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54、明智秀頼の説明

「つまんなぁい!サワルナの先輩いなかった!」


ミルクたいを出ると、不本意そうな顔のサワルナさんが開口1番に口を開く。

口を開くと文句ばかり。

彼女は現代社会に相当なストレスでもあるのだろうか……。

因みに楓さんの姿もなく、俺もちょぴり残念であった……。

サワルナさんに大人の女性の見本として、楓さんを見せびらかしたかった……。

「あそこの店員さんはランダムだから……」と何故か年上であるサワルナさんの物を含めた全員分のたい焼きを買ったタケルがフォローしていた。

彼がぼそっと「最近のお小遣いの3分の1はたい焼きで減ってる……」と悲壮感を漂わせて愚痴っていた。


「じゃあ、サワルナさん。そろそろメインのイベントに行きますよ」

「心の準備をしていてくださいね瀬川さん」

「うわぁ!こっちは瀬川って呼ぶんかい!」

「え?なんの驚き?」


タケルが始めてサワルナさんを固有名詞で呼んだ瞬間であった。


「(そもそも瀬川さんってセレナとどんな関係あるんだよ?)」

「(あー、そういや言ってなかったな)」

「ほら、そこの男子2人!こそこそしない!サワルナの陰口を阻止っっっ!」

「陰口してない陰口してない」


タケルから小声で疑問をぶつけられたので答えようとしていたところに変な言い掛かりを勢い良くつけられてしまい、セレナとサワルナさんの関係を説明する企画を逃してしまった。

これこそ、きちんと説明出来ただけに変に悔しい……。

それから数分後にはセレナの出没する自然公園の地に足を付けた。


「懐かしいわね……、この公園」

「あざといかよ。急にシリアスムーブかますのやめてもらって良いすか?」

「なんか言った害虫?」

「懐かしいな……、この公園」

「なんであんたが乗っかってるのよ!?関係ないでしょ!?」


「秀頼がイキイキしてる……」とタケルが溢す。

イキイキはしてないと思うが……。


「子供の時にあっちの広場でサワルナと麗奈で遊んでたっけ」

「ん?」

「あ……」


サワルナさんの視線がタケルとセレナの会う広場に向いていたのがわかった。

だからあそこの場所にセレナが現れるのかもしれない。

アニオリの知らない設定がドンドン深掘りされていく高揚感があった。

それから自然と3人はそちらに足を向けていた。


「懐かしい……」


サワルナさんが木々に囲まれた地に優しく微笑む。

風がそれを歓迎するように肌に触れる。

そして、タケルとセレナがよく会うベンチにたどり着く。


「セレナー?いるかー?」

「やっほ!こんにちは、タケル!」


呼ばれるとひょっこりと木の影から現れる。

よくよく考えるとあまりに不自然な登場である。

打ち合わせもなく、毎回タケルが来るとそこにいるなんて偶然が何回も続くわけがないんだから。


「今日はゲストが来ているんだ」

「ゲストぉー?誰ぇー?」

「どうもゲストの明智秀頼です。久し振り」

「え?あー、うん。久し振り」


若干テンションが下がったのか、眉をひそめ目が細くなったのに気付く。

怖い顔だから苦手だと前回告げられたが、まだ治っていないようだ。


「そもそもお前ゲストじゃねーし」

「なんだと!?」

「ゲストって言ったらこっちの」

「麗奈……?」

「え?……サワルナ姉ちゃん?」


タケルが紹介しようとした時、セレナがバッチリとサワルナさん目が合った。


「え?麗奈って何!?サワルナ姉ちゃんって何!?」


タケルが姉妹2人の呟きに衝撃を受けたらしく、大声で叫び頭を抱えた。

「え?どういうこと?」と、タケルが俺に視線で助けを求めてきた。


「えぇ!?サワルナさんとセレナって姉妹だったの!?」

「いや、害虫は知ってたでしょ!わざとらしい!」


サワルナさんから突っ込まれてばしっと頭をはたかれる。

その横でセレナがあわあわとタケルに涙目になり向き合っていた。


「ちょちょちょ!?なんでタケルがサワルナ姉ちゃんと一緒なの!?」

「知らない知らない!瀬川さんと今日がほぼ初対面だから!秀頼から瀬川さん紹介されただけだから!」

「ワタシも瀬川なんですけどぉぉぉぉぉ!」

「えぇぇぇぇ!?お前セレナじゃねぇのぉぉぉぉ!?」


あっちはあっちで変な阿鼻叫喚な展開になっている。

冷静に客観的に見てみると、わけわかんなくて面白い気分になる。


「全部どういうことなのサワルナ姉ちゃん!?」

「仕組んだのは全部こいつよ」

「どうなってんだよ秀頼!?」

「あー……、まぁ……」


慌てた2人からの視線。

冷ややかに俺をじっと睨み付ける視線。

この場すべての視線が俺に集中する。

しかし、どうなっていると言われても困るなぁと俺もみんなとは違う意味で言葉を失ってしまう。

しかし、説明しなきゃという使命感に刈られて口を開く。


「なんかこうなった……」

「本当に何もかも説明がないじゃねぇかよ!?」


今日は色々と説明を求められる日だ。

そう思いながらも、何から説明しようと答えに口ごもる。

「ありのまま口にしなさいと」サワルナさんに促されて、よしと心を決める。


「まず、セレナってギフト使ってるじゃん」

「待て秀頼!セレナがギフトってなに!?急過ぎて意味不明なんだが!?」

「もうちょい前か……。実は探偵のえりなさんに頼んでだな」

「いや、誰だよ探偵のえりなさんって!?」

「え?え?えっと……、理沙にセレナの写真を撮ってと迫られた際……」

「理沙!?なんで理沙!?」

「…………」


すべての言い分がタケルに潰される。

本当にどこから説明すれば良いのか、わからなくなってきた……。


「なんかこうなった……」

「原点回帰ぃぃぃぃぃ!」


こうして、きちんと言語化する時間を設けられることになる。

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