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75、アリアのこそこそ

「先輩たちがいないとつまんない!ムスーッ!」

「なんの怒り?」


1年組の昼休み。

津軽和は普段より物足りない気持ちが溢れてしまい、そんな言葉が漏れる。

そこに赤坂乙葉が彼女の言葉に疑問を投げ掛ける。


「絶対今日お兄ちゃん連れてお弁当回とかやってますよ!大体こういうの絵美先輩が言い出すのわかりきってますから!」

「ヨル先輩とゆりか先輩、朝から張り切ってたよ」

「ウチの姉者も」

「ほらやっぱり!」


置いていかれた学年の違う彼女らはこの現状を嘆く。

しかし、嘆いたところでなにも変わらない。


「そんなんさー、普通に明智氏に頼めば良いじゃん。別に遠足的なものにこだわらず『昼いこーっ』って誘えば良いだろ……」


見た目はメガネ少女、頭脳はギャルゲライターの綾瀬翔子のアドバイスが炸裂する。

これでも、全員が娘という気持ち悪い認識をしているのが翔子という女である。

なぜ、娘のほとんどがバグのような存在である明智秀頼に心酔しているのかは彼女もよくわかっていない。


「だ、だって明智先輩ってあんまり昼には見つけられないし……」

「お兄ちゃん、教室に引きこもってるイメージあるし……」

「明智先輩、自分の時間取られると不機嫌になりそうな気がするし……」

「君たち、意外と弱気メンタルだね!?」

「何言ってんだお前ら?明智氏なんか普通に昼休み暇してるぞ?オレっち、よく明智氏と駄弁りながら世間への不満をぶちまけ大会してるしな!」


何故か後輩の中で、明智秀頼と1番絡みが多いのが綾瀬翔子という存在であった。

お互いが前世持ちであり、お互いが美少女大好きであり、お互いのメンタルが同じであるという事実である。


「おい、あいつ八つ裂きにすんぞ」

「あれ?和ちゃーん?なんかオレっちに不穏な言葉吐いた?」

「八つ裂きより窓から落とした方が簡単じゃない?」

「証拠が山ほどあるよ?もうちょい隠蔽出来る感じにしようよ?」

「あれれ?オレっち、殺される?なんで?なんでっ!?でもヒロインに殺されるならアリ!」


3人に囲まれる翔子の姿を見ながら、「はぁ……」とタメ息が漏れてしまう乙葉。


「もう彼女らはダメかもしれんね……」


乙葉だけは非常に冷静であった。






─────





「じゃあ、今から本格的に地層を掘るっすよー」

「ティラノ掘ろうぜヨル」

「んなの日本にいるわけねーだろ。子供かよ、タケル。んなことより土器掘ろうぜ、土器!土器土器(ドキドキ)するだろ!時代はジョーモン土器だ!」

「そもそも時代が廃れて縄文土器が無くなったんじゃないの?ナイフキャラから土器キャラにクラスチェンジか?」

「あ?なんだ?やるか明智?」

「あんまり汚れたくないなぁ」

「派手なことしたらアイリ……。コホン。仮面に怒られちゃう」

「話を聞けよ!」


5人全員が山本に振り返る。

なにか山本が騒がしい。


「なんだぁ山本ぉ?リーダー気取りか?あぁ?自由のナイフの異名を持つあたしを舐めんなよ?」

「リーダー気取りってか、俺が班長じゃん!俺に無理矢理押し付けたじゃん!」

「班長決めじゃんけんで負けて何言ってんだこいつ?」

「最初はパーとか言って嵌めただけじゃねーか!」


山本がヨルとタケルに対して抗議をしている。

そういえばそんなこともあったかもしれないし目に浮かぶ光景だが、何故かその記憶が始めて聞いた気さえしてくるくらい記憶の片隅にもそんな思い出の印象がない。


「あんなトラップに引っ掛かる人、まだいるんだね?」

「山本君は真面目なんだよ」

「こそこそするのが1番気になるわ!やめろよ!」


アリアと絵美がこそこそとしているが残念ながら話が筒抜けである。


「まぁ、落ち着けよエースストライカー。将来メジャーリーグ目指すんだろ?」


気の毒になった山本に1人フォローにまわることにする。

この班はもうダメな班なのがこの5分のやり取りで大体わかってしまった。


「メジャー目指さねぇし野球しねぇんだよ。あと、全員をパーでけしかけたのお前だからな?」

「え?」

「全員に目で合図してたじゃねーかよ!」

「いやぁ……。6人じゃんけんであいこ続くの不毛じゃん……。時間に追われる現代人らしくスパッと終わったしええやん」

「なんの言い訳なんだよ……」

「てかさ、山本」

「なんだよ十文字?」


仲裁しようとしたがトラブルに巻き込まれていると、その仲裁しに現れたのがタケルだった。


「秀頼が目で山本を嵌める合図に気付いてたなら、逆にチョキ出してたら勝てたわけじゃん?なんで真面目にグー出したん?」

「…………ん?」

「お前は班長になりたかったんだよ。な?」

「おい、なんだこの空気!?」


女性陣がタケルの言葉に『確かに』といった表示を向けている。


「大体、山本?お前が俺を責める権利ないぞ?班決めの前日の体育でお前がイタズラで俺のジャージのズボン脱がしたこと忘れてねーからな?体育館でトランクス晒された恨みに比べたら安いもんだろ?」

「そ、そりゃあ悪かったよ。あれは俺が悪い……」

「おい、待て2人共」

「ん?」


ヨルが俺と山本のトラブルにすっと割り込むと、山本の方に目を向けた。

絵美とアリアも彼になにか言いたげだ。


「山本が明智のズボン脱がしてトランクス姿にしただと!?」

「だ、だから悪かったって……。パンツチャレンジしてたんだよ……」

「山本君!?写真は!?写真はありませんか!?」

「秀頼のパンツ姿、5万!」

「持ってないっすよそんなの!」


3人に責められ、山本が写真を否定すると「酷い!」とドストレートなヨルの言葉が響く。


「おい、山本ぉ!山本ぉぉぉぉ!」

「どうしてそんな意地悪するんですか!?」

「どうせなら体育館じゃなくて教室でパンツチャレンジすれば良かったのに!」

「だから色々と悪かったぁぁぁぁぁ!」


謝罪している山本の姿がなんか哀れであった。

そもそもパンツチャレンジの写真が欲しがられている辺りがもうなんか色々と嫌。


「大変だな山本……」

「なんで明智は他人事な感じ出してんだよ!」

「ホント、大変だな山本」

「本当の本当に他人事だな十文字は!?」


その後、一行に作業をしない俺たちの班に対して見回りに来た星野先生から叱られてしまい地層の前に強制連行。

悠久先生に連れて行かれた仮面女と同じ末路を辿るのであった。


「なんか……、お前の女って重いよ……」

「そうか?個性があって可愛いじゃん!」

「お前のその包容力なんなん?王の器だよ……」


星野先生に叱られた後は山本も懲りたらしく、班長決めのじゃんけんイカサマとパンツチャレンジのことはお互いに水に流すことになったのである。

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