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1、十文字タケルの誘い

「なぁ、秀頼……」

「んー?どした?」


突然家に帰ってきておばさんから驚かれまくった夜が過ぎた。

記憶喪失が治ったが、今日もまた通学があり、昨夜の夢のこともあり披露が残る朝。

タケルから呼ばれ、頭の回転の本調子が出ないまま、学校までの道程を歩んでいた。

因みに絵美や理沙は元気であり、俺たちの前方へワイワイと広がっている。


「そろそろ都合の良い日あるか?」

「…………都合?」


なんかあるっけ?

記憶力は悪くはないはずだが、この日はパッと出てこない。

タケルは改まってなんの話をしているのか?


「は?お前忘れたのかっ!?」

「いや!待って!?忘れてない!忘れてない!」

「完全に忘れてるよな!?」

「違う!忘れてない!覚えてもないけど……。なんにも話を通してないんじゃないか?タケル悪いじゃん!」

「俺に責任転嫁すんなよ!?」


なんか忘れてはいけないことあったっけ……?

今日の夢に出てきたあの女のこととか?

いや、タケルは知るはずのないことだ……。


「星子ぉ……」

「え?どうしたんですかお兄ちゃん?」


横で黙って話を聞いていたいつも居たり居なかったりする裏ではアイドル活動をしている星子に助けを求めるように声を上げると、素直に返事を出してくれた。

いつ見ても可愛い妹である。


「タケルの『都合の良い日』ってなんだかわかるな?」

「やっぱりアレじゃないですか?可愛い妹にベタベタしてくれる都合の良い日を探してくれているんですよ」

「それ、ただの星子ちゃんにとって都合の良い日だね。してなかったでしょ、そんな話」

「俺の記憶が消しゴムマジックで消されていたのさ」

「シャレにならないですからね」

「消されない努力をしろよ」


星子とタケルに総突っ込みをくらいながら、心で腰が低くなっていた。


「んで。なんだっけ?」

「はぁぁ……。会って欲しい子がいるって件。いつなら大丈夫なんだよ」

「あぁ!あったな!」


完全に五月雨茜事件に巻き込まれて忘却の彼方に追いやってしまわれたタケルとの約束だ。

達裄さんの家に行ってルアルアさん(西川流亜)と初対面になる前にそんなやり取りしていたっけ。

まぁ、多分その相手はセレナだろうけど……。


「じゃあ今週の土曜日行くよ」

「おっけ!サンキュー」

「あ!ズルいタケル先輩!勝手にお兄ちゃんの予定埋めないでください!私だって全然お兄ちゃんとの予定埋められてないのに!」

「え?せ、星子ちゃん?」

「せっかく私も土曜日休み取れそうだったのに!まだ決まりじゃないけど、明日の朝には決まるからお兄ちゃんを誘う予定だったの!」

「なら星子も来れば」

「行く!」


誘ったら即答でイエスの返事をもらう。

タケルが「え?」と漏れる。


「星子ちゃん来るの?」

「来ることになった」

「よろしくお願いいたします!」

「よ、よろしく……」


不意打ち気味に決まった星子参戦。

驚いてはいるものの、ダメという拒否は示さない。

タケルはそういう人である。


「他にも誰か誘うか?ターザンとか白田とか自我が強くて盛り上がると思うぞ」

「要らない」

「そ、そう……」


残念ながら自我が強い個性派男子らは誘う気はないらしい。


「お兄ちゃんとデートです!」

「そうだね!」

「そういうのあんまり見たくないし、見せたくないんだよ……」

「というか、タケル先輩はお兄ちゃんに誰を紹介するんですか?女?」

「女といえば女だな。間違いなく」

「やっぱり私が着いて行くの正解です」

「大丈夫。絶対に秀頼とはくっ付けないから」


星子が珍しく眉の形が尖っている。

また彼女が増えないのか警戒しているが、既に五月雨が増えているんだよなぁ……。

言い出しにくい空気になったもんだ。


「しれっと女を紹介しようとする親友……。怪しいです」

「怪しくねーよ」


世にも珍しいタケルと星子のやり取りを見れた朝の通学が終わり、学校へとたどり着くことになる。

「じゃーねー」と星子と和の後輩組に手を振って別れた。


実は絵美たち以外、まだほとんどの人に自分の記憶が取り戻したことを教えていなかったことを思い出す。

心配掛けて悪かったとクラスの人に頭下げに行かないといけないかな。


まだ隣に来ていないお隣さんのアリアの席を見ながら、『この2人には記憶が戻ったこと』を報告した方が面倒そうだと気付き、眉をひそめる。

アイリ、アリアのなんとかさん姉妹にはお口チャックでも良いかもしれないな……。

机の中に教材やノートを詰め込んでいると「おはようでござる。明智氏」とやたら甲高い男の声がする。


「白田じゃん。おー、久し振り」

「明智氏……。ついに時系列がわからなくなる。毎日会ってるでござるよwwwwww」

「知ってる」

「やっぱり記憶喪失しておかしくなったでござる」

「実はそれなんだけど……」

「記憶失ってまたやり直したいゲームが100を越えるワイ氏、記憶がない明智氏が羨まし過ぎて大草原」


話に耳を傾けない白田は、「記憶喪失な今、なにかゲームはやってるでござるか!?」と詰め寄られる。


「昨日はテトリスしてたよ」

「記憶喪失テトリスいただきましたwww!テラワロス!テトリスとテラワロスの字面が似ていてテトリスwww」

「最後、テラワロスじゃない?」


白田は満足そうに「記憶喪失テトリスwww」と笑いながら席に戻って行った。

話が噛み合わない奴だ。

将来、犯罪者とかにならないか不安である……。

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