも、もしかしたらヤバい呪物の可能性ないか?」

「最近そういう作品増えたもんなー。影響受けてんな山本www」

「草生やすな!」


ヨルにゲラゲラ笑われる山本。

開けるか、開けないか非常に悩ましい選択である。


「とりあえず振ってみたら?ワンチャン空の箱の可能性あるし」

「ああ」


タケルからの提案に、俺が箱を持ち上げながら振ってみることにする。

重さ的に片手で持てる程度には軽い。

シャカシャカとシェイクする要領で箱を振ってみるとなにかが箱にぶつかる感触がある。

確実に軽いなにかがある。


「空ではない。箱と物が当たってもそんなに音が響かない感じ金属でもないな」

「埋蔵金の夢が……」

「本気だったん?」


ガチの埋蔵金に夢を膨らませるお姫様の妄想は残念ながらこの時点で否定されてしまった。

落ち込むアリアに絵美が駆け寄って慰めている。


「とりあえず開けるか見て見ぬ振りをして箱を放棄するか」

「山にゴミ捨てるな!」

「……ゴミ箱に入れるよ」


やたら環境に厳しいタケルである。


「そもそもこれ何ゴミだ?プラスチック?燃えないゴミ?」

「サッカー部で処分してくんない?」

「押し付けんなよ!?サッカー部じゃなくて実質俺じゃん!」


開けないで捨てる方向に話が進む。

まぁ、どうせ中身もタバコの吸殻とかしょうもない可能性あるしな。


「とりあえず捨てるかー……」

「明智!そういや同学年に雷使うギフト使いの姉ちゃんいるぞ」


ヨルが妙案が浮かんだとばかりに声を張り上げる。

そこに全員の視線が集まる。


「ん?」

「ゆりかのダチに雷ぶっぱしてもらってスクラップにしようぜ!」

「あ?ゆりかの友達?誰だよそいつ?」

「あぁ、そいつの名前は岬……」


──ガコン。


「……い?」


ヨルの口からなんか麻衣様と同じ名字が出た気がしたがそんなことはどうでも良くなるくらいの異常事態の発生である。

明らかに箱から振動が起こり、全員の動きが止まる。

まるでそれはスクラップなんか嫌だという意思表示にすら思えてくる。


「箱から音がしたよな?」

「したな」

「したなー」

「しましたね」

「したよね、秀頼君?」

「うん。音がしたし、揺れた」

「本当に呪物か……?」


山本の不穏な一言に全員の顔が曇る。

またしてもなんか面倒そうなトラブルを引き起こしてしまったらしい。

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