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17、深森美鈴は思い付く

俺のスマホに向けてあっかんべーをしている人物が誰なのか?

そう問われるのも無理はない。


彼女と面識があるのは、知り合いの中でもおそらくタケル本人しかいないのだから。


「彼女は俺の天敵であるスタヴァのお姉ちゃん」

「あー、たまに話題に出てくるスタヴァの姉ちゃんさんですか?」

「いや、彼女はスタヴァの姉ちゃん。こっちの写真はスタヴァのお姉ちゃん」

「いや、お前のスタヴァの店員さんの呼び方は知らないが……」

「彼女は瀬川沢瑠奈さん。通称・サワルナさん」

「え?スタヴァのお姉ちゃんが通称じゃないんですか?」

「あれ、確かに……」


通称が2つあって俺の方が混乱してきた。

10秒ほど悩み、考えるのをやめた。


「とにかく彼女ならセレナって言っても大丈夫じゃないか?髪の色が同じオレンジだし」

「テキトーだなぁ……。絵美と髪の色が同じ詠美を絵美と紹介しているもんじゃないか」

「別にその2人ならあんまり問題にならない気がするが……」

「なら秀頼様!美鈴の画像フォルダに頼子様がありますがこれをタケルさんの彼女と紹介してしまったら?」

「それだけは!それだけは!人間としてなにか失った気分になるっっ!」


そもそも理沙にも頼子の顔バレされてるし!

頼子とは言え、タケルの彼女役になりたくはない。


「というかなんで美鈴に頼子の画像が……?」

「おそらく明智さんと付き合っている子たち、全員頼子さんの画像共有してます」

「なっ……!?」


三島のカミングアウトにつぅーと背中から大粒の汗が一筋流れた。

なんでそんな頼子の画像をみんなで共有してるの……?

俺の黒歴史姿がみんなに共有されているという事実に震えが止まらない。


「盗撮はいけないことなんだぞ……」

「そもそも頼子様の画像、第5ギフトアカデミーの裏掲示板に何枚も出回ってます」

「俺の姿がデジタルタトゥーとして出回ってんの!?」


そもそも第5ギフトアカデミーの裏掲示板ってなんだ……?

俺、そんなの知らないんだけど……。

裏掲示板とかいう体感20年前にはよく聞く響きだったが、まさか今の時代にもそんなものがあったのは驚きだ……。

完全にガラケー時代で滅んだ文化だとばかり思ってた……。


「晒されているというよりは可愛いと美人の境地として頼子様が理想の女性として崇められているだけなので気にしないでください」

「複雑だよ」

「美鈴たちからしてみれば女性の理想像として頼子様がトップとされている方が複雑ですわ……」

「それはごめんね……」


みんなが不幸になる話題だった……。

とりあえずサワルナさんか頼子のどっちかがタケルの彼女ならサワルナさんという選択を取るしかない。

髪の色も似ているし、髪型も似ている……気がするのでバレてもこんな雰囲気の子と言い訳できる。


「まったく……。なんで千姫のギフトで姿が変わった俺が女性の理想像に…………に?」


姿が変わった?

あれ?

なにか今ひらめきそうだったが……?

千姫のギフトが誰かのギフトに似ていたような…………はっ!?


俺のプリティエンジェルマイシスターである細川星子!

彼女のギフト『キャラメイク』でセレナの姿に化けてもらえば良いのでは?

そんな可能性に思い当たる。


でもでも星子がセレナに化けたところで写真に写っているのは星子なわけで、間接的にタケルの想い人が星子になるのはそれはそれで嫌な気持ちになる。

嫌だなぁ、案外俺は彼女たちに対してすごくすごくすごぉぉぉく嫉妬心が強いのかもしれない。


「どうした秀頼?」

「星子にギフトでセレナの姿を再現して写真を撮るということを考えたのだが……。星子を間接的とはいえ、タケルの想い人と紹介するのも兄として、彼氏としてちょっと許したくなくて……」

「もういっそわざわざ写真を送らなくても良いんじゃないか?なにか理由を付ければ理沙もわかってくれるさ」

「それも考えているんだが……」


サワルナさんか。

頼子か。

星子か。

写真を送らないか。

この4択の中からどれにするのか、メリットデメリットを頭で羅列していく。


「じゃあお姉様、秀頼様の助けになってあげれば良いのでは?」

「は?わたくしが?」

「はい」


しかし、美鈴が5番目の選択肢でもあると提案するかのように名乗ると、ポンと姉の肩を叩いた。


「どういうことだ美鈴?わたくしは全然ピンと来ないのだが?」

「どういうことだもなにもお姉様だってギフト所持者じゃないですか。『月だけの世界』なんていう素晴らしいギフトがあるじゃないですか」

「わたくしのギフト?」

「さっき調べてみたら、今夜は晴れだし月が出るみたいですわ。こういう時こそ、お姉様のギフトを有効活動しないといけませんわ」

「はぁ……」


美月のギフト。

『月だけの世界』はかなりのチートギフト。

キツキツ面倒条件故の最強性能。

美月がギフトを使っている姿をまったく見たことないので、完全に忘却されてしまっていたが確かに思い返せばインチキギフトの持ち主であった。


「美月さんのギフトってどんなギフトなんですか?」

「口での説明は難しいが……。簡単に言うならわたくしのイメージを具現化する領域を発生させるもの、だろうか……」

「え?チートじゃないですか……」

「チート?とはなんだ?」


無自覚主人公なのか、美月は三島の驚愕を余所に『それが当たり前ですが?』といった態度である。

抜けていたり、無自覚だったり、オーバーだったりする深森美月という女性は色々とネタに尽きなくて見ていて飽きない。


「でも美月さんのギフトとセレナさんとどんな関係が?」

「ふふふ……。お姉様のギフトを活用したら理沙さんに写真を送ることも可能かもしれない、ということですわ。今夜、楽しみにしていなさいな」


俺と三島が自信たっぷりな美鈴の宣言に頷く。

原作でも『月と鈴』ルートにて、秀頼と美鈴の断罪シーン程度しか描写がない桜祭が持て余したギフトのイメージしかないので、どこまで出来てなにが出来ないのかさっぱりわからないチートギフトというイメージしかない。

基本、昼間が舞台の学園ラブコメギャルゲーにて夜にしかギフトは使えないのはそりゃあ使える頻度なんかあんまりないよなという感じである(そもそも原作を学園ラブコメというジャンルに当てはまるのかは議論の余地あり)。


「さて、後はお姉様の記憶力と再現力とギフトの持続力時間次第ですわ!頑張ってください!」

「完全に丸投げじゃないか……。わたくし、そんなにギフトを使いこなせないんだぞ……」

「もしお姉様が失敗した場合、とりあえずそのサワルナさん?の写真を送ったら良いのではないでしょうか?」


美鈴の提案に確かに、と頷く。

サワルナさんを巻き込むかもしれないことに今更になって後ろめたい気持ちが沸き上がる。


「ところであの人はなんで明智さんにあっかんべーをしていたんですか?」

「あはははは……。俺の天敵だからだよ」


大した理由はなく、やたらスタヴァの姉ちゃんガチ勢後輩から因縁を付けられているだけである。

こうして、ようやく4人の密談会は終わっていったのである。

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