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45、佐々木絵美は許せない

「まさか秀頼君がこの街から逃げ出したい欲があったなんて……」


西軍の総会は色々なやり取りを経て、秀頼報告会が始まっていた。

全員が各々の話を聞き終わり、暗い顔を落としていた。


(まぁ、逃げ出したくなるのもわかるけどね……。明智君、そもそも死にたくない欲で動いているだけだし……)


唯一、彼が囚われている暗黒の結末を知っている円はそのことに関しての驚きは低かった。

そもそも付き合う前のお互いが転生者と知ったばかりの頃は『明智秀頼やめたい』『全部投げ出して逃げだしたい』『もう1回死んだら今度はちゃんとしたギャルゲーの主人公に生まれ変われるのか』などなど彼は苦悩をよく彼女に漏らしていた。

最近こそ津軽円が来栖由美の生まれ変わりと知った秀頼はそういったネガティブな面を溢さなくはなったが、それを内に抱え込むようになったのは想像に難しくない。


(死にたくない欲で女垂らし過ぎじゃない……?)


彼の自分第一の考え方の割りに、結果がどうしてこうなったのかは円もよくわからない。

考えに対して、彼の行動は結果的にクリティカルを出すなんかよくわからない方向性に行くのだ。


「それにしても、私は秀頼さんに告白したっていうその1年生の女子が気になりますね……」


宮村永遠は円が提供した、綾瀬からの提供された話に食い付いていた。

「名前がわからないとな……」と、ゆりかも苦い顔をして永遠に同調する。


「そういえばなんか1組の女子で不穏な噂流れませんでした?男を手玉に取って好き勝手したり恐喝していたのが流出したとかなんとか……」

「自分も聞きましたねそれ……。江波さん、でしたっけ?」

「なんか姉者の話に登場した女子の特徴がその江波と一致してる気がする……」


1年組である星子、茜、和がその正体へと至りつつあった。


「江波明日香ちゃんのこと?」

「遥香先輩知ってるんですか?」

「中学の後輩だよー。昔からちやほやされるのが好きな子だけど、彼女がどうしたの?」

「昨日、1組で相当嫌われたらしいです……」


「クラス違うし、よく知りませんけどそんな噂を聞きました」と星子から説明される。


「でも確かに明智さんに告白した人の特徴に明日香ちゃんが当てはまるかも……」


灰桜色に染まったハーフアップの髪型と童顔で男に媚びる感じ……。

綾瀬翔子の特徴にハマっているかもと、遥香も思い付く。

因みに、スタヴァで秀頼のことを囁かれた話を聞いた際に明日香の口から出た『ハル先輩』とは三島遥香のことであるので当然彼女が知らないはずがない。


「どんな人なんですか彼女?」

「可愛い子だよ……?」

「遥香、目が泳いでますよ?」

「まぁ、うん。同性受けは悪く、男に好かれやすい子です……。一応、ボクとそこそこ仲が良い子なので彼女の悪いことを引き出そうとはしないでくださいね……」


「友達の陰口みたいなことはしたくないので……」と察して欲しいというオーラを見せる。

突っ込んだ永遠であったが、彼女の意見を尊重し遥香のイメージだけの想像に留める。


「ねぇ、ハルカ?じゃあ、彼女とどんな会話してるわけ?」

「ふ、普通ですよ?よくボクに対して『ピュアで可愛い』って言ってくれますし……」


彼女が高校に入学後も遥香は10回ほど会話したことを詠美に告げる。


「あのですね遥香先輩……。どんな人も舐め腐っている私が言うのもなんですが多分江波は遥香先輩を舐めてますよ?ピュアとか面向かって言うのは皮肉っす」

「本当に和さんが言うのもなんですがの助言ですね……」

「人に悪態付く人間には、相手の放つ悪態にも敏感っす!」


理沙の指摘にふんす!と鼻息荒くして誇りだす和。

「なんだかなー……」と自分の妹の言い分に円もこいつおかしいと強く感じ取る。


「でも、その女。要注意だな……。明智に報復とかしてきそうだ……」とヨルが不機嫌そうに呟くと「大丈夫だと思うっすよ」と和が口を挟む。


「言ったっしょ?クラスでは嫌われまくってるって。そんで、そこからかなりしおらしくなっちまったらしいっす。男に媚びるのが得意でも今じゃ嫌悪感しか向けられないらしく媚びれないんすよ」

「なんか陰険だね、1年生って……。そういうのやだなー……」


絵美がその江波明日香に同情すると、ちょっと前まで人間関係で傷を負っていた美鈴と碧が強く頷く。


「確かに私たちの学年は陰険な感じしますね……」

「秀頼先輩がいるから2年生はマイルドに感じるだけでこういうのが普通なんすよ絵美先輩。大体、秀頼先輩に色目使ってちやほやされようとした女子生徒庇うなんてらしくないっすよ?」

「絵美の変な正義感出たな」

「やってんねー、エミ!」

「やってんなー」

「なんでわたしだけそんなに言われないといけないの……?」


和、咲夜、詠美、ゆりかと4人が一気に絵美を弄りにまわる。

詠美から「うりうり」と言われながら栗色のツインテールをくるくると指に絡ませられてまわされる。


「ただ、変な夢見るから許せないだけ」

「変な夢ですの?」

「なんでもない!」


美鈴からも興味を向けられるが、ブンブンと首を振って回答を拒否する。

定期的に絵美は自分が夢の中で誰かに酷いことをする己を見る。

その己を許せなくて、そういった陰険な行動が嫌いなのである。


「そんな高校の話されても、私わかんない!違う話してよ!」


ギフトアカデミーの卒業生ですらない大学2年生の楓はつまらなさそうにこの話を打ち切る。

「私もその生徒知らないですし、みんなが混ざれる話をしましょうか!」と理沙が賛同してくる。


「ところで、茜ちゃんだっけ?んー?」

「な、なんですか?」


楓が茜の顔を見ながら呼びつける。

珍しい両目が違う色であるオッドアイに感心していたが、それよりも興味を引くことがあった。


「好感度を調整するギフトとかで明智君の記憶を破壊しちゃったとか?」

「う……。そんなこともありましたね……」


おおむねの話はみんなから聞かされていて、楓も茜に会ってみたいと思っていたことを口に出して説明をする。


「これって好感度調整すると記憶を忘れさせるの?」

「こないだまでは記憶を忘れさせることは出来なかったけど、明智先輩相手に記憶を失わせたことが引き金なのか最近は好感度調整によって矛盾する記憶を任意で消せるように進化したみたいです」

「え……、こわっ」


美月が茜の何気ない一言に恐怖する。

まさかのギフト進化に茜自身が驚いているのであった。


「なるほど、なるほど!ねぇ、じゃあそのギフト使って私やりたいことあるんだよねー」

「そうなんですか?」

「ちょっとしたゲームだよ」


楓が提案するゲームとはなんなのだろうか?

西軍全員の視線が2人に集まっているのであった。


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