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14、十文字理沙はハブられる

「兄さんの気になるお相手気になりすぎますよー……」

「荒れてるな理沙。マスター、彼女にとびきり強いカクテル1つ」

「ここはそういうお店じゃないの。娘の君が1番わかるでしょ……。僕がカクテル作ってる姿見たことないでしょ」


タケルが秀頼にセレナを紹介することを決めた日。

理沙は朝から荒れていた。

笑顔で兄を見送ったが、心の中ではすでに暴走していた。

その心境をどこにぶつけられるわけもなく、いつものメンバー数人をサンクチュアリに呼び出したのが経緯だった。


「でもカクテル作ってそうな見た目してる」

「マスターという呼び方の固定観念が強いな!?」


そして咲夜とマスターが見慣れたようないつものやり取りをいつものように繰り広げている。


「お相手ってセレナとかって子でしょ。こないだ明智君と綾瀬ではしゃいでたわ」

「ふ、ふっふふふふ……。ウチのタケルにそんな女の知り合いや恋人はいません……」

「なんでヨルが嫉妬してるんだ?たまにお前はタケルにやたら怖い執着見せるしわけがわからん」


ゆりかがやれやれとヨルを宥める。

マスターの隣でヨルがやたら強い貧乏ゆすりをしていてこの場の数人が圧倒される。


「本当は私もついていくつもりだったのに兄さんから『いや、無理』って拒否られたぁぁぁぁ!」

「理沙?普通は兄のデートに妹は同行しないんだよ?」

「だって星子さんは明智君に同行してるんですよ!?毎回デートに同行してくるじゃないですか!悔しい!同じ妹なのにっ!妹格差ですっ!」


永遠のなだめもまったく効果なく、理沙はから流される。

今日の理沙とヨルは手が付けられないと誰もがお手上げ状態になる。


「そういえばこの場に居そうな絵美は来てないんだな珍しい」

「絵美からは『急な用事が……』と返信がきました」

「大体こういう時は明智君と一緒にいるわよあの子……」

「絵美の家が隣のアドバンテージ強すぎだな」


ゆりか、永遠、円、咲夜と絵美の不在理由の推理はとてもよく当たっていた。

露骨過ぎて逆に秀頼といないんじゃないかと思わせるくらいに彼ら3人と合流していることに根拠もないのに決定扱いされていた。

そして、実際に当たりである。


「アレだな。理沙は大体秀頼とタケルに置いていかれるな」

「っ!?」

「あんたっ!?バカ!」


咲夜の何気ない一言に理沙は思い当たりがありすぎて複雑な心境になる。


「そうなの!明智君の家にスタチャが来た時とかも理不尽に私だけハブられた!なんで!?なんでですかマスター!?」

「ぼ、僕に振らないで!?僕があのバカ2人が理沙ちゃんを置いていく理由とか知らないから!?」

「でもマスターはあの2人の理解者ですよね!?」

「僕も当事者みたいな言い方やめて!?」


理沙がマスターに突っかかる。

飛び火されたら面倒だと考えたゆりかはそそくさとこの場から帰ろうかと考える。

でも、隣の永遠からギュッと手を掴まれてニコニコと微笑まれた。


「はい、すいません……」

「はい!」


そして、いたたまれなくなったゆりかが彼女に謝罪した。


「もうちょっと理沙も明智君たちに踏み込んだら?ちょっと1歩退いてしまうようなところがあるから置いていかれるんじゃないのー?」


円が紅茶をかき混ぜながら、ぼそっとアドバイスを伝える。

やや他人事のような言い方だが、軽いアドバイスという雰囲気での彼女の意見であった。


「なんか偉そうなこと言ってるが、円も結構置いていかれてるからな」

「え……?」

「秀頼がシリアスやってる時、円も基本的に蚊帳の外だし」

「豊臣くぅぅぅぅん!」

「ふっ、円討ち取ったり」

「ショックでか過ぎてなんか知らない人呼びはじめたじゃないですか……」


同じショックを受けていた理沙が円の狂いっぷりを見て正気に戻り突っ込みに入る。

円もつい癖で別人の名前を呼んでしまったと口に手を置いてしまう。


「どうしたどうした?豊臣君は円の元彼か?」

「私はずっとずっとずっっっと明智君一筋ですっ!」

「どこがですか?1年前までは1番秀頼さんに興味ないですーって顔してたじゃないですか」

「興味ない顔してただけで心では繋がってたもん!」


両サイドの咲夜と永遠から総スカンの円。

絵美が居ないと円を弄る役が永遠に変わるんだ……と、ゆりかはオレンジジュースをストローで吸いながら責められる円を見ていた。


「ほら、理沙も円を虐めろ」

「やりませんよ、そんなこと」


咲夜からの悪魔の誘いを理沙は拒否する。


「あ!そうだ!明智君から彼女の写真撮ってきてもらおう!」

「おぉ!タケルが気になる相手の写真か!どんな感じだ?やっぱり星子似か!?」

「まだ依頼すらしてないですが……」

「明智君から返事は?」

「まだ文章すら送ってません!」


みんなに急かされながら理沙は秀頼へ、ラインの文章を送る。

セレナという少女の写真が欲しい旨を伝えるとすぐに既読が付いた。


「あいつ、暇だな……」


理沙のスマホ画面を覗き込んだ咲夜が秒で付いた既読マークに対して呆れた声を出す。


「このあたしがタケルの相手に対して色々ケチ付けてやらねぇと……」

「いや、なんの権限があってタケルの相手にヨルが文句を付けるのだ?」

「妹の私は言う権限ありますよね!?」

「理沙はあるかもだが……」

「なら、あたしも!」

「そうはならないだろ」


ゆりかが淡々と壊れたヨルと理沙をいなしているのであった……。


「うるせぇ!あたしはな、ファザコンなんだよっ!だからタケルの恋愛に口出ししても良いだろ!?」

「まったく意味がわからないが……」


ヨルの力説にゆりかも呆然としてしまう。

なぜいきなりファザコンをカミングアウトしたのかも、ヨルの父親がタケルのような言い方をするのか、円以外まったく理解できなかった。


「じゃあ理沙はヨルの叔母?」

「いませんよ、あんな大きい姪っ子……」


永遠が理沙に尋ねるがブンブンと理沙が首を振って否定する。


「なんだあの負け犬ヒロインの集まりは?」

「気にすんな綾瀬っち」


そんな姉と先輩たちをまったく視界に入れない和と綾瀬はオタク活動で盛り上がっていたのである。

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