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37、上松えりなからの連絡

「なんだって……!?」


五月雨との勉強会から数日が経ち、いつものように親友たちとの日常を過ごしながらだらっとしていた昼休み。

昼休みのはじめにスマホの画面を起動し、通知を確認すると緑のランプが光りだしてタップしていくと待ち望んだ通知が来ていた。


上松えりな

『ご主人様!調査が終わりました!お互いの予定が合う日に直接結果をお渡ししたいので連絡待ってます!』

『あなたの奴隷探偵より愛を込めて』


「…………」


ところどころ文章がおかしい気がしたが、彼女の方言ということにしておこうと思い目を瞑る。

一瞬、その方言にぞくっとした鳥肌が立ったが見ない振りを決め込む。


「つまりセレナの調査が終わったということか……」


俺から20万円を受けとるつもりだった探偵の実力、この目に焼き付けよう。

こういう大事な出来事は文章よりもリアルタイムに通話するに限る。

昼飯であるあんパンをペロッと平らげて廊下に出ていく。


「どこか静かに電話出来そうな場所は……」


ギフトアカデミーは人が多くて、実は1人になれる空間がない。

本当はこういう時こそ部室を使いたいが、8割型概念さんが居座っているので極力使いたくない。

彼女さえいなければ!と、毎度ながら休憩時間になるとあそこを溜まり場にしている彼女を鬱陶しくなる。


「んー……。あ、そうだ!」


めちゃくちゃ人が居ない場所を思い付く。


「学園長室ならめっちゃ人いないじゃん!」


悠久先生がいる可能性があるが、電話の時だけ職員室にいてもらえば良い。

お願いするとまた変な借りが増えるが、こないだのサーキュレーターやエアコン清掃をダシにすれば付け入る隙はあるだろう。

最悪、週1で悠久先生に行くのをやめる脅しだって可能だろう。

もちろん、2つ返事のOKが1番の理想ではあるが。

ポケットにスマホを仕舞い込み、学園長室に直行するように足を動かして数分経った時だった。


『センパァイ』という聞き覚えのない女性の猫なで声が近くから聞こえてきた。

どこか近くで部活の先輩後輩でもいるのかと気にも止めないまま、すぐそこにある学園長室に向かっていた時だった。

また『センパァイ』と、先ほどよりも近い距離で女子生徒のものらしき声がした。


「もう!呼んでるじゃないですか!センパァイ!」

「うわっ!?え?え?俺?」

「センパァイはセンパァイしかいないじゃないですか!明智センパァイ、ですよね?」

「す、すぐそこに同学年も先輩もまわりにいるからそっちかと……。明智先輩かと聞かれたら多分俺が明智先輩なんだろうけど……」

「でもでも!アタシの近くにいたのはセンパァイだけじゃないですか!名字なしで気付いてくださいよ!」

「はぁ……」


見たことはあるが、初対面の女子の可愛らしい後輩から話しかけられて足が止まる。

上履きやブレザーのリボンの色を確認すると、確かに星子たちの学年のものであり後輩のようだ。


「きゃああ!間近に見るとセンパァイ格好良い!」

「はぁ……」


知らない男子後輩に馴れ馴れしく絡まれるとウェーイ系で乗り切るが、知らない女子後輩にここまで馴れ馴れしくされるとどんな反応にすれば良いのか判断に迷う。

アヤ氏、助けて……。

知らない後輩が絡んできた……。


「アタシ、胸がドキドキしてます!」

「え?なに?どうしたの?」

「いえいえ!センパァイが視界に入ったからです!」

「困った……。同じ言語のはずなのに話が通じていない……」


明るいながらも薄暗い赤……、灰桜色に染まったにハーフアップの髪型にリボンを付けていた童顔な少女は媚びるような雰囲気を漂わせている。

どことなくただ者じゃないように思える。

絵美や円が近くにいたならば『無視しましょう』と提案するのが頭に浮かぶ。

むしろ、俺1人ですら無視してやりたい気分になるのも久し振りである。


「さぁ!センパァイ!自己紹介してください!」

「え?自己紹介?あ、明智です。秀頼です。よろしく……」

「明智センパァイっていうんですね!秀頼なんて素敵な名前じゃないですか!」

「さっき明智って呼んでなかった?知ってたよね?知ってませんでした?」

「さぁ、次はセンパァイのターンです!」

「ターンって……。自己紹介のことか?」

「はい!」


しれっとシカトされたんだが……。

彼女の顔は良いのだが、いかんせんそんな気分でもないことも相まって彼女のテンションに付いていけない……。

とりあえず彼女の言葉を訳すと『自己紹介すっからてめえから聞けよゴミ』ということらしい。

苦い胃液でも吐き出しそうな気分になりながら、「あーっと」と口に出した。


「君のなま…………!あ、思い出した!江波明日香(えなみあすか)さん、だっけ?」

「え!?そうです!そうです!わぁ、アタシ感激です!どうして名前知っているんですか!?」

「それは……。あー……」


こないだ悠久先生のパソコンでこの学校の女子生徒の顔と名前を吟味していたから覚えてますなんて言えるわけない。

機密情報だし、女子の名前を覚えてしまっている辺りが非常に気持ち悪いだろう。

因みに全員の名前を覚えているわけではなく、付き合っていないが好みな雰囲気の子トップ50の中で彼女が15位前後だっただけである。

悠久先生と一緒に無駄話をしまくりながらパソコン操作をしていた時に見た1年1組の女子出席番号5番だった子である。

彼女と『はいはい。というかギャルっぽくないこの子?』『オタクに優しい女子だと俺の心は温まる』こんなやり取りをしていたと記憶している。


「にゅ、入学式の時に素敵な名前だなって記憶しているよ。明日香さんって響きが良いもんね」


とりあえずありきたりな褒め方に務める。

これなら無理なく、彼女の名前を知っていてもおかしくないだろう。


「えー!?きゃあ!嬉しいです明智センパァイ!」

「あ、どうも……」


印象に残ったのが嬉しいらしく、こちらとしては心が痛い。

入学式なんてヒロインか、星子と和しか意識してなかったし……。

1年1組なんて知り合い0だし、意識すらしてなかった……。


「ふふっ!やっぱりアタシはドラマのヒロインなんです!入学式に憧れの明智センパァイの印象に残ってトーゼンですよね!」

「ど、ど、ドラマのヒロイン!?」

「そ!アタシはヒロインなんですよ!」

「……!」


ま、まさかこいつ……!?













新しい転生者か……?


『悲しみの連鎖を裁ち切り』にドラマ版があったなんて知らなかったぜ……。

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