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36、普通のJKの会話

「ほら!アタシって可愛いじゃん!この世界がドラマの世界なら絶対ヒロイン役に充てられるくらいでしょ?世の中モブ男子がさぁヒロインにアタックして振り向くわけないっての……。あー、うざぁ……。アタシと釣り合うかまず鏡見ろって感じっしょ?いるよねー、昔のジャパン人の神風トッコーの血筋ってやつ?」

「相変わらず自信家だねぇ。そんな風に男の人を雑に扱うといつか刺されちゃうよ?」

「大丈夫よ!ヒロインはね、刺されないの!ヒロインはね、死なないの!ヒロインはね、守られてるの!」

「確かにそうだね!」


スタヴァで優雅に時間を過ごすJK。

その空間は2人でごくごくありふれた学生の青春が繰り広げられていた。


そんな中、レジの方では「いらっしゃいませー」というスタヴァの姉ちゃんの声が響いている。

「千夏先輩!チョコレートケーキ1つ!」と彼女の後輩であるサワルナもバタバタしていた。


他にもOL4人組で上司の悪口を言い合ったり、メガネの男性がPCを充電しながら黙々とタイピングに指を走らせる。

どこぞの喫茶店よりもたくさんの人が集まるチェーン店。

そんなどこにでもある日常がたくさん集まっていたカフェにて、ギフトアカデミーのブレザーに身を包んだ2人の会話は誰も気に止めるものですらなかった。


「…………」


そして、自信過剰な女子生徒の発言に対して連れの女は(まぁ、病気で死ぬとか普通に死ぬヒロインとか珍しくないけど……)と冷静に突っ込みながら抹茶ラテを紙ストローで吸っていた。


「それに、こないだ付き合ってた3年生のバスケ部の横山先輩だっけ?あの人は?」

「あー、ないない。つーか電話しながら炭酸飲んでゲェェってしててさー、ないわー。アレ萎えるわー……。ヤル前どころかキスしないのも正解だったー」

「色気がない先輩だね……」


(また別れたのね、この人……。もう飽きたわよ)と、話の聞き役になった彼女はもう何回も見た光景に内心うんざりする。


(こんなに男をとっかえひっかえするような顔しか取り柄のない女なんかドラマだとヒロインの当て馬にしかならないんだよなぁー)


自称ヒロインの女に突っ込みたいのを我慢してニッコリと微笑む。


(なんて返すかなー……。はぁ、ダル……)


聞き役の女はいつもどんな返しをしていたのかを思い出す。

・次だよ、次!次がんばろ!

・そんな男捨てて正解!男なんかと付き合うのやめたら?

・先輩じゃなくて同い年で探したら?良い男いるかもじゃない?

・もういっそ成人男性を恋愛対象にした方が合ってるよ!


そんな感じの相づちをこれまで10回は言っただろうか。

聞き役の女は心でため息を吐きながら、帰りたくなる。


前回の相談ではぶちギレて『うざ……。どうでも良いからもう話しかけてこないで』と突っぱねたんだったと、聞き役は回想をしていた。


「てかさー、なんであんなに3年の男子女子パッとしないの?無し寄りの無しって感じ」

「あはは……。相変わらずズバズバだなぁ明日香ちゃんは……」

「ハル先輩の学年である2年生は3年より顔面偏差値高いって噂あるんだけどどうなん?」

「それは知らんけど……。そもそもハル先輩って誰?」

「中学時代のバレー部の先輩。そういや、あんたは知らんかー」


明日香と呼ばれた彼女はあははと笑う。

聞き役の彼女は、知らない名前の先輩が出て驚きながらも一緒に釣られながら笑う。

面白くはないが、周りに合わせるような無理した笑みであった。


「ハル先輩はピュアピュアなんだよ」

「ふーん」


機嫌が悪かったら『明日香ちゃんとは真逆だね』と、溢してしまいそうだったと彼女は頷くだけ頷いた。

聞き役の彼女は、意味もなくダラダラとスタヴァで雑談している時間をも惜しみながら、早く帰りたいという気持ちに刈られており、テーブルの下にある彼女の足は貧乏ゆすりをしながら世話しなく動いていた。


「あ、そうだ」


そんな聞き役になっていた彼女は悪魔的に思い付く。

早く帰りたいし、自分の邪魔なハードルを潰せるのではないかと妙案を思い付く。


「どったん?」

「明日香ちゃんが求める彼氏の条件ってなんだっけ?また聞きたいと思って」

「やっぱり年上イケメンっしょ。包容力があって、後は身体と身体の相性は大事よね!後はモテる男子を彼女になって、アタシの価値を上げてくれるとバリ最強!バカ男子とモブ男子は却下だねー」

「そっかそっか」


『求める彼氏の条件を聞いているのに、求めない彼氏の条件まで自らベタベタ語るのはバカなんだよ?』

聞き役に黒い感情が沸き上がるも、ぐっと堪える。

明日香はクラスの中でも女王様的に振る舞い、男子女子にも圧倒的に嫌われている。

顔だけ良くても、その性格に幻滅されているのに彼女は気付いていない。

でも、なんやかんや面白くて彼女はそんな明日香を嫌っているわけではなかった。

苛ついたりムカつくだけの精神的に嫌なところがあるだけで、自分には害がないからだ。

違うクラスに所属しているし、八つ当たりなどの対象にされることもないので仲良くしていた。


「そんな相手、いるの凛?」

「いるいる。2年の先輩にさ、顔が良くてめっちゃモテる先輩がいるんだ!」

「そうなん?」

「そうそう。明智先輩って言ったっけ?凄く明日香ちゃんの好みに当てはまると思うよ!」


凛と呼ばれた少女は『性格も頭も終わってるから絶対自分はごめんだけど』と脳内で拒否反応を示す。


「あー、なんか聞いたことある。男子がたまに名前出してるな……。去年決闘したとか聞いてあって野蛮なイメージあるんだけども……。大丈夫なん?」

「さ、さぁ?どうだろう?」


聞き役は焦りながら、野蛮なんだよなぁと内心ヒヤヒヤしてきた。


「でも、私の隣のクラスで『頼んだらヤらせてくれそうな女子ランキング1位』のビッチで噂な津軽和さんが付きまとっている!なんて話知ってるよ?」

「へぇ……。モテるのかその先輩……。凛、写真ある?」

「あるある!ほら!」


そう言うと、凛は同じ学年である綾瀬翔子と明智秀頼が仲良く並び雑談しながら1年廊下を歩いていた写真を明日香に見せ付ける。

彼を偶然見かけたら写真を撮ろうと焦ってしまい、少しブレてしまっているがハッキリと彼の顔が確認できた。


「こいつって確か5組の変人で浮いてる綾瀬って女か?綾瀬もこの先輩狙いか?」

「それは知らんけど……。そもそも5組女子、変な人ばっかり……」

「津軽と綾瀬以外も優等生面してめちゃくちゃ学校サボり魔な細川とか、色白オッドアイな五月雨、小学生みたいな赤坂と濃いよなあっちの女子……」


女子ネットワーク恐るべし。

明日香も凛も変人揃いだなーと苦笑しながら変な汗を流していた。


「えー!?でもでも!めっちゃタイプなんだけどぉー!体幹しっかりしてそうで姿勢も良いしー、ほどよく肌も焼けててイケメンじゃん!」

「ね、明日香ちゃんのタイプであってるっしょ?」

「よし、じゃあアタックしてみる!」


明日香のやる気に凛が励ましを送る。

もし、明日香が明智秀頼と付き合ったら自分は彼女の親友というポジションになる。

そうなれば、下手に手出しは出来ないはずだ。


「頑張って明日香ちゃん!」

「アタシはヒロインだし、大丈夫だって」


『もう死にたくないから』

凛は笑顔の中にそんな本心を隠しながら、彼女は親友に微笑んでいた。


普通のJKの会話はそんなコイバナに燃えていた。

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