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100、絆断ち編1

【原作SIDE】




「自分を許すんですか……?乙葉ちゃんに危害を加えようとして、タケル先輩の記憶まで消そうとしたのに……」

「事情はわかってるよ……」

「ケッ!あたしは許してねーからな!」

「そんなに不機嫌になるなよヨル……」


ここ最近、五月雨茜のマークに徹していたヨル・ヒルは機嫌が悪いのを隠さないようにして彼女への敵意を向ける。

自然と真ん中になるタケルが仲裁役のような立ち位置になってしまっていた。


「五月雨からは、タケルに対してメスに振る舞う女の匂いがする」

「メッッッ!?」

「俺の反応が困る……」

「あたしはな、タケルがずっとずっとずっとずっとずっと大好きなんだぞ!それをひょっこり現れたギフト狩りの五月雨がタケルに接近しているという事実が気に食わないし、非常に不愉快で」

「ストップ、ストップ。クールダウン!」

「こうやってあしらうのもむかつくんだよっ」

「いでっ!?」


腹を抉るように小突かれてタケルにダメージが入る。

「不意打ちはひでぇ……」と、少し涙目になりタケルが訴えるが「あたしの知ってるタケルよりまだまだ弱いな!本当のタケルならあたしの攻撃を筋肉が守るくらい強い」と断言した。


「本当のタケル?このタケル先輩は偽物なんですか?」

「あー、そういや通じないよね。気にすんな、こっちの話だ」

「俺に偽物とかいないから……」

「はぁ……」


レジスタンスを率いるタケルの未来の姿を知るはずもない五月雨には話を反らすように2人は誤魔化す。

それを言ったらタケル本人も未来の姿を見たことはないが、情報としては知っている状態だ。


「でも、あたしはそろそろギフト狩りをブッ潰す準備は出来てるぜ!」

「血の気が多いんだよお前は。もっと碧さんみたいに静かになれないのか」

「ミドリになると騒がしいじゃないか!」

「じゃあ宮村みたいにおしとやかになって欲しいな!」

「いや……。意外とあいつアクティブだぞ……」

「マジで!?」


宮村永遠にアクティブな印象がないタケルは変な衝撃を受けていた。

女であるヨルと、男であるタケルからの印象はイメージは大分剥離があるようだった。


「ギフト狩りを……、潰すですか……」

「あんなのは後生に残してちゃいけない。『ギフトに憎しみがある』を口実に、越えちゃいけないラインを簡単に飛び越える正義感。そこが危険だ。だけど、ようやくギフト狩りの全貌が見えてきたんだ……。だからあたしが……」

「落ち着けって……。人を殺しそうな目をやめろ……」


タケルがヨルの肩を叩くとビクッと反応して、彼へ顔を向ける。

タケルに触られると少し安心したようにヨルが赤くなりながら、息を吐く。


「仲間だったギフト狩りに襲われるかもしれないが安心しろっ!あたしたちが守ってやるから」

「あぁ。だからもうギフト狩りから足を洗うんだ」

「…………わかりました」


中途半端な改心。

ギフトを憎む心は消えてないけど、タケルとヨルからギフト狩りを辞めるように諭されると活動はもう辞めようという虚無感が襲われた。


(これで良いのかな……、お兄ちゃん……)


五月雨にどこかモヤモヤした(もの)が残った気がした。







─────






「じゃあ、また明日ー!」

「明日もタケルは渡さないぞ!」

「は、はは……。また明日です……」


ヨルから明らかなマークをされているのに自覚してしまうと、変な笑いが込み上げてくる五月雨。

でも、そう考えると自分はタケルにどんな感情を抱いているのかわからなくなる。

本来ならヨルとは同じ寮に住んでいるのだし、帰り道も一緒になる。

しかし、ヨルは自分のバイト先の喫茶店でタケルとギフト狩り対策のミーティングをするのだと言い出して学校の校門でお別れになる。

タケルの隣をヨルが陣取ったことに、少しだけムッとした気持ちにもなった。


「にっししー!」

「ぐぐぐぐぐぐ!」

「ん?なにしてんの?」


ヨルと五月雨のにらめっこだが、残念ながらタケルにその意図は伝わらない。

「おら、行くぞタケル」とヨルが引っ張ってしまいタケルが連れられて行く。

五月雨茜がポツンとこの場に残されて、「帰ろう……」と呟いて、女子寮へと足を動かす。


「…………瀧口先生や他のメンバーにギフト狩りの脱退を知られないと良いんだけど」


報復を恐れ、足を洗う発言も出来ずになあなあで済まそうとしていた。

実際ヨルからも『近日中にギフト狩りなんか滅ぼしてやるから大人しくしておけ』と釘を刺されている。

『1週間ほど、お前は風邪を引くんだ!』と脅され……、アドバイスされていた。

風邪が治る頃には全部終わり、外に出て良いらしい。

ギフトの憎しみに対して、これからどうやって向き合おうか。

そう思いながら、青になった信号付きの横断歩道を渡っていた時だった。


「…………え?」


いつもと渡る横断歩道の方向が逆なのに気付く。

一瞬学校帰りでは見慣れない景色に変わり、引き返そうとしても足が動かない。


「…………っ!?」


寮へ帰ろうと脳が命令を下しているのにも関わらず、五月雨茜の足は歩みを止めない。

まるで、足が勝手に命令を下しているかのようだった。

知らない道、知らない道、知らない道へと導かれていく。


この自分の足を切り落とさないと、この歩みな止められない。

五月雨茜は、そんなことを思っていたが、すぐに終点にたどり着く。



──足が止まる頃には、知らない廃墟が目の前にそびえ立っていた。

人に見捨てられた土地に見えて不気味に映る。


「ここは……?なんで……?」


五月雨が来た道を引き返そうとした時だった。


「せっかく俺が誘ってやったのに、なにもやらないで去るのはいけずじゃない?」

「え?」

「可愛い可愛いギフトに踊られし子猫ちゃん。こんにちは」


廃墟の入り口に人がいた。

茶髪で、ウチの学校の青いブレザーに身を包んだ目付きの悪い男子生徒だ。


「だ、誰ですか!?」

「ありゃ。俺がギフト使った時に茜ちゃんに話し掛けたんだけど忘れちゃったか。それに、タケルとのお知り合いで俺のことを知らないってちょっと新鮮な気持ち」

「ギフト!?」


五月雨の防衛反応が、強くアラームを上げていた……。

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