64、牧原小鳥
──とある大学生のグループ。
ミャクドナルドにて。
「もう、なんの集まりなのこれ……?」
一ノ瀬楓は右隣にいる牧原小鳥に話掛けると「さあ?」と返答され、自分と同じ状況にあることが伺えた。
「千夏ちゃんたちと会ってたらたまには数人で女子会みたいな流れになって私たちが集められたんだよ」
集まった経緯を知る灰原ノアがわかりやすいように楓と小鳥に事情を説明する。
しかし、2人は色々と納得していない表情である。
「このメンバーで集まって話すこととかないんだけど……。毎日誰かしら会ってるじゃん」
「そもそもなんで集まるのミャック?なんかJKに戻った気分で恥ずかしいんだけど……」
小鳥が自分たちの客層が店と合ってない部分が気になる。
それこそ千夏の働いているスタヴァとか、ファミレスの方が話し合いに向いていると浮いている自らの姿に羞恥心があった。
「だってサワルナとサーヤが……」
「サワルナのお金がないんです……」
「妾も金をケチりたい」
「こう言ってて……」
「なんで改めてこのメンツで集まって話すことあんの!?どういう趣旨のグループなの!?」
楓が何か言いたい小鳥の代弁をする。
千夏とノアの会話からどう広がればこの6人が集まることになるのか。
この6人は確かに話すことは多いのだが、みんなが個別にちょいちょい絡むだけで大々的に集まるようなものではなかった。
それこそ楓はノアと小鳥と千夏とはよく遊びに行く中だが、佐山ゆり子と瀬川沢瑠菜とは話す中だが遊ぶ中ではないのだ。
「一応主役は楓ちゃんなんだよ」
「なんで!?真ん中に座ってるから!?」
「主役だから真ん中に座らされているんだよ」
「じゃあ千夏も主役なの?」
「いいえ?」
「えぇ……」
向かいに座る千夏がやんわり否定する。
主役が真ん中の席に座るノアの謎理論に突っ込みたくなるが、話しが進まないので飲み込むことにする。
最近の楓は、西軍の集まりもあり、人がたくさん集まるほど話しが進まないのを痛覚しているのであった。
「んで……。どったん?なんか聞きたいことあるん?」
「サワルナが千夏ちゃんの好きな人を狙っている疑惑があるんだって。だから彼氏のいる楓ちゃんに判断してもらおうとしているみたいなの」
「じゃあ3人で良くね?無駄に6人で相談する内容じゃないでしょ!?」
「いやぁ……。女としてコイバナ聞きたいし……。恋愛の参考とかしたいし……。小鳥ちゃんも彼氏欲しいって言ってたしね!」
「ね!ね!?」とノアが小鳥に同意を求めると、「まぁ、彼氏は欲しいし恋愛の参考になるなら……」と趣旨を理解した小鳥はちょっと乗り気になる。
それを聞き、小鳥の向かいに座るピンク髪のドリルにしている女性はくすっと笑いだす。
「すぐ愚民共は恋だの愛だのほざく……。くくっ、どいつもこいつも悩みが同じ過ぎてウケる……」
「1人彼氏とか要らなそうな奴混じってるけど!客商売で占いしている人が絶対ダメな発言してるけど!」
「妾はそういう毒舌キャラで通っているから問題なし」
「サーヤは毒舌というか、毒そのものだよ」
しかし、彼女は優雅にコーヒーを嗜みその突っ込みを華麗にスルーした。
その光景を見た5人が『無駄に優雅……』と心で叫んでいた。
「楓先輩の彼氏とか絶対レベル高そう!」
「あれ、サワルナ?楓の彼氏見たことない?年下なのに包容力ある素敵な男よ!」
「きゃー見たい!サワルナも楓先輩の彼氏見たい!絶対イケメンじゃん!私、この中で楓先輩が1番男を見る目があると思ってますからねっ!」
「こらこら。私の彼氏のハードルを上げるな。おだててもミャックのシェイクくらいしか出ないから」
「出てるじゃないですか!」
小鳥が煽りだし、サワルナが盛り上がる。
楓が嫌な方向への盛り上がりである。
「本当にっ!普通の彼氏だから!いや、普通じゃないけどさ……」
「私も、楓の彼氏君に立候補しちゃおうかな」
「やめて。本当にシャレにならないから。真に受けちゃうから……」
「楓先輩、めっちゃ彼氏好きじゃないですか!」
「ひゅーひゅー」
「真顔のひゅーひゅー、怖いからやめれ」
サーヤが口だけ盛り上げている空気を出すも、ただの嫌がらせだと全員が察した。
「でもぉ、楓の彼氏さんの顔見たいなー。写真とかないの?」
「あるけどやだ。絶対弄るじゃん」
「私弄らないよ」
「千夏の隣に座る2人が弄るじゃん!」
「当然……」
「サワルナたちは弄り倒しますよ!なんなら楓先輩の彼氏さんここに呼んでくださいよ」
「6人席がこのメンツで埋まっているのに呼ぶわけないでしょ。私、友達に彼氏晒すとかそういうの嫌なの」
「強情だなー」
千夏は毎回お願いしているが、楓が毎回折れないのである。
「楓ちゃんがデート中に会えると彼氏さんと会えるよ」
「タイミング合わないよ。ノアも小鳥も楓の彼氏の特徴とか教えてよ」
「親しみやすいよね。普通に私らとも遊んでくれるし」
「たまにノアと彼の3人でゲームして遊んでるもんね。一緒に乙女ゲームやり進めながら批評会してるしね」
「スマブラ強いしね」
「待って?え?彼女の私抜きの3人でゲームしてるの?」
「直接会うことはないけど、オンラインだとたまに遊んでるよ。今度悠久先生混ぜてなんかしたいねーって話してるし」
「だって楓、ゲームとかしないじゃん。彼氏君、ほどほどにゲーム語れて面白いし」
「小鳥ちゃん、楓ちゃんへのノロケとか引き出すの上手いしね」
「全然知らないんだけど……」
「まぁ、遊ぶようになったの今年入ってからだしね」
仲良くPCで秀頼がノアと小鳥と連絡を取り合ったりゲームをしているのを知らなかった楓。
「コミュ力すげぇ!」とサワルナが驚いていた。
「最近コンパとか行くんだけどさ、パッとした男がいなくてさー、相対的に楓の彼氏さんが良い男だと悟り、悔しくなってきたよ……。はっ!?私たち6人いて、彼氏持ち1人って実はモテないんか私たち……?」
「そ、そんなことは……、ないですよねノア先輩?」
「出会いがないだけだよね!サーヤもそう思うでしょ!?」
「え?逆に出会いだけあれば彼氏が出来るとでも?本当に哀れな愚民共……」
「サーヤ!その全体攻撃はやめなさい!」
彼氏いない5人組がモテないのではないか?疑惑が浮上してくるのであった。
「逆にサーヤ先輩はどんな男なら恋愛の対象になりますか?」
「バランスの良い筋肉質な男ね」
「じゃあ楓の彼氏さんぴったりじゃん」
「確かに!ゆり子ちゃんの好きそうな筋肉してるよね」
「確かに着痩せするみたいだけど、結構ずっしりあるんだよね、私の彼氏」
「楓、是非紹介して?」
「態度変わりすぎでしょ」
「あぁぁぁぁ!さわり心地が性器になるのか否か、楓の彼氏をなめ回すように触りまくりたい!」
「もう二十歳なんだから落ち着きなさいサーヤ」
ノアの言うサーヤ好みの筋肉がどんな触り心地なのか、秀頼以上なのかとムラムラしだしてしまい、全員から白い目で見られてしまう。
大学生グループの無駄な雑談はまだまだ終わりそうにない。