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66、一ノ瀬楓は電話する

サーヤに注目が集まる。

そんな時に小鳥が「その常連客ってどんな人なの?」と尋ねてしまう。


「別に普通の没個性の常連客よ。程好い筋肉をしていて妾相手にも笑顔を見せたり突っ込んだりしてくれたりと面白い相手。あと、筋肉が良い」

「筋肉の項目多くね?」

「そ、それくらいちょうど良い理想の筋肉ということ!」


サーヤが赤くなりながら彼の手のひらの筋肉を思い出す。

手のひらであれなのだから腹筋はどれほどなのか。

腹筋を枕にして寝たいくらいにサーヤは心では口から唾液を垂らすほどに魅力的であった。


「妾が強くガミガミ言っても全然嫌そうにしないし、とても親しみやすい。ワガママ言っても聞いてくれるし、愚民にしては合格ラインの男よ」

「それってただのドMなんじゃ?」

「は?」


サワルナがサーヤの気になる相手が害虫を思い浮かべてしまい茶々を入れる。

顔が没個性のところと筋肉の見た目以外のところが、何故か明智秀頼と重なる相手だとサワルナは気付き、文句を垂れた。


「サーヤ先輩って男見る目無さそうだし……」

「このクソ愚民!打ち首じゃ!魔女狩りじゃ!」

「1番魔女っぽい人が何言ってんですか」

「でも、ゆり子ちゃんはちょっと千夏ちゃんみたいにMっ気がない人じゃないと相性悪いと思う」

「ねえ、ノア?私をM扱いした?」

「そんなこと言ってるけど、サワルナもMっ気がある男性じゃないと相性悪いわよ」

「えぇ!?サワルナそんなにSですか!?あ、てことは千夏先輩と相性バッチリじゃないですか!」

「だから!ナチュラルにM扱いしないでください!」

「うるさいから!もうちょっと静かに!」

「はい……」


勝手に盛り上がる5人を叱る楓。

彼女が注意をすると、シュンと全員が落ち着きを取り戻す。

周りの席も同じくらい盛り上がっているとはいえ、あまり店に迷惑を掛けるのもやめようと全員が少し声を抑える。

それからは、みんなの大学での近況報告にとどまることになる。


ただ、色々なコイバナを聞かされた楓はこの会話の中で『秀頼の声が聞きたいなぁ……』と寂しく思っていた。






─────






「もしもし?こんばんは楓さん」

『こんばんは、明智君。今なにしてる?』

「今はエアロバイク乗りながら音楽を聞きながら勉強してましたよ」

『相変わらず君はマルチタスクの天才だね』

「そうですかね?やりたいことが多いので全部やってるだけですよ」


10分前まではこれにプラスして山本とラインをしていた。

マルチタスクと言われればマルチタスクなのかもしれない。


「どうしたんですか?メッセージじゃなくて電話なんて珍しい」

『明智君の声が聞きたくなって』

「めっちゃ嬉しい!」

『明智君も私の声、聞きたかった?』

「楓さんがいない間はずっと聞きたいですよ」

『き、君ねぇ!そういうのサラッと言うのやめて!せめて溜めたり、ムード作ったら言うことでしょ!不意打ち過ぎる……』

「伝えたいことは伝えたい時に伝えないと後悔するんすよ」

『明智君らしいなぁ、もう!』


いつ俺が死んでも良いように──。

いや、遺言みたいで縁起が悪い!と慌ててこの考えは不吉だと気付く。

この展開やめよう、違う話を振ろうと慌てて違うことを口にすることにする。


「今日はなにしてました?」

『ミャックで友達と話し合いしてたよ。その話し合いをしていて明智君の声が聞きたくなったの!』

「えー?なんすかそれ?ノアさんと小鳥さんですか?」

『その2人もいたけどね。他に数名いたよ。……てか、ノアたちと一緒にゲームしてるって聞いたんだけど!』

「あぁ。本当にゲームしてるだけですよ。乙女ゲーとかギャルゲーとかオンラインゲームとか色々なゲームをリアルタイムで楽しむ会みたいなやつです。楓さん、あんまりゲームしないって聞いてたから……」

『私もやりたい……』

「じゃあやりましょうか。今度人集めて人狼ゲームしたいねって話題になったんですよ」

『人狼ゲーム?』

「あ、やったことないっすか?今度やりましょうよ。ルールは多分ノアさんが説明しますよ」


俺、多分ルール設定下手だから……。


『どういうゲームなの?』

「嘘付いたり騙したりするやつです」

『……詐欺師育成ゲーム?』

「そういうんじゃないですから!」


お互いおかしくなりくすくすと笑ってしまう。

人狼ゲームを詐欺師育成ゲームと評する楓さんのボキャブラリーがおかしいのもあるが、こういう暖かい空気がとても心地よい。


「ミャックでどんな会話したんですか?」

『女が数人集まって話すことなんて色恋沙汰に決まってるじゃん』

「あ、そうなんですね……」


色恋沙汰の話で俺の声が聞きたくなった、とかなら良いなぁとちょっとだけそんな甘えたい気持ちになる。


『なんかさ、友達に好きな男がいるんだって』

「へー」

『今までその後輩が友達の好きな男に冷たかったのに、急に優しくなったとかで狙ってるとか狙ってないとかそんな話してたの』

「面白いですね、それ!多分後輩もその男狙ってますよ」

『君はまったく事情がわからんだろ!テキトー言うな!』

「あはははは!他人の恋愛事情ほどヤジ飛ばしたくなるじゃないですか!」

『わかるわかる。ドラマ感覚になっちゃうよね』

「そうそう」


俺はラブコメマンガ感覚になっちゃうけど、楓さんがドラマで例えるならドラマで肯定する。


『やっぱり明智君と話すと楽しいなー』

「俺も楓さんと話すの楽しいですよ」

『ありがと。あ、そろそろ家に着くから切るよ』

「わかりました」

『ごめんね。家帰るとお風呂沸かしたり、夕飯作ったりと今からゴタゴタしちゃうからさ』

「いえいえ、大丈夫です。良いなー、今度楓さんのアパートに遊びに行きたいなー」

『私の部屋狭いよー?散らかってるし……』

「えー?」

『あ、じゃあそろそろ。またね、明智君』


そんな感じで短い通話を終えて、楓さんの電話が終わる。

本当は部屋で甘えたいなんて言いたかったが、部屋に押し掛けたらやる気満々みたいで引かれるだろうか?と言葉に気を付けていたことに耐えたと心でガッツポーズをした時である。


ディスコードのアプリからメッセージが入る。


「…………ノアさん?」


ノアさんと小鳥さんとの3人で使っているサーバーにメッセージが入った。


『今から小鳥ちゃん混ぜての3人で通話しよー』

『そんなに長くかからないから!』


こんな2つのメッセージを読んだ俺は『いいですよ』と送ると、音声通話の部屋へと入室するのであった。

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