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46、一ノ瀬楓の提案

全員の興味が五月雨茜のギフトに集中する中、楓に近付く1人の少女が現れる。


「その前に好感度調整がどのようなものなのか私も興味あります!」

「良いねー、碧ちゃん!ノリが良いよ!」

「はい!ありがとうございます!」


おそらく西軍の中で1番発言が少ない碧までもが気になると食い付いてきた。

楓以外にもそのギフトに惹かれる者は複数人いるようだった。

「確かに。我も見てみたい!試しになんかやってみてくれ!」とゆりかが茜に提案してみる。


「わかりました!では、谷川先輩!谷川先輩の好きな食べ物はなんですか?」

「ウチの好きな食べ物はマスターの淹れるコーヒーでな。ウチは秀頼と同じくエスプレッソが好きだ」

「それ好きな食べ物じゃなくない?好きな飲み物じゃん!」

「お?なんだ円?いつもウチにからかわれるから復讐のマウントしに来たか?」

「んな意図ないわよ。なんで毎回私には突っ掛かるのよ」

「円に突っ掛かるのが生きがいだから」

「落とし穴に落ちて3日くらい放置されれば良いのに」

「その言い合い、後でしてください」


後輩の茜に指摘され、2人はシュンと小さくなる。

「谷川先輩の好きな食べ物はコーヒーなんですね」と言いながら、彼女は咲夜の肌に手を付ける。


「ちょうどエスプレッソが近くにあって都合が良いですね。では、これから谷川先輩をコーヒー嫌いにさせます」

「おいおい、五月雨よ?ウチはな生まれた瞬間からマスターのコーヒー飲んで育っているんだ。コーヒー嫌いになんかなるわけないだろ?」

「それが嘘じゃん!もうフラグじゃん!」


絵美がこの場の全員が突っ込みたくなる箇所を代弁する。

これには男性1人でずっと黙っていたマスターも苦笑いであった。


「では、谷川先輩のコーヒーに対する好感度をかなり下げます」

「ほう」

「今回は記憶を弄りませんからね」


そう言って数秒間、咲夜の肌を触り続ける。

そのままギフトを掛け終わったことを告げるも咲夜は「なにも変化はないな……」とガッカリした声を漏らす。


「そうですか。では、谷川先輩が嫌いな食べ物はなんですか?」

「ウチはマスターが淹れたコーヒーが嫌いだ」

「いや、言い分変わってるけど!ガッツリ変わってるじゃねーか!」


ヨルが咲夜の胸を軽くど突く。

ギフトにかかっているのか、咲夜の嘘なのか。

態度が変わらないので全員がどっちなのだと疑いながら緊張が走る。


「では、谷川先輩。生まれた瞬間から飲んでいたコーヒーを飲んでみてください」

「うむ」


ずずずずず……、と音をたてながらコーヒーをすすっていく。

すると、「うっ……!」という明らかにヤバめなうめき声がする。

苦しそうにしながら無言で美月が飲んでいたメロンソーダをコップから奪い去り全部飲み干した。


「あっ!わたくしのメロンソーダ!?」

「また頼んでやるからよ」


店員もしているヨルが優しく美月の肩を叩いて告げて、厨房の方へと消えていく。

そもそもヨルはギフトの効果を疑っていなかったので、結果は火を見るより明らかだとその後のやり取りに興味がなかった。

一方咲夜はコップをドンと机に力強く叩き付けると青くなりながらぼそっと呟く。


「吐き気を催す邪悪だ……」

「使い方違うから」


先ほどと同じように円から軽口を叩かれる。

「以上、自分のギフトでした」と先輩たちに頭を下げて咲夜の肌を触り、ギフトを解除し始めた。

その様子を見ていた詠美が「えー!?すごぉ!」と新しいオモチャでも見付けたような黄色い声を上げた。


「うっ……。ウチは今頭がブルーだ……。大好きなマスターのコーヒーを飲んで癒されよう……」

「大丈夫なんですか咲夜さん?コーヒーで傷付き、コーヒーで癒されるのがもう不気味なんですけど……」


理沙から心配されながらも、咲夜はコーヒーを飲むと回復した。

「それ、本当に回復してます?」と美鈴からも心配されていた。


「流石ギフトアカデミー……。こんなことが日常的に起きているなんて……」

「起きてないっす」


楓が戦々恐々としていたが、和がそれを真顔で否定する。


「それで、楓さんがやりたいゲームとはなんですか?」

「うん!私がやりたいのは彼氏に嫌われてみたいゲーム!」


『……は?』と、その場にいた全員が理解不能とばかりの声を上げたが、「わかってないわね!」と楓はその意見を取り下げなかった。


「実際に私も明智君に嫌われたくないよ?でも、たまには彼氏に嫌われてみたくない?」

「あー、まぁ、なんとなく」


話を振られた遥香はやんわりと肯定する。

その間にヨルは戻り、美月に新しいメロンソーダの入ったコップを手渡していた。


「つまるところ、秀頼君に罵倒されてみたい……?」

正解(エサクタ)!そういうこと!」

「でも、確かに秀頼さんから罵られてみたいかも……」

「お兄ちゃんから冷たくされるのを考えただけで胸がきゅっと締め付けられますね!でも、なんか試してみたい!」

「秀頼様の罵倒……。あぁ、良い!」


絵美、永遠、星子、美鈴がうっとりしながら共感する。

干渉しないマスターがただ1人(そもそも秀頼君って嫌いな人を罵倒する性格なのか?)と疑問が沸いたが口にはしなかった。


「でも、茜ちゃんのギフトで擬似的に明智君に嫌われる!このパンドラの匣を私は開けたいと思う!」


楓の力説に全員が頷く。

西軍の意思が1つにまとまる。

ただ、1人以外……。


「え?自分、また明智先輩の好感度弄るんですか?恐れ多いのですが……」

「じゃあゴミクズ先輩に承諾もらえば良いじゃん。黙って好感度を調整するなら後ろめたいのであって許可をもらえば合法だよ」


和の悪知恵も働く。

こうして、全員が一丸となり動きだす。

理沙が電話することになり、秀頼へと連絡をすることになる。

3コール後、何も知らない彼は電話に出る。


『もしもし?どうしたの理沙?』

「サンクチュアリに来てください!今すぐ!」

『え?今?』

「今、どこいるんですか?」

『スタヴァからの帰り道だよ。まぁ、寄るよ』


彼はすでにえりなと別れ帰宅している途中だったのだ。

タケルの尾行を撒いておき、理沙の電話で場所を知れるならタケルの尾行はとんだ無駄骨だったと気付くのはこの場には誰もいなかった。

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