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7、十文字タケルと細川星子

十文字タケルは、待ち合わせ場所であるコンビニ周辺へ足を運んでいた。

妹である理沙に「ちょくら遊びに」とやんわりとぼかして家を出てきた。

今日は明智秀頼と待ち合わせをしてセレナと会う公園へと向かう予定であった。

そんな彼が待ち合わせ場所にたどり着くと、もう1人の同行者と邂逅した。


「あ……。星子ちゃん」

「おはようごさいます、タケル先輩……」

「おはよ」


地味に絡みが少ない先輩と後輩は気まずさを覚えた。

いつも間に挟まる秀頼がいないと微妙に接点を失う2人は、2人っきりになったことで妙に会話でもしなければ……という気にさせられる。


「…………」

「…………」


でも、特に振るような話題もなく挨拶止まりであった。

同じ学年じゃないこともまた、お互い絡みにくいフィルターとなっていた。

ましてや男子と女子。

気安く会話するハードルもまた高いのだ。

秀頼が居れば会話をするものの、その実彼が不在だと絶妙に会話が出来ない仲だった。


「(スタチャの姿の方が良かったかな……?)」


スタチャになると、タケルとはアイドルとファンとして接することが出来る。

かといって、星子のままスタチャとして振る舞うのはそれはそれで恥ずかしいと彼女は葛藤する。

スターチャイルドというペルソナを被らなければ星子は口数が少ない遠慮がちな運動以外低スペックブラコン少女へと成り下がるのだった……。


「(秀頼が不在なシチュエーションを考えてなかったな……。これなら理沙も連れて来るべきだったか……?)」


2人してスタチャと理沙に頼ろうという他力本願な思考に支配されつつあった。

待ち合わせ時間になっても、姿を現さない秀頼に焦がれる2人。

因みに彼は佐々木絵美に乱入されたことにより、待ち合わせ時間が数分遅れる自体に巻き込まれていたがそれを知る由はなかった。

因みに遅れているのに気付いた秀頼は『5分ほど遅れそうだけど誤差でしょ』と呑気に絵美と待ち合わせ場所に向かっている途中であった。


「あー……。星子ちゃんさ……」

「はい?」

「学校の成績ってどんなもん?」

「え?普通ですよ。学年で50位くらいです」

「いや、充分だと思う……」

「そうですかね?」

「俺、100番くらいだし」


タケルは結構勇気を振り絞った話題を振るが、そんなに盛り上がることなく昇華される。

秀頼ならば、こういった話題だけで10分以上は盛り上げるだけになんでこんなに自分が振ると盛り上がらないのかとタケルは頭を抱える。


「…………」


意外と自分ってコミュ力ないのでは……?

ギャルゲー主人公、実はコミュ障疑惑が彼の中で何回目かわからない再浮上をしていた。


「さ、最近は仕事忙しい?」

「最近というよりかは、ずっと忙しいですよ。高校生だから仕事セーブしてますが、学生が終わったらどうなるんでしょうね……?」

「た、大変だね……」


違う話を振るがやはりそんなにラリーが続かない。

タケルも無理に星子に話を振るのをやめると、すぐに待ち合わせしていた人物が幼馴染みの彼女を連れてやって来ていた。


「おっす。おはよー!」

「おはよう!星子ちゃんに十文字君だ!珍しい組み合わせ!」

「おー。確かに」

「いや、待って!?それよりなんで佐々木が!?」

「助っ人だ」

「え?わたし、今からなにか手伝わされるの?星子ちゃんもお手伝い?」

「いや……。なにも、知りませんが……」


秀頼と絵美が待ち合わせ場所に来た途端、一気に賑やかになる一行である。

彼らの中の太陽のような中心はやはり明智秀頼なのであった。






─────






「十文字君と星子ちゃんってどんな会話してたんだろうね?」

「全然やり取り浮かばねーな」


こそこそと絵美と小声でやり取りをしていた。

星子は原作のヒロインではないどころか、咲夜と同じくゲームやアニメでは影も形もない存在であるからだ。

一応スターチャイルドは存在していたが、明智秀頼の実妹という細川星子についてだけのことだが……。

原作でのやり取りがない以上、タケルとの絡みのイメージがしにくい1人の筆頭が星子なのは間違いない。


あ、でもよくよく考えればスターチャイルドとはじめて会った日のメンバーはこの4人だったな。

星子はスターチャイルドの姿をしていたから正確には違うかもしれないが……。


「よし、とりあえず全員揃ったな」

「本来であれば俺と秀頼だけだったんだけどな」

「気にすんなよ!絵美も星子も頼りになる子なんだから!」

「あらぁ!秀頼君、そんなにわたしを求めてくれるなんて!」

「私も頼りにしてますよ、お兄ちゃん!」

「単にイチャイチャされるのが嫌なんですが……」


タケルからのひっくい声で注意をされてしまい、彼女らに今日はあんまりイチャイチャしないようにと勧告を出すことにした。

「あんまりってことは、イチャイチャそのものはしては良いんだね!」と頭の回転が早い絵美は真っ先に揚げ足取りから始まり、タケルが折れていた。


「今日はこれ以上、お前の彼女の同行増やすなよ」

「だいじょーぶさ!だって今日は彼女たちと会うことないっしょ!」

「だとは思うんだけど……」


とは言うものの、タケルは何か言いたげであった。

「とりあえず行きましょ?」と星子に急かされて、タケルを先頭にして3人も足を動かす。


「あ!目的地行く前にたい焼き屋寄るわ。『ミルクたい』って店」

「あ……」

「あ……」

「あ……」

「どうした?」

「いや、別に……」


俺と一緒に同行した絵美と、スタチャ姿で一緒していた星子の3人で顔を合わせた。

みんな無言だったが、言いたいことはみんな同じようだった。

それに気付かないのはタケルのみである。

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