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71、上松ゆりかは驚かれる

お仲間を見付けたと判断したのか、悠久先生は何故彼女らに混ざっているのか涙ながらにその事情を語りはじめる。


「わたくしはそう!本当は幻の旭川ラーメンが食べられるというお店に行く気満々だったの!ネットにも掲載されていない知る人ぞ知るシークレットな店舗だったの!」


なんか聞いたことある煽り文句だな……。

ついさっき白田らへんから同じことを聞いた気がする。


「そのお店って幻の佐野ラーメンは食べられますか?」

「はぁ?何聞いてたの十文字君?旭川ラーメンって言ってんでしょ?佐野ラーメンなんか出るわけないじゃない」

「学園長先生?そもそもここは旭川でもなければ北海道ですらないですよ?」


真面目な美月が悠久先生に訂正している。

さっきからネットに掲載されていない情報がコロコロと出てきて、みんなどこからリサーチをしているのか気になって仕方ない。


「それを楽しみにしてたのにヨルちゃんから引っ張られてここに連れられてきたの……」

「悠久は少し散財が多いんだよ。あたしが節約も兼ねて料理作ってきたんだからそれで我慢しろよ……」


あぁ……。

近城悠久の原作プロフィールの趣味に『散財』とか書かれていたのを思い出す。

ストレス発散で財布の中身を空にすることが月1であって、ヨルに叱られているんだったな……。

未来から来たヨルの世界ではだいぶ収まっているらしいが、現在の時系列の悠久はこう見えてお嬢様育ちなのでお金のストッパーがだいぶ緩い。


「ヨルちゃんの手料理はおいしいけど……、いつだって食べられるし……」

「いつまで幻のラーメン引きずってんだよ……。案外こういうとこのラーメンは微妙なのが相場だろうが!」

「そんなことは良いから早く食べないか?いつまで揉めている?」

「ゆりかからまともな突っ込みが来るとは……」

「どういうことだ!?」


無意味にショックを受けたヨルと無意味にバカにされたゆりかがぎゃあぎゃあ争い始めた。

「バカはほっとけ」と咲夜がやけに冷静であった。

俺とタケルは現在の状況に納得する。

腹を括ったタケルは理沙の隣のはしっこの場所に座り込む。


俺はどこに座ろうか躊躇っていると絵美から「こっちこっち」と誘われる。

せっかくのお誘いだし、絵美の隣に座ることを決めると靴を脱いで彼女の隣へと座ることにする。


「お疲れ様です!秀頼様!」

「お疲れ様。美鈴もありがとう!」

「はい!」


左隣に絵美、右隣に美鈴に囲まれる。

自分の彼女とはいえ、近すぎるのも恥ずかしくやや距離を置いたところに小さくなると2人に詰められる。


「相変わらずウブな草食系男子ですね秀頼君」

「そんなガツガツしていないところが美鈴は安心出来るんですけどね!…………たまにはぐいっと来ても良いんですよ?」

「う、うん……」


恥ずかしい……。

心臓がバクバクと鳴りながらも、ぐいぐい来る2人に照れが隠せない。


「やっぱり絵美に秀頼さん取られた!」

「絵美の言葉には秀頼を操るギフトがあるに違いない」

「そんなの持ってないです!というかみんなわたしのギフトの能力知ってるじゃないですか!?」


永遠ちゃんと咲夜に責められる絵美。

むしろ俺がギフトで絵美を操れるだけにその咲夜の言葉にはぐさっと来る。

俺のギフト能力を知る円と最近知った美月が、ちょっとだけ気まずい表情になったのを見逃さなかった。

因みにもう1人、俺のギフトを知る悠久先生はまったく顔色の変化がない。

こういうブーメランの刺さる環境に慣れているのか、単に聞いていないのかはわからないがなんとなくこの時だけは頼りになる。


「あぁ。あのバリアをぶっ壊す馬鹿力のギフト……」

「『想いを力に変換する』ギフト!馬鹿力じゃないよ!」


咲夜の弄りも不本意だと否定する絵美。

そういえばそんなギフトあったなと絵美もギフト所持者だったのを思い出す。

忘れているわけではないが、原作では一応ギフトを持っていない扱いの絵美なのでギフトを持っているという意識がたまに抜け落ちる時がある。


「それよりも早く食べようぜ」とゆりかとの口喧嘩を終えたらしいヨルが仕切り出す。


「見てください明智さん!」

「え?うわっ!美味しそう!」


島咲さんの持っていたお弁当には玉子焼きやウインナーなどの王道が詰められたものであった。

それに続くようにみんながお弁当の蓋を開けていく。


「…………っ!」


なんなのだろうか、この幸福感は……!

まだ食べてすらいないのに幻のラーメン屋ではなくて彼女らと一緒で良かったという幸せなホルモンがドバドバと脳内に溢れている。


(やめろ!脳内を幸せで埋めるなマゾ豚野郎っ!)と何故か中の人はダメージを受けている。

君、そんな設定ないでしょ……。

むしろ原作で女の子と毎晩ヤリまくりで幸せを感じていたでしょうに……。

可愛い彼女たちに集中したいのに、中の人にリソースを取られるのが不本意である。


「てか、ちょっと待って……!みんな料理上手過ぎん?なんなんエミ?」

「なんでわたしに絡んでくるんですか?」

「私、そんなに上手に料理出来ないから恥ずかしいんだけど……」


詠美がみんなのお弁当を前にして、隠すように蓋を閉める。

とは言っても詠美もタケルと一緒に料理を作るギャルゲイベントがあり、料理をそもそもしないタケルを引っ張っていた。

みんなが上手なだけであり、詠美だって人並み程度は料理が出来るのだ。

そもそも飯マズ属性は原作に不在な気がする。


「えー、良いじゃん。俺、詠美のお弁当食べたい」

「ひぃ君、絶対味比べるじゃん!」

「いや、楽しむことはすれ比べなんかしないよ」

「いや、その真顔でそういうことを言えるひぃ君だからこそ恥ずかしい……」


詠美が珍しく赤くなり、どぎまぎしている。


「詠美さんも食べてもらいたいんじゃないですか?」

「ま、まぁ。そりゃあ……」

「じゃあそういうのはなしで」


三島にからかわれる詠美という珍しい光景が繰り広げられている。


「はぁ、やだやだ。なんで俺を呼んだんだよ……」

「わたくしも居心地悪いっての……」


タケルと悠久先生が彼女たちが喜ぶ空気と反比例するようにげっそりしてあたる。

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