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18、セレナの警戒

「おう!ただいまー、いっぱい飲み物買ってきたぜー」

「おっせーよ!どこまで行ってたんだよ!?」

「道に迷って」

「4人もいるのに!?」


俺の後ろに控えていた3人はなにも言えないようにみんなから目を反らしている。

申し訳なさ、嘘付いている気まずさ、セレナの正体不明っぷりによる疑心暗鬼と様々な感情が彼女らの中で蠢いているところだろう。


「…………」


理沙には後でセレナの写真を送る旨を連絡し、もう1人この状況を影で知ることになった人にも『後で落ち合う』ように連絡しておいた。

この出来事が終わったらまた人に会うことを考えると色々と気が滅入ってくる。

そもそもなんで俺が裏でコソコソとこんなに暗躍することになったのだろうか……?

今の俺、どう考えても悪役ムーヴしてるんだよなぁ……。

セレナの正体不明っぷりを誰にも悟られないように今は振る舞うしかない。


「ひぃ君もミツキもミスズもハルカも方向音痴なんだねー」と詠美から物凄く弄られることになる。


「秀頼君たちが居ない間、わたしたち色々話してたよ」と絵美からも報告が入る。


「紹介します。こちらが私の兄です!」

「セレナには何回か話に出してるよな。こいつが明智秀頼だ」


星子とタケルがセレナに紹介するように声を上げる。

「はぁ」とセレナがじっと俺に視線を向けている。


「え?お前、普段何を色々語ってんの?」

「当然、秀頼の凄いところや出来る男っぷりに格好良いとこなど語ってるぜ」

「そ、そうなんだ……」


タケルがセレナに俺の魅力を語ったところで、なんの意味があるんだろう……?

もうちょっと自分のアピールとか、自分の身の回りの話題を出すべきではないのかな?

と、思わなくもない。


「…………目付きが怖い」

「あ?」

「悪人にしか見えない!タケルの友達っぽくないよ!」


セレナがじとっとした目付きで、つまらなそうに呟く。

これ、あれだな……。

面白くないんだなというのが一発でわかった。


わりとセレナ的にもタケルが良いなーと思いつつ彼が俺の話題を出すと面白くないんだろうなー、というのをすぐに察する。

普段からどんだけ俺の話題を出しているんだよ……。

後は純粋に明智秀頼の人を遠ざける悪人デバフが掛かり、俺に対する好感度は地に落ちているのが一目でわかる。


一応、アニオリ展開でタケルの紹介という形でセレナに秀頼を紹介する流れがあったが「あいつ嫌い」と2人っきりになった瞬間秀頼をディスる展開もある。

そもそも磁石のS極とS極のように合わない定めなのだろう。


「なんか秀頼君が邪険な扱いされると嬉しい」

「あいつは邪険な扱いされても強いからな。わりと喜んでいそうだが……」

「そうですわね!秀頼様のまわりで好感度マイナスな人が登場すると安心します」

「でも、お兄ちゃんはそういう人でもたまに特大ホームラン打つんですよ。ヨル先輩とか円先輩とか楓先輩とか」

「確かに楓さんを惚れさせる展開は凄かったです」

「というか俺、たい焼き屋の姉ちゃんと秀頼が付き合ってたのさっき知ったんだけどいつ付き合ってたんだよ?」


全部聞こえているんだよなぁ……。

なんだ、特大ホームランって……。

俺に対する女性陣の女性への評価がガチの本音感があって、聞こえてない振りをして流すことにする。

別に好かれたくて好かれる振る舞いなんか一切したことはないんだが……。

心で泣きたいことばかりである。


「わ、わたくしは深森美月だ。こっちが妹の深森美鈴で、こっちが三島遥香だ……。よ、よろしくなセレナ。わたくしたちはタケルの友達だ……」

「よろしくお願いします!絵美ちゃんたちもだけど、みんな顔が良すぎません!?」

「そ、そうなのだろうか……?普通だと思うが……」


美月が存在しない女の子であるセレナに緊張しながら自己紹介をしている。

側に控えている美鈴と三島も緊張しているのがよく伝わる。

詠美からも「君たち緊張し過ぎでしょ」と突っ込まれながらも、初対面だから緊張していると取られているのかそれ以上の追及はなかった。


「そんなわけでよろしくな……」

「よろしくお願いしまーす……」

「よ、よろです!」


美月と、彼女を壁にした緊張の美鈴と三島はセレナと握手をする。

「あ、すごっ……」と三島がぼそっと実体があることに驚きを隠せないでいた。


「…………(じーっ)」

「いや、嫌なら握手しなくて良いよ?」

「……そうですか。なら、大丈夫です。初対面の人に『サワルナ!』とか言いたくないですから……」

「うーん。なんかスタヴァで働いている知人に似てるなぁこの子……」


露骨に嫌そうだったセレナが『この男と握手しなきゃダメ?』みたいな目で凝視してきて『握手しよ?』 と提案できるほど図太い性格はしていない。


「うーん。まさかこんなに秀頼とセレナの相性が悪いとは……。ごめんなぁ、秀頼」

「大丈夫だよ。わりと周りにそんな奴しかいないから」

「お前は大人だなぁ……」


明智秀頼の人間関係デバフは別に今更始まったものでもない。

そういう特性を持っているのは納得しているし、大体こうなるのも予想できた。

タケルから慰められるように背中を叩かれる。


「…………」


セレナからはじとーっとした目でタケルと俺のやり取りを見られている。

お兄ちゃんがよく知らん奴に取られた妹みたいな反応のセレナでなんかほっこりする。

なんか威嚇する猫みたいだ。

セレナの心の中ではスタヴァのお姉ちゃんであるサワルナさんのように俺にあっかんべーを仕掛けているような気さえしてくる。


「もしかしてセレナちゃん、秀頼君が1番のライバルだと気付いて!?」

「あはははは!ひぃ君警戒され過ぎでしょ!」


絵美と詠美の従姉妹コンビから不本意な勘違いをされながら笑われていたのであった……。

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