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101、絆断ち編2

なんかヤバい、なんかヤバい、なんかヤバい。


狂気に取り憑かれたギフト狩りのリーダーである瀧口雅也なんかより、よほど彼の方が異質に見えた。

おぞましい……。

チリチリと彼の悪意が、五月雨茜の肌に突き刺さる。


「じゃあ、女の子には優しく自己紹介しようか。十文字タケルの大親友の明智秀頼だぜ」

「タケル先輩の親友……の明智……」


惹かれていた彼からの会話で何回か出てきた人であるので、名前を聞いてピンと来ていた。

タケルとは小学生からの仲であり、怖い先輩たちから目を付けられると助けてくれるみたいな美談を聞かされていた。

しかし、そんなタケルのイメージとはかけ離れたような人物に映る。


「おいおい……。先輩に向かって呼び捨てはないんじゃねぇの茜ちゃん?」

「あ、あなただって初対面の自分に名前呼びなんて馴れ馴れしくありませんか!?」

「君が距離を縮めるぶん、俺から歩み寄らないと」

「なんで自分があなたに歩み寄らないといけないんですかっ!?」


それにタケルすらまだ自分を名前で呼んでくれないのに。

この男はその領域を軽々しく踏み入れることが酷く不愉快だった。


「うーん。扱いが酷いなぁ。言葉がキツイ。ガラスの心の俺は酷くガッカリしている」

「どこがガラスの心ですか!ステンレスより固そうじゃないですか!?」

「あったりー!俺のこと、初対面から30秒でよく言い当てられたじゃん!相互理解し合えたね!」

「してませんっ!」

「気が合うな」

「合ってないですっ!合ってないでしょ!?」


(こんな強面の人、絶対に理解しようなんて思うわけないに決まってるじゃないですか!)


五月雨茜は、明智秀頼という男には嫌悪感しか沸かない。

口ではふざけているクセに、目だけは笑っていないのがまた不愉快にさせられる。


「あなたのような不審者と絶対に気が合うわけないじゃないですか!」

「絶対?絶対に気が合わない?」

「絶対に絶対です!」

「おぉー、フラグってやつじゃん」


彼のおちょくる態度に五月雨もつい強く叫んでしまっていた。


「あなたみたいな変な人に対して気が合うわけないじゃないですか!寮に帰らせてくださいっ!」

「えー、帰って良いのかなぁ?茜ちゅぁーん?俺はね、ギフト狩りを狩る。いわば『ギフト狩り刈り』って感じなんだよぉ?」

「そういう口調もおじさんみたいでキモいです!」

「【身も心も俺に委ねろ】」

「秀頼センパァイ!大好きですっ!ご奉仕させてくださいっっっ!」

「そういうこと!やっぱりシンプルにそういうのが良いよねっ!」


簡単に認知を歪めて、──彼女とタケルの絆を断つ。

タケル以外の人間はすぐに自分の思い通りに動き、最近はだんだんとつまらなくもなってきていた。


「はぁ……。テンション高いのはあんまり合わねぇか……。ま、いっか!お●すか……。無能男と物騒女が一生抱え込むようにぐちゃぐちゃにしてやんねーと」


彼の性欲だけは、未だに健在であるが……。

舌を出しながら、一晩でどれくらい五月雨を堕ちさせてやるか考えると彼の心の奥で汚してやりたい欲が渦巻く。

久し振りのまだ1度も股を開いたことがないのが確実な娘のはじめてを採取するこの感じが、秀頼にとって子供の頃に中身が見れなかったカードゲームのパックを開けてレアカードが入っていないかどうかワクワクしていた純粋な気持ちにさせられる。

──いや、この男にそんな純粋な気持ちがあったのかは知らないが……。


「よし、俺のズボンのチャックを下ろせ。10秒感、ゆっくり時間を掛けて焦らしながら茜ちゃんはソレを口に入れるんだよ」

「任せてください秀頼センパァイ!」


その命令に嬉々として受け入れながら、チャックをチキチキ……とかすかな音を立てながら下げていき彼女の視界にトランクスが広がった時だ。







『お兄様に軽々しく触れるのは非常に不愉快……』






「え?」


五月雨茜が声を漏らすと、胸に痛みが波紋のように広がる。

その痛みの発生源から潜血が飛び散っていく。


「え?なんで……?自分は死ぬですか?助けて、お兄ちゃん……。秀頼セン、……助けて」

「あ?おい!?おいっ!?【死ぬな!?おいっ!?目を覚ませ!】」

「…………」

「なんなんだよ……」


秀頼ははじめて、殺すためではなく死なないためにギフトを使う。

しかし、『アンチギフト』持ちと聞こえていなかった/聞こえない者以外にも秀頼のギフトが効かない人間がいる。

──死人。


秀頼の足元の地面の下で、五月雨茜は屍になっていた……。


「……お前、何してくれるわけ?」

「この先輩がお兄様の愛の寵愛を受けるのがイラッとしただけです」

「…………ッ」

「お兄様の学園って乱れてますね……。来年、こんな淫らな学園に入学したらどうにかなっちゃいそ……」


心の中でおもいっきり舌打ちをする秀頼。

その怒りを静めるようにチャックに手を付けて、社会の窓を閉めていく。

おもいっきり自分の計画が滅茶苦茶にされた。

彼は頭で描いた計画のシチュエーションを航路の様に渡る人間だ。

その航路を台風や渦潮のように狂わせる人間というのが本当に大嫌いなのだ。


「俺のアレを咥えようとした女が殺されるとか、マジで2度と女を抱けないトラウマになりそうなんだが?」

「それはダメですっ!お兄様の寵愛を受けられないのは非常に困ります!」

「…………」


『うぜぇ……』。

明智秀頼は目の前の女を始末したくなるのを抑えながら、五月雨茜の手を握る。


『…………すまん。俺のミスだ……。君を殺すつもりはなかった……』

明智の血は狂ってる。

それを再確認すると共に、彼女の屍に黙祷を捧げる。


「お兄様!どうしてそんなにすぐに女性に手を出そうとするんですか!」


血に染まったナイフを持った女から文句を言われながら、なんでもないように秀頼はにっこりと笑った。


「君を嫉妬させたいからだよ」

「意地悪です!でも、殺しちゃったけど大丈夫だよね?お兄様の女じゃないなら殺しても大丈夫だった?」

「元々性欲満たしたら殺すつもりだったから気にすんな」

「そっか。良かった、お兄様の邪魔にならずに済んだ!」


絵美の変わりにするには、本当にバカ過ぎて困る……。

目頭が痛くなる感覚に見回れながら、良き兄でいられるような演技を貫いていた。






─────







【クズゲスSIDE】






「うぅ……」


記憶が回復して一夜明けた朝、酷く嫌な夢が途切れ、目が冷めた。

あれは、多分五月雨茜ルートの出来事だったか……。

五月雨が殺害されるのは知っていたが、裏でこんなことがあったのは知らなかった……。

ったく、また嫌な記憶が蘇ったものだ……。


「…………あいつか……」


まさかセカンドの時点であの女が関わっていたとは……。

俺は極力関わらないようにはしていたのだが……。

そうか、来年度にはギフトアカデミーに進学してくる頃か……。


考えたくないなぁ……。


そんな風に現実逃避をしながらフラグをへし折ってきた未知数がどう変わり、どう転がるのか。

知る由もなかった……。

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