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50、細川星子のカミングアウト

天使ちゃん可愛すぎ問題に直面し、このままお持ち帰りしようとしているとまた1人隣に誰か座り込む。


「よぉ、秀頼」

「よ、よぉ?」


さっきから知らない女性が馴れ馴れしく声を掛けてくる謎現象の事案に直面している。

どういうアレなんだこれ?

俺ってそんなにモテるん?となんか都合の良い妄想と思い込みをしてしまい、恥ずかしくなる。

黒髪の無口そうな女子生徒が、じーっとこっちを見ている。


「な、なにか?」

「この店はウチの親父の店でな。マスターが父親だ」

「え?マスターの娘?」

「マスターの娘だ」

「自分の父親をマスターって呼ぶのはどうなん?」

「お前!今さらそれに突っ込むのか!?」

「え?」


いや、変じゃない?

そんな言葉を口にしそうになる。

彼女が「マスター!」と声を掛けると「はいはい」と軽くあしらわれ手を振られていた。


「へぇ、あのマスターの娘かぁ!でもあんまりマスターに似てない気が……」

「ウチは母親似だからな。性格はマスター似だ」

「性格がマスターなんだ!やっぱりマスターのコーヒー好きなの?」

「毎日飲むくらいには好きだぞ」

「へぇ!マスターの娘ってことはコーヒーも淹れる?」

「余裕だな」

「マスターから教わって……」

「マスターはもう良いだろ!さっきからマスター、マスターって!マスターボール以外使いたくないってか!」

「えぇ……」


突然なんかの地雷を踏んでしまったらしく、ぷりぷりと怒りながら引っ込んでしまった。

なんだったんだろう……。


「あれはどういう意図だったのかな?」

「明智先輩に構って欲しかったんでしょ」


天使ちゃんは逆に俺が他の子を構う姿が見たいのか?

全然わからない……。






─────






「もうダメだ!あれは秀頼であり、秀頼じゃない!」

「記憶ないから仕方ないでしょ」


咲夜の怒りに対し、永遠が冷静に突っ込む。

既にメンバーのほとんどがこの空気無理でしょ、という感じになっている。


「明智君のことをよく知っている人じゃないと難しいんじゃないですかね?」

「ウチもよく秀頼のことを知ってる!理沙だってそうだろ!」

「まぁ、そうなんですけど」


発言者である理沙も秀頼のことはよくわかっている。

兄であるタケルからも秀頼の話題を提供されるので、彼女たちには見せないがタケルに晒す秀頼の姿を知っている唯一の相手ともいえる。


「じゃあこうなったら真打ち行くしかないんじゃないですか」

「ふふん。そうよね、明智君のことなら誰より任せられるのがこの私」


円がやれやれと胸に手を置き、自信満々に立ち上がる。


「星子ちゃん、行ってみてください!」

「私ですか?」


理沙が星子に振る。


「あれ!?私は!?」

「誰も姉者に期待なんかしてないですよ」

「ウチも姉者に期待してないぞ」

「うっさいわね、あんたら!」


和と咲夜にニヤニヤと笑われる円は、恥ずかしくなり2人の顔が見れなかった。

そのまま円は原作知識で秀頼との仲が古い詠美と、仲が1番長い絵美をチラッと見る。


「…………」

「…………」


2人は自信があるのかないのか複雑そうな顔をしていて名乗り出る勇気が無いようであった。

いつもは自信満々な性格なのに、こういう場面では凝縮してしまうところに2人の血筋が見えた。


「本当に私が行って良いんですか絵美先輩?詠美先輩?」

「い、行って良いんじゃない?ねぇ、詠美ちゃん?」

「そうそう!ひぃ君をあっと驚かせてきなさい!」

「はぁ……」


本当は自分が行きたいんだろうけど傷付きたくはない。

そんな心境が2人から見て取れたのを誰も突っ込まないことにしていた。





─────






「こんにちはです、あーちゃん」

「こんにちは、星子ちゃん」

「ん?天使ちゃんの知り合い?」


茶髪の女の子が俺の隣の席に座ったかと思えば、天使ちゃんを『あーちゃん』と可愛らしいアダ名で呼びはじめた。

何、この子……!

天使ちゃんの友達かな?

めっちゃ可愛いじゃん!


最初こそ目付きが不機嫌そうに見えて身構えたこともあり、好感度は低かったが多分そういう顔付きなんだと思う。

俺も結構つり目で、目付き悪いし……。

そんな仲間だと思うと、個人的な親近感が沸いてきた。


「はい!同じクラスなんです!細川星子ちゃんです!」

「そっか!よろしくね!俺、明智秀頼って名前なんだ。君の1個上なんだよ」

「よろしくお願いいたしますね明智先輩」


ペコリとお辞儀をしてみせる星子ちゃん。

小動物のように可愛らしく、庇護欲をくすぐられる。

変な気持ちにさせられる。


「実は明智先輩にお話があるんです」

「へぇ、どうしたの?」


彼女の友達の悩み相談を受ける形になる。

初対面である男の俺にどんなお話があるのだろうか?

気になる男子がいるとか、まだクラスに馴染めないとか、勉強で教えて欲しいことがあるとかそんな感じのものだろう。

そういう悩み相談はタケルや山本に鍛えられたので得意である。


「私、実は生き別れのお兄さんがいるんです……」

「そ、そうなんだ……」


期待していた話の100倍重いものであった……。

もっと普通の悩みを聞かされるものだとばかり……。


「名字が明智で、名前が秀頼って名前の1つ上の先輩なんですよね」

「え?……は?」

「明智先輩は実は私のお兄ちゃんなんです」

「お兄ちゃん……?」


嘘だぁ、嘘だぁ、嘘だぁ……。

そんな疑問の言葉と共に、ドキドキとした変なときめきを感じる。

なんだこれ、胸が苦しい……。

確かによく見ると、どことなく顔の雰囲気が明智秀頼に似ている気がする。

髪質もどことなく、俺のものに近い気がする。


「7月7日生まれのB型ですよね?」

「え?本物?」

「名字こそ違いますがお兄ちゃんの妹ですよ」

「っ!?」


生まれてこのかた弟か妹がいたらめちゃめちゃ可愛がりたい欲に刈られた俺であったがこんな身近に本物の妹がいたなんて……!

可愛がって良いのか!?


「俺、彼女もいて妹もいて……。こんな幸せで良いのか……?」

「欲がないねぇ、君も……」

「マスター、本当に彼女って俺の妹なんですか!?」

「マジだよ。というか本当に君そっくりだよ」


おばさんの親戚であるマスターがそういうなら間違いないのであろう。

可愛いよぉ!

星子ちゃん、可愛い!


「俺の妹になってください!」

「はい!」

「1億点優勝」

「というかなんですかこれ!?」

「え?」


女子たちの集団から急に気に食わなそうにする声が響く。


「こんなのズルです!チートですよ!秀頼さん、あなたのエイエンちゃんです!」

「秀頼様!美鈴のこと忘れてても良いので付き合ってください!」

「秀頼君と長く付き合いあるのはわたしですからね!」

「なになに?なんなの?え?」


もうちょい真面目に妹である星子ちゃんとお話したかったのに10人以上の女子から一気に責められて困惑する。

どういうこと?と疑問がピークになった時だった。


「記憶を戻しますよ……」と呟いた天使ちゃんが俺の手に触れたのであった。

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