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53、十文字タケルは大変

タケル考案の説明ゲームで、タケルに山ほど説明させるだけさせて俺は話を振るだけ振りまくりながら歩いていた。

目的地を知らないタケルを先導するように歩くと、彼にとっても見覚えのある場所にたどり着く。


「スタヴァだな……」

「うん。ここの店前で待ち合わせしてる。あ、いた!」


今日はウェイトレス姿ではなく、明るい薄めのカーディガンを羽織りデニムジーンズに身を包むカジュアルな格好のサワルナさんが不機嫌そうに立っていた。

俺に気付くとより不機嫌そうになり、くわっとした目を向ける。


「見るな!」

「あの人あの人!」

「視界に入れるな!」

「すっげぇ文句言われてっけど……」

「ほら、あの人サワルナ系のツンデレの人」

「聞いたことねーよ。だから色々と説明不足なんだって!」

「人の性格をファッションみたいに紹介すんじゃないわよ!」


タケルとサワルナさんから総突っ込みを食らう。

こういう役に俺をあてがうのは色々間違っている気がする。

こうして3人がスタヴァの店前に集まったのである。


「あ、よく見たらこの人最近入ったスタヴァのバイトの人だ」とタケルもサワルナさんに気付いたようだった。

ちなみにタケルは俺みたいにスタヴァの店員さんと会話することはほぼ皆無であるが、顔は覚えているらしい。


「まったく……。仕事で会うのも嫌なのにプライベートで害虫に会うなんて一生に1回なんだから!サワルナに感謝しないさい害虫!」

「この人、見ての通り客を害虫呼ばわりする人。サワルナさんだ」

「パワフルですね」

「いや、明智にしか害虫呼ばわりしないわよ!あと、なにその感想!?」


タケルの天然っぷりにサワルナさんも驚いていた。

逆にタケルは冷静そのものである。

曰く「こういうタイプはヨルとか上松とか谷川で慣れてるから」とサワルナさんも例外なく遠回しに変人(こういう)タイプ扱いをしたようだった。

流石ギャルゲー主人公は変な女の子を受け入れる包容力スキルが高い。

正直、なんでタケルハーレムが見たいのにそういう展開にならないのか……?

原作ファンとして、実はめっちゃ見たいタケルハーレム……。


「そんで!そっちの名前は!?」

「十文字タケルっす。明智秀頼とは幼馴染みです」

「そう……。幼馴染み……」

「なんすか?」

「いや、パワフルな幼馴染みね」

「どんな感想なんすか……」


俺に対して苦笑した評価を下す。

相変わらずサワルナさんは俺のことが苦手なようである。


「あなたは実に絵に描いたような平凡そうな顔をしていますね。平凡過ぎてラブコメ主人公の雰囲気がします」

「それ、褒められてますか?」

「サワルナは言葉が毒舌なんで褒めてます」


サワルナさんのタケル評価はあながち間違いではなかったりする。

一応、『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズには作者複数人によるコミカライズもあるのでラブコメ主人公という揶揄は当てはまっている。


「そちらは実に絵に描いたような平凡そうな悪役の顔をしていますね。平凡過ぎて三流の噛ませチンピラの雰囲気がします」

「求めてない、求めてないから」

「サワルナは言葉が毒舌なんで褒めてないです」

「知ってるよ。文脈ぐちゃぐちゃだし」


瀬川姉妹からの評判は最底辺である。

俺の評価を聞いた後だと、タケルの評価がものすごく褒められている気がする……。

和からも昔、こんな感じにボロカスな評価をされたことを思い出した……。


「なんでそんなに嫌われてるの?」

「俺が千夏さん……、スタヴァの姉ちゃんと仲が良いのが気にくわないんだって……」

「今日の説明で1番わかりやすかったよ……」


こそこそしながらタケルとサワルナさんの説明をしていると、説明ゲームのことを持ち出された。

瀬川姉妹とタケルの相性がそこそこ良さそうな気はするのはギャルゲーの主人公故なのかと勘ぐる。


「役者はこれで揃ったのよね!?さぁ、害虫!麗奈に会わせなさい!?」

「今すぐは無理ですよ!?俺、セレナ召喚とか出来ないし……」

「役に立たないわね……」

「今この3人の中で1番役立たずなのによく言えますね」

「サワルナに暴言吐いたわね……!」

「俺に対して常に暴言吐いているんだから1回くらい耐えてくださいよ」

「秀頼も遠慮ねーな……。実は仲良しなんじゃ?」

「「それはない!」」


俺とサワルナさんが同時に否定してみせる。

俺にはわかる。

こういうタイプは口だけで特に何もしない系女子だと!


「はぁ……。ほら行きますよー」


やれやれ系主人公が如くデカイため息を吐くと、仲裁に入るタケル。

俺とサワルナさんを「ここじゃスタヴァのお客さんに迷惑っすから」と言いながら無理矢理連れ出した。

それからスタヴァの店前を離れて公共の歩行者道路を3人で並びながら目的地に向かっていた。


「スタヴァの店員さんがぁ!お客さんに迷惑掛けて良いんすかぁ!?」

「はぁぁ!?今のサワルナは非番だから店員じゃないんですけどぉ!店員じゃないなら迷惑掛け放題ですが何かぁ?」

「「いや、その理屈はおかしい」」


次は俺とタケルが同時に同じ声を上げる。

流石に迷惑掛け放題はダメでしょと注意する。


「大学生にもなってぇぇぇぇぇ!常識ないんすかぁぁぁぁぁぁぁ?」

「それ、ただのモラハラなんすけどぉぉぉ?大学生にもなってとかコンプライアンス違反なんですけどぉぉぉぉぉぉ!?やっぱり害虫は虫!人間様の言葉は通じないっか!」

「出たーっ、害虫差別!人間様のサワルナ様が俺と会話しているみたいで?」

「もうやだこいつら!?一緒に歩きたくないんだけど!?」

「ええい!サワルナのターンを邪魔するな無個性顔!」

「俺の顔関係ないでしょ!?さっきラブコメ主人公顔って言ったじゃないっすか!?」


タケルも大乱闘スマッシュブラザーズに巻き込まれてしまい、小学生染みた口論がスタートしてしまう。

その時、ちょうど目の前に見たことある顔が視界に入る。


「ねぇ、ママ!あれ何やってんの!?」

「しっ!見てはいけませんユカちゃん!あれは喧嘩ップルというの!無個性顔みたいに邪魔しちゃいけません!」

「じゃあママとパパも喧嘩ップル?」

「嫌いなだけぇぇぇぇぇっ!」


ハッ……!

あれはこの街にはぐれメ●ル並みの頻度で出現する子供の皮を被った魔王のユカちゃんとそのお母さん……!

俺は遭遇する度にメンタルがバリバリ破壊されるあのキッズである。

しまった、逃げろ!

そう心で警報が鳴った時であった。


「サワルナを目でサワルナっ!」

「ママ怖いよぉぉぉ!」

「山姥ぁぁぁぁ!」


サワルナさんは眼力と言葉で薙ぎ払っていた……。

いやぁ……、つよぉ……。


「この害虫とカップルとか嫌悪感しかないわ……。ありえねー、どうせなら千夏先輩とサワルナのカップリングにしなさいよ」

「あの人、めっちゃ大人げないな秀頼……」

「しっ、見てはいけません」


サワルナさん、お前がナンバーワンだ……。

ユカちゃんとエンカウントというハプニングに見舞われたトラブルがあったが、それからは3人が自重しながら静かに歩いていくとタケル行きつけのたい焼き屋が見えてきた。


「あっ!大学の先輩がバイトしてるたい焼きだ!」


サワルナさんがそのたい焼き屋のミルクたいを見てそんなことを呟いた。

そう言われると俺の彼女がここで働いているという自慢をしたくなってきてしまう。

言おうか言うまいかとウズウズしていたが、やっぱりサワルナさんに自慢したくなりここでバイトしている1人と付き合っていることをカミングアウトしようと決める。


「実は俺の──」

「サワルナはお前の人間関係に興味なんかねぇよ」

「あぁん?」

「落ち着け秀頼!目が怖い!目が怖い!」

「兄さんどいて!そいつ殺せない」

「理沙っぽい真似してもダメ!……ちょっと似てて笑いそうになった」

「どうせ害虫の知り合いとか陰キャメガネとかでしょ?マジどうでも良いぃー」


サワルナさんはマウントでも取るかのようにドヤ顔であった。

わからせたいあの笑顔。

必死にタケルから抑えられてしまい、この怒りはどこにもぶつけることが出来なかった。

「とりあえず俺が全員ぶん奢るんでたい焼き屋行きましょう!」とタケルが俺とサワルナさんのご機嫌取りをしてなんとかこの場は収まったのである。

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